団長の休暇 その3
遅くなってごめんなさい…
修学旅行の旅行先から書いてます!
「今日先に上がりま〜す!お疲れさまでした!」
『お疲れさまでした!』
元気のいい挨拶に見送られ、3人で家を目指す。
「メイ?あそこ三日前までは普通のレストランだったよね?」
「あっ!そういえばそうだね!」
「ダン姉が一度可愛いメイドさんにお世話されたい!って言ってたから店長に提案してみたんだよ。もともとダメ元で却下される前提だったからまさかこんな事になるとは思わなかった」
「マジか…」
「あの店長さんの思い切りすごいね!」
「しかもそれが大当たり!メイドさんにつられた男どもが群がり、市民向けのあまり固くない店だからマナーの練習に貴族も来るようになってうはうはよ。売上見たときは思わず笑っちゃった」
「マジか…」
「あの店長さんそんなすごい人だったんだ…それと」
「ん?ダン姉?」
ダンはメイの頭を自分の胸元に抱き寄せる。突然のことに姉妹二人は揃って姿勢を正して固まる。思いっきり頭をぎゅ〜っと抱きしめ、
「ありがとう!私の夢を叶えてくれて!メイちゃんは最高の妹だよ!」
と言いながらくるくると回る。メイはとろとろにとろけた顔をしながらされるがまま。その様子をオサナはしばし面白くなさそうに見たあと
「…はぁー…可愛かったよ?あんたのメイド姿」
慈愛の笑みを浮かべ優しく頭を撫でる。そんな二人の姉にメイは満面の笑みを浮かべギュッと抱きつく。
「お姉ちゃんたち!だ~いすき!」
こうして、いつもの一日が終わる
(きゃーーー!!!)
はずだった。
『建物から離れろーーー!!!』
『凍るぞー!!』
「行くぞ!」
「はい!」
この日生まれた小さな渦は
周りを巻き込みつつ成長し
世界を包み込む大流となる
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「何?これ?」
氷に包まれた建物を唖然として見上げる。有り得ないほど澄み切り、もはや目では捉えられないほど透明な氷が冷気を発している。周りでは火属性持ちが中の人を助けようと必死に魔法を連射する。反対側には大工が集まり金槌や釘で少しでも削ろうとする。その努力も虚しく氷が変化する気配はない。
「おい!何があった!」
先程までの休日モードから仕事モードへ切り替えた団長の覇気は凄まじく、自然と姿勢を正す団員。
「はっ!我々も先程到着したばかりであり、突如ギルドが氷に包まれたということしかわかっておりません!只今目撃者に事情聴取を行い、関所に異常な魔力反応の履歴はないか確認を取っているところであります!」
「可能な限り急げ!この問題は中の者たちの命に直結する!総員!こころしてかかれ!」
『はっ!』
「結局何もできないか…」
自分の言葉を反芻し、肩を落とす。しかし何もしないわけには行かないと剣を鞘から引き抜いた。
次の瞬間
(パキッ)
氷の蕾は花開く
美しくゆっくり
ゆっくり花開く
近くにいた者たちは少しづつ離れ、その光景に目を奪われる。氷と共に建物が裂け見る者たちに絶望を与えた。
あるものは泣き崩れ、あるものは神へと祈った。
願わくば、私の大切な人が無事ですように…
その望みは聞き届けられる。
「ダンテ!」
「マユミ!」
「ジュゲムジュゲムゴコウノリキレカイ…」
『長い!!』
花の中心から無傷な人たちが現れる。
「いきしてる…息してるぞ!!」
シーフの言葉に歓声が上がる。すぐに駆け出そうとして、動きを止める。
視線の先には目を閉じ、立っている三人の少女。花が開き切り、全てが砕け散ると同時に、ゆっくり、ゆっくり、目を開けた。
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「外ではそんなことになってたんだな…」
いつもはうるさい酒場、しかし今は静まり返りじっと二人の話を聞いていた。今一番ホットな話題の中と外、二人の経験者から語られる話は皆を釘付けにした。
「んでなんか騒いだあと息を吐いたじゃん、あれこわかったなぁ…」
「なんか、こう、得体のしれない何かが体の中を這い上がってくる感じでした。」
顔が青ざめ、若干震えながら告げる騎士団ツートップ。
「それで最後のセリフ、
腐った人間
気づかぬ世界
そんなお前らを」
『許さない』
「それでお前らが急にいろんな組織にガサ入れ始めたのか…」
「そうです。そしたら不正が出るわ出るわ…良くもまぁあんなに悪いことができると思いました…」
「それに気づかなくてさ…なんかね…」
「ギルドの不正もひどかったらしいですよ」
「あぁなって当然だった…かなり厳しく見てたつもりだったんだがな…」
「ギルマス!」
驚いた人々が勢いよく立ち上がる。
「『元』だ。俺にギルマスを名乗る資格はない。下っ端からやり直してんだよ」
自身に満ち溢れたあの頃の姿は見受けられない。だが、
「目、ギラギラしてるね」
「二度と俺の目の前で不正はさせるものか!」
拳を上げ、高らかに宣言する。
それを見て回りの人々は拍手や完成を上げ囃し立てる。それを見て目の前で話を聞いていた女子三人組は顔を見合わせ笑い合う。
「いつか、こんな温かいところに住めたらいいね」
「そうだね」
「えぇ!」
「これに気付かせてくれた白猫の嬢ちゃんには感謝だな!」
何気ないカーリミーの一言に動きを止める三人娘。
次の瞬間、テーブルに飛び乗り方を掴む。
「ちょ!?なっなんだ!?どうした!?痛い痛い痛い」
「お前たち何して『目は色違いだった!?』え?は?『赤と青だったかって聞いてんの!!』はっはい!そうでした!」
信じられない量の魔力を迸らせながら詰め寄る少女に顔を引き攣らせながらやけくそになって大声で返事をする。
「低身長!?」
「俺のみぞおちくらいだ!」
「無詠唱で魔法使った!?」
「あぁ!」
そこまで聞くと動きを止め、顔を見合わせる。
『…』
その目は感情の高ぶりで漏れ出た魔力によりキラキラと輝き、嬉しさが溢れ出すいい笑顔。
『ルナだ!!』
幸せそうな少女の声が酒場に響き渡った。




