後始末
「…」
「このっこのっこのー!参ったか!!」
ふみふみ
「ピピーッ気絶した者を蹴るのはマナー違反です!!」
「でも敗北宣言されてないよ?」
「うぐっ…」
「八岐とか酒呑とか、ほぼ気絶している状態で殺しされたのに殺した人間は英雄になってるよ?」
「うぐぐっ…」
「私殺してないのになんで怒られないといけないの?」
「うぐぐぐっ…」
「…」
なんかベルが制服着た真面目そうな子に屁理屈言ってる。
目の前で繰り広げられる不思議な光景に思考が完全に停止していたボク。でもさ?これは仕方ないよね?気がついたら建物が半壊してて気絶している人多数。そんな惨状のど真ん中で幼女と高校生が謎の論戦してんだよ?しかもちびっこのほうが優勢だし…
「だからってその行動は倫理に反しています!!」
「倫理っていうものは明文化されてない曖昧なもの。つまりどうとでもいいわけができる。故に根拠になりえない。」
「ぐぐぐぐぐっ…」
うぅ〜ん会話がちょっとあいきゅーの高い小学生。あのー視線も集まってることだしもうやめて移動しよう?ね?
「スポーツマンシップというものがありまして」
「これはスポーツじゃない。純粋なる殺し合い。しかも世界が違うからその言い分は無効である」
始めてみた大きい人がピンチだ。ネタ尽きてきたからかスポーツマンシップなんて持ち出してきたよ。
「それに私はマンじゃない」
「…当たり前では?」
「ある部分は小さいけど絶対マンじゃない。」
「…」
…やめて?それ私にも刺さるから…
ベルの言葉を聞くと同時に下を見る私。何ものにも遮られること無く足へと辿り着く視線。お通夜みたいな雰囲気が漂う。
ふと視線を上げると制服さんもこっちを見ていらっしゃった。ちょっと下を見ると…
(…お互い辛いですね…)
(わかります…私なんて生まれて以来ずーっとペタンコで…)
(私も…)
(うっかり神獣になっちゃったせいでもう年取らないだろうから私にも未来が無いんですよ…)
(((…)))
『はー…』
私達…じゃ無くてボク達はため息を吐いた。
あっ野次馬の中にスライム抱えてる人がいる。魔物はちゃんと討伐しないとね?
(((クワッ!!)))
(ビクッ)
スライムを二匹抱えた人が何らかの気配を感じたのか足早に去っていく。クソッ感のいい奴め…
「おっほん!」
スライムの飼い主を親の敵のごとく睨みつけているとわざとらしい咳払いが背後から聞こえた。見ると明らかに特注と分かる鎧を着た騎士がいた。なぜわかるかって?普通の鎧にスイカ入れるスペースなんて普通つけないからだよ!!
「お取り込み中悪いが、ギルドで何があったかの事情聴取に協力してほしい。本来なら大人がすべきなのだが、今回は事態があまりにも深刻すぎる。なんたってこの街の中央施設が襲撃を受けたわけだからな。故に早急に情報がほしい。怖い記憶を呼び起こすようで申し訳ないが頼む。このとおりだ。」
『…』
ボクたち三人の心は恐らく一つだ。どうしよう?
ボクとベルは明らかに元凶であり、誰かが起きてしまったら即逮捕。そんな僕達と仲良さそうにしているこの知らない人も巻き添えだ。そう考えれば逃げの一択、数秒前のボク達なら即逃走を選んだだろう。
しかし彼女が誠意を見せた。明らかに怪しげなガキどもに、騎士団のおえらいさんが頭を下げたのだ。しかも高圧的な態度を一切取らずに。
後ろの部下のみなさん?があわあわしているところを見ると相当な事なのだろう。かく言う私もアワアワしている。対人恐怖症なボクがこんなに深々と頭を下げられたのは初だからね!神対応なんてできるか!!
真面目そうな制服さんは心も真面目らしくボク以上に慌てている。ってかあわわわわわっ!なんて言っている人はじめてみたよ。後にも先にもこれきりだろうね。
唯一状況を理解してないベルは
「くるしゅーない!あべし!!何すんの!?」
「「何言ってんの!!」ですか!!」
「ほへ?」
「ごめんなさいしなさい!この人ボク達のこと簡単に打ち首にできるんだから!!今なら間に合うから!!僕も一緒に頭下げるからほら謝って!!」
ベル大好きなボクだけどこの発言ばかりは擁護できない。誠意を見せている相手にこんなことして許されるわけがない。今まで自分達に嫌がらせをして来た奴ならまだしも、こちらに気を使ってくれている人に対してそれをするのはありえない。
『申し訳御座いませんでした!!』
ボクと制服さんの声が見事にハモる。
「いや、小さな子の失言くらいで目くじら立てないから頭を上げて!」
優しいけど許すとは言われてない。ここで許してもらえたと思って調子に乗ったら絶対男だらけの騎士団の詰め所に連れて行かれて薄い本が厚くなる展開に!!意地でも許してもらえるまで上げるもんか!!
最早パニクりすぎておかしな方向に思考が流れているボク達。ベルもわかってないだろうがなんとなく空気を察して頭を下げる。
「このままだとちっちゃい子の発言に切れて大人数で囲み、その家族に頭を下げさせる最低な騎士になっちゃうから頭を上げてくださいお願いします!!」
「…本当にごめんなさい…」
私の心が汚れてました。余計なご迷惑をかけてしまい本当にごめんなさい…
頭を下げたらまた困らせてしまうけど他に謝罪の方法を知らない日本人なボク。
なんかもうぐちゃぐちゃ!!よし!消えよう!!
「ッ!?」
ボクが細く息を吐いた瞬間音が消えた。




