カッチーン
テストベンキョウヤバイデス…
「冒険者ギルドへようこそ!ご依頼ですか?」
「ぴっ…」
かえりたいよぉ…
今ボクは冒険者ギルドの受付に、両目に涙を浮かべながら立っている。なぜこんな事になったのか?そこには山よりも高く、海よりも深い理由がある。ことの発端は数分前…
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「そう言えばぁ〜マグマ風呂?が何かはわかりませんがぁ〜マグマのある場所に行くためにはぁ〜身分証が必要ですよぉ〜?」
「ルナ〜身分証?つくり?行こ?」
「いいよ〜」
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って事があって、身分証欲しいならここって紹介されたからグングン進むベルにノコノコついてきたわけですよ…オイそこ…しょーもなとかゆーな…ボクが1番思ってるんだから…
さっきまではベルに気を取られてたから問題無かったんだけど、声をかけられた瞬間我に返ってこの有様…ほんとやになるよ…
「あのー…」
「ぴっ…」
おい受付、ボクに現実を突きつけるな。今必死に泣くの我慢してんだから察せよゴラ!コミュ障あるある、心の中ではめっちゃ強気を発症し、精神が参ってきた。ここで逃げ帰れは楽になると心の天使が囁いてくる。しかし隣りにいるベルという悪魔がそれを許さない。結果板挟みになって何もできずにいる。
そんなボクの手が急に圧迫された。ビクッと体を震わせ、そっちを見てみればベルが心配そうな顔をしてボクを見上げていた。さくら色のふっくらとした唇がゆっくりと開かれ、少し悲しそうな笑顔で言葉が紡がれる。
無理しなくていいよ?
って。
とっても優しく、とってもあまい言葉。その言葉はボクにとって名実共に悪魔の囁きだ。ボクの望んでいた言葉。死ぬほど嬉しいはずなのに、じゃあ帰ろっか?この一言で逃げられる免罪符を手に入れたのに、ボクは
「あっ身分証貰いに来たのね?」
(コクコク)
「わかったわ。ちょつとここで待っててね?いま書類取ってくるから!」
(コクコク)
なんかよく分かんないけど察してくれた。この受付嬢優秀やん。若いのにすごいね…
待つこと数秒
「お待たせ!待った?」
(フルフル)
はや!?え?十秒以内に帰ってきたよ?この人。現代日本でもこんなスピード対応無理だよ。え?この異世界ヤバない?
「そう?なら良かった!身分証いるのは貴女?それとも妹ちゃん?」
(V!)
ピースサインしてみた。
「二人分ね?了解。それじゃぁまとめて処理しちゃうからちょっと付いてきてね!誰かここお願い!!」
『私は入ります!!』
「ありがとう!!んじゃ行こっか!」
どこへ?
「ここじゃ書きにくいだろうからあっちの小さなテーブルに行くよ!」
今気が付いたけどここのカウンター随分高かったんだね?小柄なボクでは背伸びしてやっと顎が乗るくらいの高さだ。それに気が付き、場所の移動を提案できるとは…評価を何段階が上げなくては…
「こーら、他の人の邪魔なっちゃうからさっさと移動する!」
はーい(コク)
「うん!」
私は一つうなずき、ベルは元気に返事する。ベルは身分証が手に入る事がよほど嬉しいらしい。ん?小声でなにか言ってる?
りょ〜こう!りょ〜こう!る〜なとりょ〜こう!
…かわいいなぁ〜!!
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あぁー…異世界人の挨拶ははらうだったか?はりょう?まぁそんな事はどうでもいい。俺は商人のカーリミーだ。違う。カーリミー商人ではない商人のカーリミーだ。お前ら異世界人はなんで俺のことをカーリミー商人って呼ぶんだ?つってもあったことのある異世界人なんてお前等とギルマス、門番夫婦くらいしかいないけどな!…俺の異世界人との遭遇率高すぎね?こんなもん?そうか?
んでな?俺昨日とんでもないもの見ちまったんだよ。聞きたいか?どうでもいい?
…それでな?いや待て待て話したいんだから話させてくれよ!なんか奢ってやっから!な?おうおうそこ座れ。んで…あ?わかったわかった…ほらメニュー表。好きなの頼め。
…マジでそれ食うの?あの…もうちょっと安いの…アザッス!!
んでさっきな?あ?なんで商人の俺がここにいるのか?護衛してくれた依頼者の達成報告だよ。昔護衛対象殺して馬車と依頼書を強奪、更に依頼の報酬までもらったっつう最悪な盗賊団がいてな?そいつらは捕まったんだが再発防止として本人と一緒じゃなきゃ認められねーようになったんだよ。それにここは魔物や盗賊団の討伐を飯の種にしてる奴らが集う場所だ。旅の商人に必要な情報がまっ先に情報が集まるんだよ。報告しないで独り占め?そんなバカはそうそういねーよ。命あっての報酬だ。少人数でリスクを犯して賭けに出るより、大人数で安全に報酬を貰ったほうがどう考えたっていいだろ?
さて、やっと本題だ。依頼達成報告ついでにギルドで他の冒険者と情報交換してたんだが、その時子供が二人で入ってきてな?気弱なお姉ちゃんと元気な妹って感じの二人だった。幼いながらもすごく整った顔しててな?おいおいそんな変態を見るような冷たい目をすんなよ。お前も一目見れば目を奪われるからな?
んでそいつら身分証貰いに来たらしくメルちゃん…あの美人で完璧な超かわいい女神のような受付嬢の教育係だよ。チャラ男を見るような目で見るなよ…こう紹介しないとファンクラブの奴らがこええんだよ…に声かけたんだよ…お前らも気をつけろよ?いや殴られたりとかはしないから安心しな。金を取られたりもしない。じゃあ何かって?……メルちゃんが可愛いっていう話を数時間に渡って聞かされ続けるんだよ…食事中も…お手洗いのドア越しにも…宿の壁越しにさえ語られたのは本当に怖かった…まぁプライベートは守ってくれるし、あいつらが付き纏ってくる間は他の曲者は寄ってこない。だからわざと失言して護衛代わりにするつわ者もいるとかいないとか…
それはさて置き、その女の子達はメルちゃんに声をかけたんだよ。恥ずかしがっていて声は出せてなかったから違うか。なんかもじもじしてたお姉ちゃんの様子を見てメルちゃんが目的を察したって感じだったな。メルちゃんって心読んでんのかってレベルで鋭いからな。あのお姉ちゃんのびっくりした表情は見ものだったぜ。
なんでそんなにじっと見てたか?夕方で危なかったからだよ。依頼後に一杯飲んだ酔っぱらい共が来る時間だったからな。そんな奴らに絡まれてトラウマになったら可愛そだろ?ほら、ギルドのルール第7条小さな子が来たらみんなで守る。書いてあるだろ?だから俺はロリコンでは無い。
んで用紙を用意したんだがその子達小さくてな?カウンターにギリギリ顎が乗る感じ。妹の方は最早目とカウンターの高さがほぼ一緒だったぜ。だからメルちゃんが気を利かせて小さなテーブルに誘導したんだよ。そこに移動し、紙を読んだお姉ちゃんはやっと初めて言葉を言ったんだよ。
これじゃない、冒険者になりたいってな?
声めっちゃきれいだったぜ?なんか透き通った水みたいな、曇一つない氷みたいな声だった。銀鈴を転がすような声ってああいうものを言うんだなって感じたな。
キモい言うな。マジでキレイだったんだから。
んでそれ聞いたメルちゃんは困った顔して黙り込んじまったんだよ。多分傷付けずに諦めさせる方法を考えていたんだと思う。そんな気遣いを無駄にするように脳筋ゴリラが来あがったんだよ。ギルマスだよギルマス。あいつテメーらみたいな雑魚に冒険者は無理だって指さして笑い上がって、そしたらな?
世界が凍てついた。




