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気まぐれ少女どこへ行く?  作者: 月見 瑠那
大反乱
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ベルフェゴールの探究 中編

遅くなりました!

ザワッという一瞬の揺らぎのあと、その場にいた全ての悪魔がひれ伏した。ここは魔界最大級の闘技場。そこに集った数千万を越える悪魔達、それもプライドの高いと言われる上位の悪魔達が一矢乱れぬ動きで頭を垂れる姿は見るものに恐怖を感じさせ、それを成した存在に対する畏怖の念を抱かせるだろう。


悪魔は一般的にプライドが高く、乱雑なならず者の集りだと思われているが、実はそうではない。彼ら、彼女らは仁義を重んじ、相手に礼を尽くし、約束を決して違えることのない高貴な精神の持ち主である。それなのになぜ、悪評ばかり広まっているのか?それは、


「、、、礼はいい。なにやってた?盛り上がってたみたいだけど?」


闘技場は自由の場、客席の中の広場で行われた物事は、全て許される。暴行、殺人、強奪、この世の全ての罪が許される治外法権の施設、しかしここにはたったひとつだけ絶対に侵してはならないルールがある。


途中入場之禁止


これを破ってしまえば、死なない悪魔の軍勢が永遠と争いを繰り広げる泥試合となる。だからその試合が終わるまでは、如何なるものも新たにその地に足をつけることは許されない。たったひとつの、単純明快で、絶対に侵してはならないルール。それを事も無げにあっさりと破ったのは、悪魔達の主が一柱、怠惰の罪、ベルフェゴールである。


「ハッ。我らは幸せな結婚とはどのようなものかについて議論しておりました。」


先ほど勝利を喜んでいた女形の悪魔は恐怖に身を震わせながらも、揺らぐことのない透き通った声で簡潔に説明する。


「、、、結婚?人間の?」


主からの更なる質問に、悪魔の震えは更に大きくなる。主に二度も質問させた。つまり自分の説明不足で主に恥をかかせたのと同義である。しかも相手は怠惰の罪を背負うお方。それが意味することを理解できないほど鈍くはない。悪魔は処刑されなかったことに感謝しつつ慎重に言葉を選び、されど、急いで口を開けた。


「人間の結婚は諦めの上にたつものであると発言したものがおり、ならば幸せな結婚とはどのようなものかという議論に発展いたしました。」


必死に言葉を紡いだものの説明不足な言葉に、周りの悪魔達はないはずの血がさあぁっと引いていくのを感じた。なんとか彼女をフォローできないかと口を開こうとするも、万が一主の怒りを煽ってしまったらと恐怖し、誰も発言できずにいた。耳に痛い程の静寂のなか、


あぁ、、、これがサタン様だったらよかったのに


皆、憤怒の罪を背負いながらも一番接しやすい主の名前を心のなかで呟くのであった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


眠い、五月蝿い。何処から?闘技場。眠り、妨げた、腹立つ。でも、興味ある、行ってみる?


長文を考えることさえ面倒くさがり、ベルフェゴールは単語を並べる。彼女には極度の怠け癖がある。仕事は最低限しかこなさず七つの大罪が主催の催し物にもほぼ出ない。親友であるベルゼバブがいる時は例外だが、基本もうけられた神殿で寝続けている。


故に彼女の性格を知るものは極端に少なく噂が独り歩きし、いつの間にか眠りを妨げれば数千年生き地獄を味わう事になる恐ろしい悪魔とされ、夜中に騒ぐとベルフェゴール様に連れていかれるよという子供に対する脅し文句にもなっている。尤も、起こされたところで怒るのを面倒くさがり、何度も起こしたところで寝返りついでに外に転移させられるぐらいなのである意味最も安全な悪魔である。


着いた。終わった?何してた?


ちょっとした興味本位で聞いてみると身体をガタガタ震えさせ始める悪魔達。悪魔達の内心なんか露知らず、寒いのかな?等という非常にほのぼのとした思考をしていた。


結婚?


悪魔の口から出てきた言葉に興味を持ち、いつもはふぅ~んと流すところをつい続きを促してしまうベルフェゴール。ただの彼女の気まぐれで、悪魔達の震えは更に大きくなる。もはやなんかの儀式のように思えて怖いから帰って寝たい。損なことを考えるほど気持ちが悪かったが、自分が質問した手前、返事を聞かずに帰るのは悪魔としてどうなのかと思い必死に、家に向かおうとする足を止める。こうして帰りたい悪魔同士の我慢対決が始まったのだ!!


決着はすぐに着いた。幸せな結婚とはどういうものなのか?そのたった一言にベルフェゴールはここ数百年以来感じていなかった強烈な興味を抱いた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


「幸せな結婚とはどのようなものか、まず前提条件として結婚とは人間の番が結ぶ夫婦の契約てある。契約のしかたはいたって簡単で、紙に名前と血印を押せば良い。」


「、、、あの、、、ベルフェゴール様?」


「その契約は生涯継続される事が多いが、まれに契約しつつも別居、つまり実質的な契約の破棄や、離婚という完全な破棄などがある。」


「えと、、、あの、、、その、、、ぉぉーぃ、、、」


「また、金銭的な問題や家族絡みの問題で破棄したくとも出来ないことも多く、本当に幸せだと感じているもの達は一握り。それも主観だから一般的に不幸とされている状態でも幸せだといっている可能性がある。」


『、、、全然聞いてない、、、どうしよう、、、』


『俺この後友達と約束あるんだよなぁ、、、』


『限定パンケーキ売り切れちゃう。』


『アイツいま何してるかなぁ~』


『私が私のまま帰れなかったらごめんね、、、』


主がブツブツとつぶやき熟考する中、あるものは恐怖のあまり現実逃避を始め、あるものは友やパートナーに懺悔する。


暫くして、悪魔達にとって永劫にも等しい数分が過ぎ去り主が顔を上げた。その瞬間場に緊張が走る。


「ねぇ?」


「ハッ」


身体は震え、呼吸は浅くなり、冷ややかな汗が背中を伝う。裏返りそうになる声をなんとか抑え返事をし、主の言葉を待つ。すると肩にそっと手を添えられて。


、、、みんなごめんね。私のミスに巻き込んじゃって、、、いや、、、私は諦めない!怒りが私1人で収まるように全力で懇願する!!


「おねが『、、、ありがとー』へ?」


突然感謝され、ポカンとしながら思わず顔を上げる悪魔。彼女の目にはニッコリと、まるで荒野に咲く、一輪の花のように微笑むベルフェゴールの顔が。


「、、、きれい、、、」


ポツリと漏れた悪魔の呟きに、ベルフェゴールは一瞬キョトンとすると、恥ずかしそうに目を伏せもじもじし始める。あまりの可愛さに心臓を撃ち抜かれ、抱きつきたいという欲望とそんなことしたらひどい目に遭うという理性が戦争を始めた。


「、、、嬉しい、、、」


上目遣いという猛毒付きの矢が理性に打ち込まれ、あっけなく敗北。目の前の主をぎゅっと抱きしめる。


「ムグッ」


周りが息を飲み、叫ぼうとするも声は出ず、ベルフェゴールは突然の事でされるがままだ。なんとか混乱から立ち直り、豊満な胸に顔を埋めたベルフェゴールはぎゅっぎゅっと強く抱きしめ感触を楽しむ。突然ハッと顔を上げ首まで真っ赤に染めながら、拘束から脱出しようと突き放す。それすらも愛おしく思え、頭をナデナデすると目尻を緩め、ぽわわんとした顔になる。その後ハッとし逃げようとするもまた撫でられてぽわわんとするを繰り返す。


周りがハラハラし、精神を磨り減らすなか悪魔とベルフェゴールは母と反抗期の娘のようなことを繰り返す。次第にそのほほえましい光景に、周りからは恐怖が薄れ生暖かい視線が向けられ始めた。そしてついに羞恥心が限界に達したのか


「、、、こっこころ!いくよ!!」


「えっあっはい、、、もうちょっと見ていたかったのですが、、、」


「、、、いいから行く。心を司る悪魔なんだから怒ってんのわかるでしょ?」


「え?喜んでますよね?いえなんでもありません、、、〈冥界之門〉、、、あと感情に関わることだから私が呼ばれたってことはわかってますが、できれば前日までに一言ください。私にも予定とかあるんですから。」


「、、、(プイッ)」


「ハァー、、、」


ベルフェゴールは人間界へと降りていった。


「お騒がせしました。ベルフェゴール様は幸せな結婚とはどのようなものか、について地上に探究をしに行ったと七つの大罪のどなたかにお伝えください。では。」


残された悪魔達は


(((子供、、、欲しい!)))


始めにあった恐怖心は何処へやら。すっかりベルフェゴールの可愛さにやられ空前のベビーブームが起きたとか起きないとか。

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