調理(?)をしよう!
うろうろ、うろうろ……え~と?ここでいいかな?俺はうろうろさ迷った結果、以前院長と密談?した部屋にたどり着いた。うん!
「いすならべてけがわのっけたらやすめるな。じゃあこれしま…『、、、必要ない。』んひゃ!!」
突然後ろから声をかけられ、驚く俺。いつの間にか後ろに回られていたようだ。ってかなんで獣人の耳に引っ掛かんないの!?この人もベルも院長も!!獣人最強とか思ってた昔の自分が恥ずかしい、、、(数週間前です)
「ってかたいちょうだいじょうぶなの?」
「、、、問題ない。ベルに膝枕してもらったから完全復活。」(むふぅー!)
ひっ膝枕!?ベルの!?なんてけしから……ゲフンゲフン羨ましいの!!私もして欲しいなぁ、、、私はチラリとベルフェゴールの後ろから現れたベルゼバブを見る。するとベルはこてんっと首をかしげ、
「してほしいの?」
と問いかけてくる。私は迷わずうなずってダメだダメだ!!俺は男俺は男俺は男だから膝枕なんかダメ……あれ?地球でも夫が妻にしてもらっていたから合法?しかも今は体だけ見ると同性なんだからセーフ?いやダメダメ!!心を強くもて!わたしぃ~!!私は左手を胸の前で握り、右手を天に突き上げた。
「、、、なにやってるの?」
「さぁ?」
よひ!もちついた!!ええっと?
「そうだ、ちょうしょくをつくろうとしてたんだ。」
私は今更のように当初の目的を思い出した。
「、、、そうだったの?」
「そんなこといってたっけ?」
そのためにここまで来たんだよ!!ボケちゃったの!?あれ?私もしかして言ってない?あれ?そんなこと無いよね?いっ言った!うん言ったよ!!そういうことにしとこ!!異論は認めない!!
「ここまできたんだから、ついでだしふたりもてつだって?」
私がそう頼むと、二人は顔を見合わせ
「「(、、、)やだ」」
端的に拒絶の意を示した。え?なんで!?
「、、、疲れるのやだ。」
「食べ専。」(※食べるの専門という意味。)
、、、2人とも、、、私はがっくりとかたを落とし、とぼとぼと厨房へと向かったのだった。それを見たものは、あまりにも哀愁漂うその背中に心のなかで黙祷を捧げたとかなんとか。
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さてと?厨房に着いた俺は今素材とにらめっこしている。限られた素材を使い、豪華で、あまり重たくなく、短時間で出来る料理という難題に挑んでいる。難易度も(不本意ながら)幼女1人でも用意できるようなレベルじゃないといけない、、、そんな都合の良い料理あるか?
「うぅ~ん?」
「、、、唸るルナ、、、かわいい、、、」
「なにできるかな?わくわく!」
、、、ガイヤガウルサイ
「みてないでてつだ、、、わないね?」
手伝えと言おうとしたらバッと目を反らされた。どんだけ手伝いたくないの?それとも俺なんか悪いことした?悩んでても進まないから取り敢えずスキルで台を作って、よいしょっと。まな板は、、、おいだれだあんな遠くにおいたやつ?ってかさっきまでここにあったよな?ベル達を見ると、またバッと目を反らされる。
「、、、べ『、、、グゥ~、、、』、、、べ『グゥー』、、、」
耳がちょっと赤くなってるベルゼバブがかわいい。これ見ただけでやる気が上がる。でも立ったまま狸寝入りしているやつ見てやる気下がったから収支はとんとんだね。
ハァー、、、一旦降りて台を移動させて取り行くか、、、面倒だけど、、、いや待て?
俺はスキルを起動させる。まぁ何ということでしょう!誰も触れていないまな板が、風に押されこっちへスベって来たではありませんか!なんてバカなナレーションを頭ん中で入れてみる。うん。無かったことにしよう。
そうだよ。この世界にはスキルがあるんだからそれ利用すりゃいいじゃん。俺は早速スキルを検索……あった。〈念力〉〈風刃〉〈熱操作〉〈熟成〉〈発酵〉俺は見つけたスキルを見て満足げに頷くと
(スッ)
指揮者のように静に両手を上げる。そして、
〈統率〉〈楽隊〉
―――――――♪
俺の両手の動きに合わせ、静に音が紡がれる。まるでガラス細工のように、繊細で、滑らかで、美しい音色が岡ノ上の寂れた孤児院を優しく包み込む。
それだけではとどまらず音色は風に乗って町へ流れ、銀虎に怯えるもの達の心に、わずかばかりの平穏をもたらしたのだった。
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、、、なんだ?これは?
私は間抜けにも大口を開け、信じられない思いでその光景を眺めていた。目の前では虚空から音が発せられ、私の無駄に長い生の中で最上位だと断言できる程素晴らしい曲が奏でられている。これだけならまだわかる。いや全く理解できないが常識の範囲内、、、でもない。
「、、、」
そっそれはさておき問題は次だ。私の目の前では、曲に合わせ食材が宙を舞い次々に加工されている。意味がわからない。なぜパン生地を捏ね、高速で発酵させながら形を整え、焼ける?なぜ野菜を同じ大きさに風魔法で切れる?なぜ宙に浮かぶ大きな水滴の中でスープが作られる?それより何より
なぜこれだけ多くの繊細な作業を同時にして魔力が暴走しない?
これだけ繊細に魔法を使えば必ずどこかが粗くなるか暴走する。魔力の扱いに最も長けている悪魔の長である私ですら不可能なことを、それどころか七つの大罪、四大天使の全員が協力してやっと出来るようなことを目の前の獣人の小娘はなぜ1人でやっている!?
私は思わずベルを見ると、ベルは静に微笑んで
「ね?」
可愛らしく首を傾けた。
嗚呼、通りでベルが気に入るわけだ。
コイツは、いや、マスターは長い時を経て、いつの間にか立ち止まってしまった私達に新しい景色を見せてくれるだろう。
いつもは全く仕事をしない私の表情筋は、久方ぶりに働いているようだった。




