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気まぐれ少女どこへ行く?  作者: 月見 瑠那
産声
54/98

春一番

皆苦痛のためか額に大量の脂汗を浮かべ、歯を砕かんばかりに噛みしめ腹を押さえ死屍累々と床に転がるなか、輝かんばかりの銀髪をもつ、芸術を司る神の最高傑作と思えるほど美しい少女が悠然と歩みを進める。


「たす、、、け、、、て、、、」


銀髪の少女の足元にいた子供が苦しそうに、少女に助けを求め、手を伸ばす。しかし少女は、


「あきらめろ。じきにらくになる。」


少しあわれむような目を向け、静かに呟いた。少女は救いの手をさしのべる気がない。その事を悟った子供はその目に絶望を宿し、手は力尽きパタリと落ちた。


それを見届けた少女は美しい顔を歪める。その顔に浮かぶのは怒り、悲しみ、安堵、後悔、様々な感情が浮かんでは消え、混ざりあう。


少女はまた視線を戻し、歩みを進める。この場に立っている、もう1人の女性に向けて。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


今日の明け方、3人組の冒険者によって運び込まれた貴族のような美しい少女。高価な魔道具の服に身を包み、誰もが振り向くような美貌をもってなお旧友のような話しやすさを感じさせた。


とても臆病で触れたら壊れてしまいそうなあやうさを感じさせる子供。ありえないほどの魔力を持ち、精密に操って見せた大魔導士。飢えで弱りきった子供達に食べ物を与え救ってくれた恩人。


そんな彼女が様々な感情を浮かべ、宝石のような綺麗な涙で目を濡らしながら私のもとに歩み寄ってくる。私は食べ過ぎで苦しそうに、しかし幸せそうにしている子供を看病していた手を止め彼女に向き直り、頭を下げた。


「、、、ありがとう、、、ござい、、、ました、、、」


彼女がなぜ、複雑な思いをしているのかはわからない。しかし、この感謝だけは伝えたい。そう思って頭を下げた私。そんな私のみ見に届いたのは、


「だれ?こどもたちをくるしめたげんきょうは?」


静かな、されど底知れない怒りを感じさせる声だった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


夜、とある小規模な商館の1室に二足歩行のぶt 、、、ゲフンゲフン、、、丸々太った裸の男と、チャイナドレスの露出をさらに増やし、もはやさらしとふんどしだけのような格好をした美しい女性がいた。このゴブリn、、、ゲフンゲフン、、、醜い、人間にほんの少しだけ似ているような気がしなくもなくもなくもなくもない生物は薄汚く不潔感漂うこの館の主であるオーk、、、ゲフンゲフン、、、ミルロッド・オーロックは目の前に積まれた金貨の山を満面の笑みで眺めていた。


「ハッ今カイも大量ダ。グヘヘヘへあの世間シラズのババアのおかげだな!感謝してヤロウ!喜ぶガイイ!グヘヘヘへ。おいソコの薄汚い売女、もっとこっちニヨレ!」


「スンッ、、、スンッ、、、」


「オイ!聴こえないノカ?孤児院から拾ってヤッタンダゾ?まさかその恩を忘れたワケデハ無いだろうな?」


「そんな恩なんて----------」


「それ以上言ったら不幸な火事ガあるカモな?」


「ッ!!、、、すみま、、、せん、、、でした、、、」


「ブヒ!はじめからソウシテイレバよいのだ。ブヒヒヒヒ!」


女性は涙をこらえようと歯を食いしばるが、頬をつたう涙を止めることはできなかった。


「なんダ?その不快ソウな目ハ?こっちはオレサマの時間をイヤイヤさいてヤッテるんだゾ?」


「そんなに嫌ならやんなければいいじゃない、、、(ボソッ」


「なんだとこの売女フゼイが!!」


醜い謎の生b、、、もうブタでいいや。いやブタに失礼か、、、新種の丸い生物は、口から唾液を撒き散らせながら女性を殴る、、、が、ろくに運動していないどころか睡眠や排泄さえその場で済ませるほどの怠け者の拳ではダメージを与えることはできなかった。


慣れていないものからすれば、あまりの汚さに精神的なダメージはクリティカルを受けただろうが、ここ一週間ほどこの部屋で新種の丸い生物の世話をさせられていた女性には効果はなかった。


全くこたえた様子がなく、むしろ睨み返してくる女性の態度に腹が立ったのか、コップの中の水をかけようとした。まぁ、筋力が足りなすぎてただ溢しただけのようにしか見えないが。


「オイ!さっさと飲メ!早くシロ!火事ガ起きるマエニナ!」


新種の生物は喚き、女性が悔しさに形のよい、ふっくらとしたさくら色の唇を噛み締めながら汚物の混ざった水に口をつけようとしたその瞬間、


(ドッッッゴオオォオォオォォォオォォォン!!!!!)


突如壁に風穴が空き、轟音が響く。その音と風圧に驚き、顔を上げるとそこには、美しい白銀の虎がまるで月従えるかのように静かにたたずんでいた。


「かみ、、、さま?」


思わず呟くも返答はなく、虎は瞳の奥に怒りの炎を揺らめかさながら、


『さあ、、、狩りの時間だ。』


そう、静かに宣言した


この日局所的に吹いた銀の暴風は1人の女性の人生を大きく変え、人々に破滅と救済、幸福と絶望を与える春一番として吹き荒れるのだった。

豆知識!


春一番とはその年の一番初めに吹く暴風のことだよ!

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