第59話 不死鳥
羽を広げれば5~6mはあるだろうか‥‥‥とても美しく巨大な鳥だ。だが何より特徴的なのは体に実体が無いということだろう。
全身が青白い炎でできており、背景が透けている。鑑定を行使する――
不死鳥
精霊種 Lv2981
HP 2140/2140
MP 8320/8320
筋力 1418
防御 1265
魔防 2547
敏捷 6486
器用 1080
知力 18652
幸運 3284
精霊種‥‥‥見たことのない表記だな‥‥俺がそんなことを考えていると後ろで何人かの団員が不死鳥を攻撃するため武器を構えた。
“朱雀”の団員とはいえ全員が魔物に有効な“気功”や“魔法剣”が使えるわけではない。そういった団員には魔鋼鉄の武器(中国では“魔鉄”と呼んでいるらしい)が支給され、戦っていた。
そんな団員たちが魔鋼鉄の槍や弓矢、短剣など一斉に不死鳥に向けて投げ放った!
だが、全て不死鳥をすり抜けてしまう。やはり実体が無いので物理攻撃は効かないようだ。
魔法なら効くかもしれないが、ここで使うのもちょっとな‥‥‥そんなことを考えていると、頭上で飛び回っていた不死鳥が大きく羽を広げ威嚇するように叫喚した!
槍なんかを投げたから怒ってるんだろうか? 不死鳥はバタバタと羽を扇ぎ始める。扇いだ羽からごく小さな青い炎が飛び出し、こちらに向かってくる。青い炎の欠片は大きな光の炎となりもの凄い速さで周囲に降り注ぐ!!
地面にあたると爆発し燃え上がった! “朱雀”の団員も慌てふためいている。
「私と劉で相手をする! 他の者は下がれ!!」
王が叫んで副団長の劉と共に武器を構え、急降下してくる不死鳥の前に立ちはだかった!
いくら彼女が強くても物理攻撃が無効になる相手では分が悪いだろう‥‥そう思って助けに入ろうとした時、王の棍棒が不死鳥を叩き落としていた!!
劉も王ほどではないが体や武器に“気功”を纏っている。彼が振るう槍での攻撃も不死鳥には効いているようだ!
やはりあの気功は魔法と同じような効果があるのだろう。レベルの差はかなりあるが、善戦してると言える。
不死鳥が飛び上がろうとすれば、王に叩き落とされ、地に落ちれば劉の槍で攻撃される!
「これは‥‥いけるか?」
そう思った瞬間、不死鳥が光り輝き爆発した!! 王と劉が吹き飛ばされる。
突然の出来事に驚いていると、空高く飛び上がった不死鳥が羽を大きく扇いで、いくつもの炎の玉を“朱雀”の集団に向かって放ってくる! 至る所で爆発し団員が巻き込まれていく!!
「怒り狂ってるところ悪いが、それ以上はやめてもらおうか‥‥‥」
右手をかざして力を籠める。
「重力圧殺!!」
不死鳥が地面に叩きつけられる! 例え実体の無い炎でも重力の影響は必ず受ける。
まったく動きがとれず、悲鳴に近い音を出し抗おうとしているが、このまま仕留めさせてもらう!
俺は両手を胸の前に構え、空間を圧縮するように力をこめる!
「――重力圧壊空間――!!!」
超重力によって、不死鳥の周りの空間が歪み始める。声にならない声を上げ、炎が全て消えていった。
「テイム!」
魔法陣が現れ光が上空に向かって伸びていく‥‥‥右手のリストボードを確認するが‥‥‥
「アレッ!? 失敗してる! なんでだ‥‥‥」
おかしい、なぜ失敗したんだろう? その時、小さな光が上空に昇っていく‥‥光は強い輝きを放ち再び青い炎の不死鳥となった!!
「なんだコイツ!?」
俺は改めて”鑑定”でステータスを確認した。さっきは【スキル】などをちゃんと見ていなかったが‥‥‥
【固有スキル】の欄にいくつか表記がある。その内のひとつに目が留まり、さらに鑑定してみる。
<不死身> UR
死ぬことが無い。
「何! コイツ死なないの!?」
倒すことができないなら、当然“テイム”することもできない。どうする‥‥‥倒す方法も捕らえる方法も、今の俺には無いぞ。
不死鳥は上空を旋回しながら、嘲笑うように消えてしまった。
王と劉がヨロヨロとこちらに歩いてくる。爆発の時“気功”でガードして致命傷を避けたみたいだ。
“朱雀”の団員も怪我人は大勢出たが、命を落とした者はいなかった。
「五条‥‥あの炎の鳥はどうした?」
王は自分で回復魔法をかけながら俺に聞いてきた。かなりダメージを負っているようだ。
「逃げていったよ。追いかけるのは難しそうだ‥‥‥」
「そうか‥‥‥」
力なく、そう言った王は疲労の色を隠せないでいた。




