第17話 魔鋼鉄
「坂木1佐! 合同試験部隊が戻ったようです」
「そうか‥‥会議室に集めてくれ」
合同試験部隊は陸自と合同で行なっている“試作武器”の実戦使用を行う部隊だ。
「駒田1尉、どうだった?」
敬礼している駒田に単刀直入に聞いた。結果が早く知りたかったからだ。
「ハッ! 予想以上の効果です。人型の生物であれば、ほぼ一撃で倒すことができました。銃弾であれば20発以上撃たないと沈黙させることができないことを考えれば成功だと思います」
「そうか‥‥‥」
“試作武器”とは青黒い大地の一部から採掘できる金属で造った物のことだ。日本では、これを魔素を含んだ金属“魔鋼鉄”と呼んでいる。
現在は刀剣、鈍器を造り、実戦で試すことになった。
刀剣や鈍器は相手にダメージを与える部分だけを魔鋼鉄で造り、他の部分は既存の金属で造ればいいので魔鋼鉄の消費を抑えることができる。
魔鋼鉄は採取が難しく希少なため、多く使うことはできない。今回は少量確保できた材料を使い6人分の武器ができたため、試験的に運用を認めた。
もちろん安全を確保するため他の数十名の隊員には銃火器での援護をさせている。
「坂木1佐。この武器はあといくつぐらい用意できるんでしょうか?」
「今ある素材では、あと20~30が限界だろう‥‥‥」
「20~30ですか‥‥‥」
戦力的には、とても足りない‥‥‥自衛隊には採掘を担当する班があるが、各地の自衛隊が化物との交戦で被害を出している中、人員が不足しているのが実情だ。
東京や福岡以外にも“化物”が溢れ出している場所が多々ある。北海道、山形、福島、新潟、長野、茨城、鳥取、広島、高知、宮崎、熊本などだ‥‥‥どこも大きな被害を出している。
それにしても不思議なのは長野だ。東京からも近く、県内にも巨大な大地が盛り上がっているのに一般人の被害が少ないと情報が入っている。
偶然か? 詳しいことが分からないのでなんとも言えないが‥‥‥‥。
「あの‥‥‥1佐、少しよろしいでしょうか?」
「どうした? 駒田」
「実は、化物と交戦した後、参加した隊員の中から、その‥‥‥おかしなことを言うものがいまして‥‥報告するかどうが迷ったのですが‥‥‥」
「おかしなこと? どういうことだ」
後ろの列から、一人の女性隊員が出てきた。
「君は、桜木1曹‥‥‥‥何かあったのか?」
「その私、見えるんです‥‥‥」
「見える? 何が?」
「その‥‥人の前に職業みたいなものが‥‥‥‥ゲームのステータス・プレートみたいに‥‥‥‥‥」




