第128話 一ヶ月
次回から投稿ペースを3日に1回にしたいと思います。最終話まで、このペースで書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。次回は5月29日の19:00を予定しています。
【????】
「………ヒュブリスが敗れた……」
「ヒュブリスが!? バカな。“王”に唯一傷をつけた最強の勇者だぞ!」
「だが事実だ。一度殺したはずの人間が蘇ってヒュブリスとラーヴァナの両方を倒している」
「信じられん……人間にそんな力があるのか?」
「ラーヴァナ……10の命を持つ“神託の獣”まで倒されるとは……」
「なんにせよ、このままでは計画通りに事を遂行できんな。万が一にも“王”の身に何かあれば一大事だ」
「人間の世界への侵攻は白紙にするというのか?」
「少なくとも、あの人間はなんとかせねばなるまい」
「その者は今どこにいるんだ?」
「“次元の迷宮”の入口に行ったのは確認している」
「“次元の迷宮”? あれはイレギュラーに出現したものだろう。何故そんな所に……まさか入ろうとしているのか?」
「もしも、我らの世界に通じる道だと思っているのなら……」
「僥倖だ……我らが手を下すことなく始末できる」
「奴が“次元の迷宮”に入るか否か、確認する必要があるな」
◇◇◇◇◇◇◇◇
【日本・岐阜基地】
「凄いですよ五条さん! イギリスから【ガーター勲章】が例外的に、フランスからは【レジオンドヌール勲章】他にも【イタリア共和国功労勲章】やローマ教皇から【聖シルベストロ教皇騎士団勲章】なんかが検討されてるってありますよ」
「日本でも最高位の勲章である【大勲位菊花章頸飾】の授与が確実だとか。それと国民栄誉賞も……一番確実なのはノーベル平和賞じゃないですかね?」
坂木さんと清水さんが、新聞に書いてある記事を読み上げて俺に教えてくれてるんだが……。
「ありがたい話ですが、本当だとしても全部断るしかないですね。そもそも平和になってませんし」
「いいじゃないか、ちょっとぐらい! 五条さんはもっと評価されてもいいと思うぜ。それだけのことをやってるんだから」
清水さんが憤慨していた。そう言ってもらえるのは嬉しいけど……。
「南極には行かれたんですか?」
「ええ、行ってきました」
坂木さんたちには南極に何かあるので調べてくるとは伝えていた。
「何か見つけたんですか?」
「見つけるには見つけたんですが……」
俺は黒騎士との戦いが終わりレオたちがそれぞれの国に帰った後、さっそく南極に行ってみた。
地図にあった場所に行くと洞窟があり、その入口は虹色の膜で覆われている。軽く触れようと思ったが、何か凄く嫌な予感がした。
俺は一旦入ることを断念し、準備を整えてから挑戦する方がいいと考えてこの岐阜基地に戻ってきた。
あの洞窟に入れば、しばらく戻ってこられないかもしれない。
俺はそのことを坂木さんたちに伝え、まず防衛のために自衛隊の強化を提案した。
「確かに、五条さんが居ない間に何かあったら怖いからな」
「南極に行くのを止めるという選択肢は無いですか?」
不安になった坂木さんに言われたが、南極には行かなければならないという予感があった。それに、ただ守りに入っても問題は解決しない。
そのことを坂木さんに伝え、納得してもらう。
「でも、自衛隊の強化といっても具体的にどうするんですか?」
「考えがあります」
俺は坂木さんたちと別れた後、瞬間移動でフランスに飛んだ。
「先生!」
ノアたちに会いに来た。バンコクで会った時はゆっくり話せなかったので、子供たちと少しではあるが団欒する。
そして、ここに来たのには目的があった。
「ラファエルとガブリエルに話があるんだ」
「僕たちに?」
「なに? 先生」
俺は亜空間から職業ボードを取り出した。“鍛冶職人”のボードだ。
この双子のステータスを鑑定で確認すると、鍛冶職人のレベルは99とカンストしていて職業スキルのランクは“B”だった。
彼らは今でも固有スキルがあるため、かなり高度な道具の“生成”はできるが、もっと鍛冶職人のレベルやランクが上がっていけば、より強力な道具を大量に生産できるはずだ。
「このボードの表面をタッチしてみてくれないか」
俺以外の人間が職業ボードを使えるかどうかは試したことが無い。
どうなるか分からなかったが双子は興味深そうにボードを見ながらガブリエルの方が表面をタッチした。
「わっ!」
ボードからは光が溢れ、ガブリエルの体を覆ったと思ったら光の粒子になってボード自体は消えてしまう。
俺が使った時とは違った反応だったが、どうやらうまくいったようだ。
鑑定するとガブリエルの鍛冶職のレベルは1に戻っていた。俺は弟のラファエルにもボードを渡して使ってもらう。
鍛冶職人は魔物を倒さなくても、“生成術”を使うことでレベルを上げることができる。彼らに協力してもらえば考えていたことを実現することは可能だろう。
「先生、どういうこと?」
不思議そうにノアが聞いてくる。俺は自分がこれから南極に行くこと、しばらく戻れないかもしれないことを話し、これから子供たちに何をしてほしいかを細かく説明して頼むことにした。
彼らは二つ返事で俺の頼みを聞いてくれる。とてもありがたい。
次に俺はレオたちのもとへと向かった。
「じゃあ、頼む」
レオからデュランダルを預かり、魔力を発動する。小さな魔法陣が剣先から柄の部分まで移動すると魔法陣はそのまま消えてしまう。
<神殺し>の能力付与に成功したようだ。俺は聖域の騎士団が持つ、全ての武器にも付与を行う。かなりの魔力が必要だが“無限魔力”がある俺には関係ない。
そして――
「まさか五条と剣を交える日が来るとはな」
俺の前で剣を構えるレオは風の魔力をデュランダルに集める。
「手加減はできないぞ」
「望む所だよ、レオ」
レオの持つ剣と俺の持つ剣がぶつかり合い、爆風が巻き起こり傍にいた聖域の騎士団のメンバーが吹き飛ばされないように必死に耐えている。
レオだけではなく、フレイヤやカルロなどにも俺が戦いで教えられる限りのことを教えようと思う。
戦闘においては彼らの方がプロフェッショナルかもしれないが、俺にしか教えられないことがあると思ったため戦いながら学んでもらうことにした。
更に中国にも渡り、“朱雀”の団員の持つサルマンの武器にも<神殺し>の力を付与し、団員とも戦いを通して力量の向上を図る。
王と剣を交えた時……
「五条、南極へは一人で行くのか? 私はついていってもいいぞ。足手まといにはならないと思うが……」
「ありがたいけど止めておこう。南極は今までで一番危険だと思うから、王は巻き込めないよ」
「そうか……」
王はどこか不満げな表情をしていたが納得してくれた。
その後も日本政府を通して、各国の首脳に南極に行くことを極秘に伝えてもらう。俺がいなくなったと一般の人に知られると騒動になりかねないからだ。
一部の首脳からは行くこと自体を慰留されたが、キチンと説明して同意を得ることができた。
こうして俺が思い付く限りのリスク管理を周りの人にお願いする。
そして一ヶ月後……
全ての準備が整い南極に来ていた。
少し時間はかかったが、俺がしばらく居なくなっても大丈夫だろう。今まで一人で戦うことが多かったが、信頼できる仲間がいることに心底良かったと思えた。
南極の洞窟の前に立ち、洞窟の入り口にかかる虹色の膜に手を入れてみる……特に問題も無かったので、そのまま中へ進むことにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇
五条が南極の洞窟に入った翌日、世界に異変が起こる。
未だ少数ではあるが出現していた魔物が一斉に姿を消した。世界中の人々が困惑していると、衝撃のニュースが世界を駆け巡る。
モンゴルの上空に空間の歪みが生まれ空に漆黒の船団が現れたというものだ。
その数、約十万。
前代未聞の出来事に世界の国々は軍を派遣することを早急に決定。
世界各国の軍と異能者の集団、“朱雀”や聖域の騎士団がモンゴルに集結することになった。
ここに地球の戦力と、異世界の戦力との最終決戦が幕を開ける。




