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現実世界に現れたガチャに給料全部つぎ込んだら引くほど無双に  作者: ARATA
第七章 フランス・聖ヴィクタル修道院編

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第103話 超常生物

 パリの街で虫や鳥の姿が消える。少し変だと感じる人はいたが、それが大きな問題になることは無かった。


 初めて問題として表面化したのは、街中で一人の男性が倒れてからだ。


 その男性は通勤途中に路上で倒れ、救急車で運ばれたが医者はその異常さに気づいた。身分証には20代とあったが、どう見ても50歳は超えているように見える。患者は衰弱していて回復の兆しが無い。


 結局、原因も治療法も分からないまま翌日に男性は亡くなった。


 大きなニュースにもならなかったこの出来事はその後、大問題になっていく。同じように倒れる人間が続出したからだ。


 パリの中心地から広がったため、なんらかの感染症ではないかと疑われフランスの保健当局が動き始める。数日かけて調査が行われたが、原因は分からず調査を行なった役所の人間も倒れ病院に運ばれた。


 フランスは緊急で街の一部を封鎖し、周辺の住民に外出制限をかける。パニックを防ごうと“厄災の日”の後に成立した報道統制特別法を利用して報道各社に自粛を要請した。


 これが後々、問題を大きくすることになる。


 数日経っても問題が解決するどころか、病院に担ぎ込まれる患者の数は増え続けた。その上、被害が出る範囲は拡大する一方だ。


 予想外に広がる原因不明の事態にフランス政府はWHOに報告するが、世界中のどこにも前例がないため問題の解決のメドはまったく立たなかった。


 これが病気ではないとフランス政府が気づくのは、それから数日後。病気の発生原因の中心地として封鎖され、誰も近づかなくなったリュクサンブール公園に()()があったからだ。


 公園の芝生の中に20メートルほどの“塔”のような物が出現している。


 フランス連帯保健省の人間が完全防護服を着て調べようとしたが、車で近づいただけで全員死亡した。遠距離から望遠レンズで確認すると、それは明らかに人工物ではない。


 表面はヒルのような細長い生物に覆い尽くされ徐々に巨大化していた。


 フランス政府はこれを超常生物であると判断し、すぐに欧州議会にプロメテウスの派遣を要請する。



 「何? パリに化物が」


 「はい、プロメテウスが調査に出たそうです」


 「すぐに片付けろ。ドイツの州議会選挙に影響すると面倒だ」



 ハンス・ベレントは特にこの出来事を気にしていなかった。化物はそこらじゅうにいるし、新たな化物がいたとしても気にするほどのこともないと。それよりも自分たちの政党の州議会議員の選挙の方が重要だと考えた。


 この世界の人間は悪い意味で危機になれてしまっている。


 調査に向かったプロメテウスはこの“塔”を超常生物と断定し、攻撃することを決定。近づけないため遠距離からの爆撃を行うことにした。


 この日、数十発の対異形生物用の新型弾道ミサイルが撃ち込まれる。その威力は凄まじく“塔”は跡形も無く吹き飛ぶ。


 攻撃は完了したが、近づくのはまだ危険と判断され本格的な調査は翌日行われることになった。だが翌日、彼らは信じられない物を目撃する。


 跡形も無く消えたはずの“塔”が更に巨大になって出現していた。


 これを機に事態の深刻度が変わっていく、プロメテウスは最大火力を投入し一気に決着を付けるため新型の爆薬を使った“MOAB”の使用を決定する。


 “全ての爆弾の母”と呼ばれるMOABはリビアの“統率者”を葬った超兵器だ。


 “塔”に対して行われた総攻撃は半日続いた。十数発のMOABも使用し、爆撃したが今度は完全に吹き飛ばすことができなかった。


 その生物の成長速度は想像を超えており、一時間単位で変化が確認できるほどだ。


 プロメテウスは攻撃の継続を断念し、緊急の会議を開くことを欧州議会に要請した。その間にも刻々と化物は成長している。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇




 「どうなっているんだ。化物への攻撃は成功したんじゃないのか?」



 突然、欧州議会議員が招集されることになった。プロメテウスの司令官ゲルト・シュミックの要請に応えたものだ。


 事前の情報が錯綜していて攻撃が成功したのか失敗したのかがハッキリしない。現場が混乱しているのか?



 「ゲルト陸軍大将。報告してくれ」


 「ハッ! 予定通り定刻に攻撃を開始しましたが、対象を完全に沈黙させることはできず。これ以上の攻撃継続で成果を上げることが困難と判断し中止しました」


 「要するに失敗したということか!」



 議場は重苦しい雰囲気に包まれる。ここにいる議員は私を含めて全員、作戦が失敗するなど考えていなかった。


 プロメテウスにはそれだけの戦力と信頼があったからだ。



 「我々が想定した以上の生物です。このままでは被害が拡大する可能性があり、今後の対応に関しまして議会のご判断を頂きたいと考え資料を持ってきました」



 そう言ってゲルトは会議室に用意されたスクリーンに化物の映像を映した。そこには巨大な灯台、あるいは塔のような造形物が映っている。


 そしてその頂上には何か“丸い物”が乗っているが‥‥‥。



 「周りから生命力を吸収しながら急速に成長しています。高さが800メートルを超えており、今も成長が止まらないことから“統率者”であると推定します」


 「統率者だと?」



 フランスには化物が現れる兆候は一切なかった。それが突然“統率者”!? 信じられなかったが目の前に映像がある以上否定することもできん。



 「それで、どういった生物なんだ」


 「生物学者によれば“虫”に近い生物ではないかと」


 「虫? 虫の化物など聞いたこともないぞ。間違いないのか!?」


 「はい、あの“塔”自体は<環形動物(かんけいどうぶつ)>いわゆるミミズやヒルのような生物の(たば)で構成されていると思われます。そして頂上にある球体ですが‥‥‥」



 球体が拡大された映像が映し出された。気持ち悪い写真だ。



 「これが“虫”の化物ではないかという最大の理由です。生物学者が全員、蛾の卵に酷似していると言っています」


 「蛾だと? そんな物なら破壊できるだろう! なぜ手をこまねいている」


 「我々も最優先で攻撃しましたが、もの凄い速度で再生しました。あの“塔”からエネルギーを供給しているとしか考えられません。プロメテウスが持つ火力では“塔”を完全に破壊するのは困難です」


 「では、どうしようと言うんだ。会議まで招集した理由は!?」


 「聖域の騎士団(サンクチュアリナイツ)に協力を要請してください。我々だけでは‥‥‥」


 「バカを言うな!! なんのために貴様らを組織したと思ってるんだ。今更そんな恥知らずなことができるか!」


 「しかし、彼等には我々には無い経験と実績があります。協力できれば討伐も可能かもしれません」



 ゲルトの説明を聞いて欧州議会議員の何人かは聖域の騎士団(サンクチュアリナイツ)に協力を求めるべきではないかと、ふざけたことを言う者も出てきた。絶対に認められん。



 「核や水爆を使っても構わん。必ずプロメテウスだけでやれ」


 「現在保有する最強の兵器は“MOAB”であり、対化物であれば核や水爆を超えるはずです。その武器でも破壊することができていません」


 「“MOAB”はあと何発残ってるんだ」


 「あと十二発です」


 「全て使え。ありったけの火力を投じて絶対に成功させるんだ。いいな!」


 「‥‥‥ハイ、了解しました」

 



 ◇◇◇◇◇◇◇◇




 その日の午後、“統率者”への攻撃が再開された。プロメテウスは自軍が持つ全ての火力を投入し総攻撃をかける。


 距離を取った爆撃機からの攻撃も行なったが、“統率者”の生命力を吸収する範囲が急速に拡大したらしく戦闘機パイロットが操縦中に死亡し、墜落した。


 自分たちが持つほぼ全ての特殊爆薬を使い切った時、更に巨大になった“塔”を見て軍部は絶望する。この生物の成長は加速度的だった。


 もはやどうにもできないのは明らかなため軍の上層部は作戦を中止し、欧州議会に報告することになる。


 議会はプロメテウスの作戦映像の一部始終を見ており、失望の声が上がった。


 作戦が失敗した後、議会には軍人だけではなく医学・数学・統計学の専門家が呼ばれ議員に対して説明が行われた。これは司令官のゲルトが現状の危機を政治家に認識してもらおうとしたからである。



 「統計学の専門家であるウィリアム博士からご説明します」



 ゲルトがそう言うと、ハンスは不機嫌そうに腕を組んだ。



 「あの“塔”は生物の生命力を吸収するようですが、問題はその範囲が拡大していることです。あと数日でフランス全土にその範囲は及ぶでしょう」


 「そんなことは分かっている。他に言えることはないのか!」



 ハンスはウィリアムを叱責するように言葉を吐いた。



 「“塔”はすでに千メートルを超える高さになり、成長が止まる様子がありません。それに比例するように生命を吸収する範囲も広がっているんですが、こちらの資料をご覧ください」



 ウィリアム博士はスクリーンに数々のデータを表示した。特に目を引いたのは指数関数のグラフだ。グラフの曲線が急激に右肩上がりとなっている。



 「もし今のペースで拡大すれば‥‥‥二週間で人類は絶滅します」



 ウィリアムの言葉にその場にいた政治家は絶句する。



 


 しばらくの沈黙が流れ、最初に口を開いたのはハンスだった。



 「‥‥‥聖域の騎士団(サンクチュアリナイツ)を呼べ‥‥‥レオ・ガルシアを」

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― 新着の感想 ―
無能ってすぐ怒り散らすよね
[良い点] 孤児院回は、なろうでは飽き飽きしてたので新しい展開になってよかったです。
[一言] 追加で記載w レオは議会を信頼出来ないと言っても許されると思うなw実際、信頼を築けるような事、議会何もしてないし それどころか、不信感を持つような事しかしてないとも言う この事態でハンスの…
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