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第1話   はじまりのガチャ

読みやすく、さくさくストーリーが進むように心掛けます。

 「なんだコレ!?」



 “それ”を見た瞬間、思わず口から出た言葉だった。

 

 仕事終わりに、いつもとは違う道を通って帰ろうとしたら、廃ビルの前の空き地に“それ”はポツンと置かれていた。


 <期間限定><いまだけ><レア以上確定><お得な商品の数々><開けてビックリ>など、これでもか! と言うほどの煽り文句が書かれた“ガチャ”だ。


 “ガチャ”と言っても見た目は少し小さめの自販機のようで、コインでガチャガチャ回すタイプではない。お札の投入口だけがある。


 近づいて、よく見ると‥‥‥



 一回、1万円



 「高っ!!!!」 



 こんな怪しい自販機に1万も払うのは頭のおかしい人間だけだろう。絶対やる人間はいない!!!  そう思って立ち去ろうとした‥‥‥‥‥‥がっ!


 ちょっと気になる‥‥‥いやっ! かなり気になる!!


 これは怪しい物ほど、やってみたくなる人間のさがなのか? それとも、この自販機の煽り文句に心理的トリックがあるのか??


 今、サイフの中には1万2千円があるのでできてしまう。分かっている。お金をドブに捨てるようなものだ。こちとら28歳にもなってフリーター。居酒屋で働いて、手取り16万しか稼げていない。


 そんな俺にとって1万円はデカイ‥‥‥しかし‥‥‥


 意を決して1万円をガチャ自販機に入れてボタンを押す。カシャカシャ、カランと軽い音がしてカプセルが落ちてきた。


 とりあえず出てきたことにホッとした。金だけ取ってなにも出てこない可能性もあったためだ。


 カプセルを手に取って開け、中身を取り出してみる。中にはビー玉のような玉と説明書と思われる小さい紙が入っていた。そこには、こう書かれていた。




<時空間操作>  SSR


食べると時間と空間を操作することができるようになる。




 「食べるのコレッ?!!」ビー玉じゃなかったのか。アメのような物なのだろうか?

 

 それにしても時間と空間が操作できるとか、ふざけている‥‥‥昔、ソシャゲでガチャの課金をやったことはあったが、まさか現実のいいかげんなガチャに1万円使うことになるとは。

 

 苦情の電話を掛けようとも思ったが自販機には電話番号などは一切書かれていない。掛けたところで相手にされないだろうけど。


 俺は、アメを口に含み、あきらめの表情で自販機を見た。うすーい甘味はあるがハッキリ言ってマズイ。


 もうこの自販機にかかわることはないだろうと思いながら、とぼとぼと帰路についた。




 家に帰って食事の準備をした。ひとり暮らしなのでなんでも自分でしないといけない。


 ビールを取り出しふたを開け、一口飲んで机に置き冷蔵庫からつまみを取り出し振り返った時、肘がビールの缶にあたって机から落としてしまった。



 「あっ」 

 


 その時だった。


 ビールの缶が空中で止まっている。映像を一時停止したかのような状態だ。驚いて周りを見渡してみると時計の針も止まっているし、さっきつけたTVの画面も停止している。


 数秒経った後、ビールの缶も時計の針も普通に動きだし、床にビールがこぼれていた。



 「うそだろ‥‥‥」



 信じられない出来事に呆然としながら、俺は腕に鳥肌がたつのを感じた。


 もう一度やってみようと時計の前に立ち、時間よ止まれと念じてみる。37、38、39、‥‥‥‥‥‥

 40秒にはならなかった‥‥‥時計の針は39秒の所で止まったまま動かない。


 本当に時間が止まっている。


 

 「あのガチャ、本物だったのか‥‥‥」

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― 新着の感想 ―
四年ぶりに読み返します!前は顔マーク評価は無かったなあ。ガチャはイイ。
[良い点] 読者を設定に引きずり込む手法、素晴らしいです。 ガチャ、という題材で私が最初に触れた作品がこちら。 単純にガチャの中身に興味を惹かれるし、その後の展開も読めない。 1話で世界観説明と、…
[気になる点] 1話目で時間止める能力とかもう将来が楽しみよ。
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