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深紅のアイリ - Scarlet Airi -  作者: 水色奈月
ー第2章 騎士ー
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 第25話 断末魔



 広がったほのお洞窟どうくつで逃げ惑った闇のきわに見えた大きなもの。



 一瞬大きな蜥蜴とかげに見えたそれは目のある部分から前に大きく一対の伸びた角を持つ爬虫類の様な魔物。口に人が立てるほどの巨体をしている。



 大きさが尋常でなく、大人10人が手を繋ぎ広げた腕の幅がある洞窟どうくつぎりぎりでその魔物から後ろに行くのは無理だと一目でわかった。まるで土竜(モグラ)の様に洞窟どうくつってくる。



 その爬虫類の様な魔物を眼にした瞬間、アイリ・ライハラは強ばらせた顔でみなに警告した。





「気をつけろ! そいつはタラスコンだ! 71階層のぬしだ! 好んで人を喰うぞ!」





 大蜘蛛(ぐも)2匹に背後を断たれ、正面奥から(ソード)では歯の立ちそうにない超大型の魔物に迫られイルミ王女と騎士らは逃げ場を失った。



「王女、我らで大蜘蛛(ぐも)を相手にする間に抜けて下さい!」



 リクハルド・ラハナトス騎士団長が前後を気にしながら、(ソード)を構え2匹の大蜘蛛(ぐも)に向かい合った。



 だがイルミ王女が返事をしない事にラハナトスはさらに声がけした。



「王女、長くは持ちません! 蜘蛛くもと戦い始めたら──」





「ならぬ! おまえ達を見捨て我だけが逃げよと言うか」





 イルミ王女が決意を告げたその時、大蜘蛛(ぐも)の後ろへ女騎士ヘルカ・ホスティラと若い男の騎士ヨーナス・オヤラそれぞれが斬りかかった。



 イルミ・ランタサルは騎士達の忠誠に決断を迫られた。





「アイリ・ライハラ!」





 大蜘蛛(ぐも)に斬りかかったヘルカとヨーナスの背を見ていた少女は王女に名を呼ばれ返事をした。



「何だよ、くりんくりん」



 この状況でまだ髪型を馬鹿にするかとイルミ王女はいらついたが、眼の前で騎士団長らが大蜘蛛(ぐも)に挑みかかり気持ちを押さえ込んだ。



貴女あなたに謝罪します! この状況をなんとかできますか!?」



 へぇ、とアイリは驚いた。イルミはプライドより配下を選んだ。仕方ねぇと少女は洞窟どうくつ内壁から離れ大声で返した。



「3体!」



「3体!? 大蜘蛛(ぐも)と爬虫類を何とかできるのですか!?」



 問われ続けて少女はめんどくさぁと思った。



「タラスコンは倒せるけぇどぉ──大蜘蛛(ぐも)はわらわらになるぞ!」



 わらわら!? あの小蜘蛛こぐもの事!? 王女が思いだした最中、正面から斬り込んでいた騎士らの内2人の男が大蜘蛛(ぐも)に組み押さえられ騎士団長が叫んだ。



「イルミ王女! 早くお逃げ下さい!」



 強ばらせた顔でイルミ王女は即断した。



「わかりました、アイリ! 小蜘蛛こぐもは任せなさい!」



 イルミ・ランタサルはそう大声で言った直後、大蜘蛛(ぐも)の間から、その後ろを長剣(ロングソード)刃口きっさきで大きな弧を描きながらアイリ・ライハラが駆け込んで来るのが見え、その少女が怒鳴ったのが聞こえた。





「動くな! 首が飛ぶぞ!!」





 一閃いっせん、眼の前の大蜘蛛(ぐも)2匹の胴が上下にわかれ、イルミ・ランタサルのすぐきわを青い残光が飛び抜けた直後、背後で凄まじい咆哮ほうこうが聞こえそれが断末魔へと変わり、イルミ王女が振り向くと爬虫類が左右に両断され壁へ倒れてゆくのが見えた。



 少女が長剣(ロングソード)を振り回しやいばの血糊を地面に飛ばすと、その背後に人の頭ほどもある真っ赤な魔石がごとりと落っこちた。



 そうしてアイリが背姿のままぼそりと告げた。





「わらわら」





 イルミ・ランタサルは、はっとして振り向くと数えきれないほどの小蜘蛛こぐもが一面に広がっていた。スカートを両手でつまみ上げ慌ててその小さな魔物を踏み殺し始めたイルミ王女はアイリ・ライハラの力量を甘く見ていたと思い知った。



 あんな大きな魔物すら一刀両断できる少女1人はまさに一国の騎士団──いいや、それ以上の兵力。



 アイリ・ライハラの真の力を見定めようとダンジョンに放り込んだのがそもそもの間違い。



 まだ2階層だったがこれ以上は時間の無駄だと王女は判断し、ある事に気づき小蜘蛛こぐもを踏みしめながら振り返り近づこうとしない少女に尋ねた。







「アイリ────貴女あなた、なぜあの大きな魔物を知っていたのですか」







 闇にアイリ・ライハラの髪と瞳が青く浮かび上がっていた。












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