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群青のアイリ - Ultramarine Airi -  作者: 水色奈月
ー第5章 波乱の攻城戦ー
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 第33話 奥技



「こいつらはすべて子だ。親が近くにいる!」



 そうフェリシアが怒鳴った寸秒、四人の目前に火焔かえんの津波が広がりその中央が急激に薄れた。






挿絵(By みてみん)








 いきなり今まで倒した赤竜の倍の大きさの巨竜が叫聲おらびごえを響かせ火炎割って現れた。







 フリーダはフェリシアが巨竜へ進み出ているのを眼にして顔を引きらせた。



 いくらフェリシア様でもこれは無理だと思った。



「万物の根源たる裁きの光よ、この手に集い祈る汝の力、天空のやりを持ち思い知らせよ。我は乞う。汝の力による安らぎを────」



 その早口の詠唱(チャンティング)を耳にした寸秒、フリーダは眼を丸くして戦斧せんぷを振り上げフェリシアの前に出ようとするサロモンと破戒僧ダイストに叫んだ。



「伏せてサロモン! ダイスト!」







贖罪の槍(スピアーデ・デズイナ)!」







 一瞬、夜空に光があふれ、その光りが一気に集まると上空から凄まじき勢いで落ちてきた城の斜塔よりも太い(スピア)が巨竜の頭部を粉砕し地面に突き刺さり爆発した地面が滝のように土砂を降らせた。



 その落石をダイストが聖なる防御法陣で防ぎ飛び跳ねる数多あまたの石の先にもんどり打って地面に落ちた巨竜の胴体を眼にしフリーダは初めてその魔法を眼にし鳥肌立った。



「フェリシア様──無茶苦茶です────こんな────」



 その弟子や男らに師匠フェリシアは背姿で警告した。



みんな、まだ片親だ。もう一頭、近くに雄の方がいるから」



 ハイエルフとその弟子が互いに魔杖をかまえ上げ爆炎の残穢ざんえが散りぢりに飛び広がる上空を見回し、倒した巨竜よりさらに大きいであろう雄の赤竜を探した。



「フェリシア様、また一撃で倒されるおつもりですか?」



 そうフリーダが小声で御師匠に問いかけた。



「どうしよう──だんだん難しくなって来てるから。これ以上大きな魔法使うと、みんなも巻き込まれるし────」



 フリーダは星空へおよがせている視線を一瞬眼を丸くしてハイエルフへ向け思った。



 この人は何を言ってるんだ!?



 今、見せた魔法でさえ最高ランクの攻撃魔法なのに、まだ破壊力で上回るわたしが知らないものを隠し持ってるのか。それも一つや二つではない口振りなのだ。



「フェリシア様、雄の赤竜はフェリシア様の先ほどの贖罪の槍(スピアーデ・デズイナ)とわたしの精霊魔法の金剛石霧消(デイヤマントストォプ)たたきましょう」



 少しをおいて考えたフェリシアはフリーダをめた。



「いいね、フリーダ。それでいこう!」



 上空から雄の赤竜が雌がられた様を見ていたのか、即座に襲って来ないことに怒りを操れる狡知こうちをもつ魔物だとフリーダは思った。



 フェリシア様も先のようには容易たやすくは──いいえ、あれが容易たやすいものか! ──簡単には倒せない。



 魔物に蹂躙じゅうりんされ村人が次々に殺された中でひっくり返した馬の水桶に隠れていた。



 その桶が持ち上げられ初めて眼にしたエルフに助けられその人を師匠と決め家族にしてもらった。



 魔法を一から教わり、十年かけてここまで来た。





 それなのに千八百年生きて研鑽を積んでる伝説の大魔法使いフェリシア様は、まだずっと先にいる。





 手の届かない先にいながら褒めて頭をなでてくれる。





 死なない。





 この人となら死ぬものですか!





「上からだフリーダ!!!」



 そう師匠が叫んだ一瞬フリーダは顔を振り上げ上空を見上げ────真上から翼閉じた城塞ほどもある巨大な赤竜が怖ろしい速さで降下してくる影が見えた。



 やはり赤竜は知能が高い。あれだと魔法使いの天空のやりを打ち込めぬと考えたのだ。



 それに金剛石霧消(デイヤマントストォプ)の攻撃スタンスよりずっと空高く、魔法が届く距離まで下りて来たなら速度が速すぎて狙いが定まらない!



 困惑するフリーダの真横でいきなりハイエルフが片膝かたひざ地に着き左膝ひだりひざ立て、両腕を横に広げこうべ下げ高速(ファースト・)詠唱(チャンティング)を始めた。



 わたしが混乱して代替えの方法をまだ見つけだせぬというのに、フェリシア様はもうわざを繰り出してくる。





 それも一度も耳にしたことのない詠唱(チャンティング)を!?





「────有を無に帰する昏きものよ。遠き彼方より放つ汝の力、地獄門を持って忌むべきものに喰らわん。我は想う。汝の力による答えを、奥技────────虚獄の奇襲────ユバハーションズ・フェステリーバ!!!」







 大魔法使いフェリシアの前の大地が爆轟を放ち裂け城よりも大きな何かが数多あまたの岩石を吹き上げ凄まじき勢いで駆け上るのを、フリーダはただただ鳥肌立って眼をとらわれていた。












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