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群青のアイリ - Ultramarine Airi -  作者: 水色奈月
★ 第4部 ★ ー第1章 大国の都合ー
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 第2話 円卓謀議(えんたくぼうぎ)



 夕刻遅くイルミ・ランタサルはアイリの思いをしかと拝聴した。



 だが国を動かすとなると根回しが必要となる上にことがいくさとなると負けるものを積極的に推し進めるにはゆかず騎士らや家臣かしんらの意見を聞いて判断しなければならない。



 そこでイルミ・ランタサルは翌日、騎士らの代表や数人の家臣かしんらを集め円卓会議を行うこととした。



 会議とは世間体で他国への侵略なので実質謀議(ぼうぎ)だと王妃おうひは思った。



 場所は謁見えっけん急拵きゅうごしらえの円卓が作られた。



 12人の配下のものらを見回して最後に現れたイルミ・ランタサルを一同立ち上がり敬意を表し彼女が腰を下ろしてから全員が座った。



「今日、集まってもらったのは他でもない。我が国の領地拡張についての会議です。このように集めたのは新たな領地として手にする国が大きく武力も相応に強いと思われるからです」



「どこですかなその矮小わいしょうの国は」



 家臣かしんの中では1番発言力を持つエリヤス・ヒエッカランタ長老だった。



矮小わいしょうかどうかは名を聞いて判断してください────東の大国、イモルキです」



 円卓の半数以上がどよめいた。



 そうだろう。恐れおののくがいい。簡単に答えに屈しないようにその名を心に刻めとイルミ・ランタサルは思った。



「待ってください。ランタサル王妃おうひ、どうしてこの場にライハラ剣竜騎士団長がお見えにならないのですか」



 騎士として第7位の中堅──ヴェルネリ・オクサラが他のものらにではなくイルミ・ランタサルに問うた。だが声高にヒエッカランタの腰巾着──家臣かしんミスカ・ラポラが思っていることを歯に絹着せぬ物言いで指摘した


「まだ子ども、お子様だからのう。重要な施策には荷が重すぎるのであろう」



 だがその物言いには触れずイルミ・ランタサルはアイリ・ライハラの威厳いげんを口にした。



「彼女が口にすれば天秤てんびんが一気に傾くからです」



 そう言うことで騎士団長アイリの意志を最後のカードとして手にしているとイルミ王妃おうひみなに知らしめた。



「簡単でしょうランタサル王妃おうひ様。総力戦で攻め滅ぼす」



 腕組みしたまま眼を閉じている騎士団長代理もつとめたことのある剣竜騎士団第2位のヘルカ・ホスティラがぼそりと告げ。みなが好き勝手に発言し始めた。



「ライハラ公の意志は決まっている。総力戦だ」



「軍事力は武力だけの問題ではなかろう。兵站へいたんで優位に立つイモルキが前線を押し返してくれば当方、東の領地を失うぞ」



「総力戦をちらつかせイモルキを和議に持ち込ませるのが重要でしょうな」



「デアチ国騎士団と近衛兵、総力4万に届きそうな兵力を持ってして譲歩することは何もない押し切ってみせましょうぞ」



いくさは避けねば。下四半期の台所事情をご存じであろう。万が一負け戦になれば我が国は戦事賠償で終わりですぞ」



 眉根寄せ眼を細めて唇をへの字に曲げて黙って聞いているイルミ・ランタサルがいきなり立ち上がり振り上げた星球武器せいきゅうぶきのチェインの先につけた打撃部位を円卓に打ち込んで、身勝手な会話を圧制した。



「ここは思いのたけを気ままに述べるティー・パーティーの場ではなくてよ」



 イルミ王妃おうひは男らを見回して続けた。



「理由はなんでもいい。やれるかやれないかのために貴方あなたがたを集めたの。やれないもの挙手きょしゅ!」



 王妃おうひが叩きつけた金属製殴打部分を見つめながら恐るおそる7人が手を上げた。その中に騎士が4人いることをイルミ・ランタサルは留意した。



「やれるもの手を上げて、はい!」



 5人が勢いよく手を上げた。その中に騎士が3人いることをイルミ・ランタサルは心に置いて椅子にドカッと腰を下ろして背もたれに身をあずけた。



「いいですか。これは意見を聞く場であり、決定する場ではありません。すでに言ったようにアイリ・ライハラの気持ちは決まっています。わたくしは止めに入りましたが彼女の意志は鉱石のように固く苦難の道を選びました」



「戦争万歳!」



 騎士団中堅の第13位騎士サロモン・リストラがこぶし振り上げ奇声上げた。



 いきなり椅子を背後に倒し立ち上がったイルミ・ランタサルは星球武器せいきゅうぶきを両手でつかみ身体を一回転させると手を放しくさり張り詰めた得物えものが恐ろしい勢いで回転して飛ぶと騎士サロモンの前の円卓に打撃部位が食い込み、彼が安心した寸秒チェインで跳ね上がっの部分が顔面に食い込んで第13位騎士は鼻血を吹き出し両脚を崩してその場に倒れ込んだ。







「何度も言うようにアイリ・ライハラの堅い意思をわたくしは止めに入ったんです────」







「これより開戦準備に入ります」



 そう言い捨てるイルミ・ランタサルの声が投げやりに聞こえた。












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