眠り姫と恋人
え? え? な、なんて? え? 知ってる? 私が悪戯してることを、知ってるって?
途端にさっきとは違う意味で体が震えて、一気に体が冷えていくのを感じる。
バレてた? バレてた! やばい、やばいやばいやばい!! 言葉で悪戯って言うのと、体感するのでは全然違う! 私がどれだけやっちゃってるのかバレてるってことじゃん! そ、そんなの、やばすぎる!!
「て言うか、本気で全く起きてるかもって疑ってなかった? さやちゃん、可愛い」
「…………ご、ごめんなさい!」
「え?」
また姫が何かを言ったけど頭にはいってこなくて、とにかく謝らないと! と思った私は気づいたらソファから滑り降りて土下座していた。
「ちょっ、ちょっとさやちゃん? そう言うのいらないよ?」
「まことに申し訳ない……!」
「……もう、さやちゃんって、結構変な子だよね。いや、まあ、変なのは前からと言えば前からだけど」
顔をあげられない私の前に、姫までソファから降りてくるのを気配で感じる。一体何を言われるのか、どうされるのか。
さっき聞きのがした分まで、姫の気持ちを受け止めないと! と気合いをいれて耳に意識を傾ける。
「でも、そんなところも可愛いね」
「え?」
思わず顔をあげる。
姫は相変わらず可愛い微笑みで、私の前に同じように正座していて、おでこ同士がぶつかりそうで、ビックリして硬直する。近くで見てもパーフェクト可愛い……。
「さやちゃんの、そう言うのも全部含めて可愛いって思ってる。それでも安心できない? 私の好きは信用できない?」
「……ほ、本気で、私のこと好きなの? それってキスとかできる好きなの?」
「もちろん」
涙がこぼれた。もう自分が情緒不安定な頭がおかしい人に思えてきたけど、だってそんな、好かれてるなんて予想してなかったのに、ここまで言ってもらえるほどなんて。
嬉しすぎて涙がとまらない。しかも、こんなおかしな私を見ても、姫はひいたりしていなくて、それどころか仕方ないなぁってさらに笑った。
「泣き顔も可愛いけど、今は笑顔が見たいな」
「ひ、姫ぇ、わ、わた、私も、好きぃ」
「うん。ありがとう。じゃあ、恋人になってくれる?」
「うんっ、うん!」
必死に頷く私に、姫はふふっと声をだして笑うと、左手を私の頬にあてて、何度も頷くのをやめさせる。
「可愛い」
そして何気なく顔を近づけたかと思うと、私の頬にキスをした。
「!? ひっ、姫!?」
「え、そんなに驚く? いつもはもっと」
「わ、わー! それはそれだよ! 姫からしてくれたんだもん!」
確かに寝てるときにはほっぺにちゅーくらいしまくってるけども! でもそれとは全然別で、何て言うか、感動する!
「ふふ、喜んでくれて嬉しい。じゃあ、今夜は私の番ね」
「……え?」
え? ちょっと何言ってるのかわかんないです。今夜は姫の番? え? 夜とかあれしか思い浮かばないんだけど、え?
「ちゃんと寝ててね?」
「え、あ、はい……」
にこっとさらに微笑んで顔をよせて、綺麗だけどどこか迫力のある顔で迫られ、とにかく頷いたけど、え? 寝ててって、あれしかないわけで、え、ね、寝れるわけなくない!?
○
姫とうれしはずかし恋人関係になれて、あれから今までより距離が近くて、もはやぴったりくっついてる姫に、嬉しくてたまらないのは本当だけど、恥ずかしくて戸惑ってしまう。
そんな私をからかうように、姫は恋人を強調してがんがんくる。さやちゃん、という呼び名で喜んだばかりだったのに、さらに特別な呼び名で呼びあおうとか言われた。
「な、菜乃、葉、さん」
「透、なー、のー、は。だけでいいよ。はい、もう一回」
「な、菜にょ葉」
「ふふっ、か、可愛い! でも、私には可愛すぎるから、もーいっかい」
「にゃにょはぁ」
「狙ってる? 狙ってる? 涙目で可愛すぎるんだけど。でも夜までお預けね」
とか言って頬にキスされまくって、何回か普通に舐められた。寝てるときは、頭がどうかしてたんだ。寝てる相手って言うのに興奮してたんだ。顔を舐めるとか、頭おかしい!
でも、姫、もとい、な、菜乃葉……がやると、気持ちよすぎて、いいかなって気になる。やばい。
そんな感じで翻弄されまくって、遊ばれまくって、ついに夜がやってきた。
「じゃ、おやすみなさい、透」
「う、うん、おやすみなさい、菜乃葉」
ベッドにはいって、さらっと挨拶して目を閉じた菜乃葉に、肩透かしをくらいつつも、やっぱりあれは私の昨日までのを許してくれるって言う意思表示であって、本気でなかったんだ。と安心して私も目を閉じた。
「ふふ、よく寝てるね」
「え?」
閉じた瞬間、菜乃葉はめちゃくちゃ勢いよく起き上がってそんなことを言う。思わず目を開ける。
「あ、ダメダメ。ちゃんと寝なさい」
「あ、はい」
目を閉じる。って、え、本気!? この状態でってこと!? いや確かに、寝ろって言われて眠れないけど、寝てる体でいくってこと!?
「ふふ、透、可愛い。こんなに可愛い恋人が隣で寝てるんだから、つまり、何してもいいってことだよね」
「……」
な、何をされるんですか。と思うけど反応するわけにもいかなくて、私は身を固くしながら姫のアクションを待つ。
「ん」
「!?」
気配が近づいたかと思うと、いきなり唇にキスされた。
き、キス!? 今まで私は最後の砦だと、唇だけは我慢してきたのに、菜乃葉は軽々と越えてきた。やばい! 格好いい! あ、てか恋人だからいいのか?
「んう」
舌ぁ!!
え、やば、やばい。全然遠慮がない。私が起きるかもとか考慮、するわけない! だって起きてるの前提だし!
「な、菜乃葉ぁ」
「やだ。寝言で私の名前を呼んでくれるなんて、嬉しい。もっと、愛してあげるね」
うわぁ! 私が寝てる体でどこまでもいくつもりだ! どこまでいくんですか!?
○
さやちゃんから、透と呼べることになった。アオスケはさやちゃんのことをサヤスケと呼んでたけど、学校に行けば他にもさやちゃんと呼ぶひともいるだろう。
だから、本当に私しか呼ばない呼び方が欲しかった。そして問い詰めた結果、透、と呼び捨てするのは男の子っぽい名前で嫌がってきたから、本当に誰も呼んでないってことがわかった。
「透」
と呼ぶと
「な、菜乃葉」
と躊躇うようにだけど返事が返ってくる。
それが、何と嬉しいことか。
気持ちはわかってた。だけど言葉にして、恋人と言う関係になれて、やっぱりすごく嬉しくて、何だかふわふわする。だけどそれは眠くてたまらなかった時とは違って、とても幸せな気持ちだった。
晴れて大義名分を得て、堂々と透に触れられる。しかも寝ていることにするから、抵抗もない。まさに好きにできる。
さすがに本当に寝ている透には、今までされてきたことと同じことほどはできなかった。思う存分できると思うと、すぐにでも抱き締めたいくらいだったけど我慢した。
「おやすみなさい」
そしてついに夜だ。
これ以上、待ってなんかいられない。透にキスをする。ずっと、起きてる時にしたかったキス。同意の上でするキスの、なんて甘美なことか!
それだけでも蕩けそうだけど、こんなのはまだまだはじまりだ。舌をいれると、たまりかねたように透が声をあげる。
「菜乃葉ぁ」
透が悦びで私の名前を呼んでいる。こんなの、我慢できるわけがない。
本当はもっとお話ししながら愛し合ったりしたいけど、でも今日は、悪戯の仕返しだと決めている! こんなチャンスはそうそうないんだから!
「透、可愛いよ」
服を脱がせ、撫でて、透を可愛がっていく。
「あっ、やぁっ、な、なの、菜乃葉ぁ」
可愛すぎる透に、私の気持ちはどんどん上がっていく。自分の体にはなにもしていないのに、全身が濡れていくのが自覚できる。
上半身をたっぷりと可愛がってから、ついに寝てる時には手を伸ばせなかった下へと手を動かす。
ぴくりと体を震わせた透だけど、手で止めたりはしない。受け入れてくれてる。透も望んでくれてるんだ。そう思うと、からからな口のなかに唾がわき出てきて、それを飲み込んでから、そっと透の耳元に口を寄せる。
「お尻、あげて」
「っ」
黙ってあげられたお尻をそっと撫でつつ、ズボンをおろした。そこには色の変わった下着があって、私は少しだけ意地悪したくなって、そっと人差し指でつつきながら声をかける。
「寝ているのに、こんなになっちゃって、透はいやらしいね」
「なっ!? ちょっ、そん!?」
無粋なことを言おうとする口はふさいで、私はそっと、最後の一枚も脱がさせた。
○
ひどい夜だった。ひたすら辱しめられるような、睡眠プレイに、何度物申そうかと思ったけど、でも私の悪戯を知ってたと言うことは、少なくとも一回は最中で目が覚めたけど何も言わずに好きにさせてくれたと言うことだ。
自分は好き放題しておいて、菜乃葉を拒否するなんてできるはずもない。
それに、確かに恥ずかしくて死にそうだったけど、けして、嫌ではなかった。だって好きな女の子なのだ。いやらしく、優しくされて、本気で拒否する気持ちになるわけがない。
目を覚ますと、先に菜乃葉が起きていた。目があって、恥ずかしくて布団を被ってから、自分がきっちり服を着ていることに気づいた。
「あ、服、ありがとう」
「何のこと? 昨日普通に服を着て寝て、普通に眠っただけじゃない。私はなにもしてないよ」
「あ、うん。そっか」
それは最後まで続くんだ。うう、自業自得とは言え、やっぱり恥ずかしい。
でも、これでもう、何も引け目を感じることなく、堂々と菜乃葉と恋人同士なんだ。
「ところで透」
「な、なに?」
「大好き」
「……う、うん。私も、大好き」
そう思うと、嬉しくて嬉しくて、たまらなくなる。
菜乃葉がそっと近づいてくるので、私は察して目を閉じる。そっと、優しくキスをされた。昨日とは違う、まるでお姫さまにするみたいな優しいキスで、姫に姫キスされてるぅ、と脳内ピンクになってうっとりしてしまう。
キスを終えて、微笑む菜乃葉と見つめあうと、ああやっぱり大好きだと気持ちが溢れてきて、勝手に言葉がでてくる。
「菜乃葉……ほんとに、大好きだよ。これからもよろしくね」
「こちらこそ。今夜も、ぐっすり寝てね」
「………………あれ?」
唐突な言葉に、きょとんと首をかしげ、そしてその言葉の意味がゆっくり頭に染み込んでくる。うん、意味はわかったけど、あれぇ!?
お、おかしいな。元々は菜乃葉を寝かせる為の添い寝のはずなのに、どうしてこうなった!?
おかしいと思うのに、微笑みつづける菜乃葉が麗しくて、結局私は頷くのだった。
○
こうして眠り姫は、睡眠プレイにハマり、恋人とプレイしまくるのでした。眠り姫を助けた変態は、変態なので何だかんだで幸せな日々を送るのでした。おしまい。




