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5話

 家族が居れば馬車馬のように働かせられてる、自称シンデレラのアツミさんは、本当にたまーに、極々たまに。


 いや、まれに一年に1回あるかないか、いや本当にただただ気まぐれに、休みというか、何も用事を言い付けられず、家の事をしなくて良い日がある。


 朝起きてご飯の支度をして、さあ、皆がそれぞれのやることをしに家から出るよ! といったタイミングで、私は家から摘まみ出されるのだ。



「今日は大事な予定があるからね、お前は夕方の鐘が鳴るまで、家に帰ってくるんじゃありませんよ」


「そーよ、アンタは外でおるすばーん(笑)」


「私達だけだもんねー」



 まあ、私のことは放って置いてくれて構いませんので、むしろ結構ですこと、おほほほほ(笑)内心は笑っているが、表面上では悲しげな顔をしつつ、私は家の外へ出ていく。


 ひゃっほう、自由だぁぁぁ! と、叫びたいのをこらえて、私は私でその日を楽しむ為だ。


 ぼろぼろのはち切れんばかりの普段着のドレスを翻し、私は下級階層の人々の家々の間を走り抜け......実際には、そこそこ早めに歩いて......普段は行けないところに向かう。


 この街は周りを草原と森に囲まれている。円を想像して、真上を領主様が、上側は上級階層の人間や獣人がいて、真ん中辺りが中級階層の人々、そして下側が私達下級階層の暮らす町になる。


 碁盤の目みたいに、街は大通りと小さな通りで区画が区切られていて、街の中心部に前にラルフが聞こえたという、時計塔があり決まった時間になると鐘が鳴るシステムだ。


 領主様が住んでいる方は豊かな森と草原がいい感じに広がっており、街の左側には森が、右側には草原が広がっている。


 そして私は、森の方へと向かっている。何か収穫できれば持ち帰って懐の足しに売り払えば良いし、何もなくても一人で悠々と遊びたいのだ。


 今の時期は新緑の春の季節。芽吹いたものが大きくなり、そろそろ実りも見られるかも、といった時期にあたる。



「美味しい! あまーい!」



 木苺や野苺を摘まみながら、持ってきていたバスケットに詰めていく。途中、傷に効く薬草や、痛み止めの薬草なんかも採取していく。


 そして奥へ奥へと、流れる小川沿いに進んでいく。


















 しばらく進んだ時だった。もう少し奥の方で何か呻く声がしたのだ。


 小川からそれて、森の奥まった所から聞こえる為に、少し躊躇してしまう。


 けど、このまま見過ごすことは出来なくて。......だって、良心の呵責に耐えきれないし、それに、人が救いを求めてて、それを見殺しにした、とかなら後味悪すぎるもの。



「も、もしもーし、大丈夫ですかー?」



 ガサガサ音を立てながら、茂みの奥へと歩く。


 数メートル先のちょっとした拓けた場所に、数人の男達が倒れていた。


 

「だ、だ、大丈夫ですか? え、ちょっと、まってまって」



 騒いでしまったが反応はない。私は急いで駆け寄ると、全員の様子を見ていく。


 まずは一人目。爬虫類関係の獣人さん、年は40前後とみた。ナイスミドルのおじ様で、フェロモンたっぷりの色気のある感じ。目立った外傷は、争った時に付いたと見られる、切り傷と刺し傷みたいなもの。


 切り傷から何らかの毒かウィルスなどが体内に侵入し、熱や吐き気、倦怠感などの症状が出て来て、体内の解毒などが済んでいない為に、倒れてしまったとみた。


 二人目、三人目、もそれぞれ同じようだ。二人目は、銀色のさらさらの長い髪を、ビロードのような紐で結わえた、爬虫類関係の獣人さん、20前後のとても儚いイケメン系だ。


 三人目は、やんちゃそうな感じの猫科の獣人の男の子で、年は18,19辺りではないだろうか?


 全員、私好みのイケメンなので、思わずじゅるりとヨダレがでてしまう。......この世界で言うならば、彼らはおぞましい姿形をした醜悪なブサメンらしい。



「まずは、解毒からだよね」



 解毒作用のある薬草と、消炎鎮痛作用のある薬草を取り出して、彼らを見つめる。


 今この場には調合するための乳鉢や、鍋などはない。従って、極めて原始的な......噛み砕いて口移しという手段を取る必要がある。


 小川で掬ってきた綺麗な水で口を丁寧にゆすぎ、薬草を口にする。


 モグモグモグ、かみかみかみ、ごりゅごりゅごりゅ


 口の中で青臭い臭いが広がり、苦みとえぐみで吐きそうになる。吐き気を我慢しながら、嚥下出来そうな位にすりつぶせた薬草withアツミさんの唾液を、三人に口移しで飲ませていく。


 飲み込みにくそうな二人目のイケメンの時は、何回かに分けて口移しして、水も飲ませた。


 経口摂取した方が良い薬草は粗方飲ませたので、口直しに先程摘んだ木苺を食べつつ、今度は傷口を治療していく。


 粗末なドレスの一部分を引き裂いて布を3枚作ると、小川で丁寧に洗濯したあと、一人一人傷口を拭いていく。


 出血は止まったようだが、念のため傷口の治療に使われる薬草を、手でよく揉んで汁を出し、傷口に当てていく。


 ゆっくりではあるが傷口か塞がってきているのを確認した後は、全員を即席の枕(彼らのマントであるとか、鞄など)を作って寝かせて、しばらく見守ることにした。

















 およそ、三時間位経過した頃だろうか。まずは、やんちゃそうな感じの猫科の獣人の男の子が目を覚ました。


 キョロキョロと辺りを見回し私を見つけると、最初は威嚇して耳をびんびんに逆立てていたが、私が何もせず両手を上げたままでいると、警戒はしているものの、威嚇を止めた。



「お前は、誰だ? お、おれたちに何をした! うぅ、口のなかが気持ち悪い」


「アツミ・リーフシードと申します。えとその、素人判断ですが、傷を負って倒れているように見られた為に、薬草で治療しました」



 残っている薬草を見せると、安心したのか猫科の男の子はふんふん匂いを嗅いで、口内の味と比べている。そして、その後に私を見つめて、固まった。



「お、お、お、おま、な、なん、なんで......」



 私の顔を見て固まった彼は、吃りながら何か呟くのだが、吃り過ぎて何を言っているのかわからない。


 まあ、目を覚ましたら絶世の美少女(笑)が、ブサメンである自分を治療していたから、驚愕したのだろうとは思うが。


 そうこうしているうちに、残りの2名も起き上がってきた。



「......クルト、そちらのお嬢さんは?」


「ヴァイスさん! それに、サラザール様も!」



 ヴァイスさんはフェロモンたっぷりのおじ様で、サラザール様は儚いイケメンさん。


 クルトと呼ばれた猫科の男の子は、私をほっぽって何やら話し込み始めた。


 まあ放置はいいのだが、途中で全員が私を見て数秒固まるのは止めて欲しい。なんとなく、居たたまれない。なんというか私主観で様々なイケメンに見つめられ、固まられると、身の置き所がないからだ。


 10分程度、3人の中で話し合って、状況判断と整理が出来たのか、恐る恐るヴァイスさんが話しかけてきた。



「あー、お嬢さんは、その、我々を助けてくれたということで、間違いはないか?」


「はい、その、迷惑でしたでしょうか? ごめんなさい、勝手に素人判断で治療してしまって......」


「いや、そうではない! 助けて貰ったことを感謝することはしても、恨んだりなどとするものか! ただ、我らのような醜悪な者にどうして、お嬢さんのように美しい方が助けてくれたのかと、疑問に思ってな」



 迷惑だったのだろうかと、美少女(笑)の見た目を利用して涙目で悲しげに見つめると、ヴァイスさんが慌ててフォローしてくれた。


 良かった。ぶっちゃけて言ってしまえば、私のような下級階層の人間が、地位が上の人に何かしてしまえば、それが例え救命措置としても、処罰されてもおかしくない。


 まあ、今の私は絶世の美少女(笑)、命の恩人が美少女(笑)だからか、上級階層の立場なのに、下手に出ている。



「ヴァイス、私からも礼を言わせてくれないか?」


「サラザール様! っ......はい、わかりました」



 ヴァイスさんの慌てぶりに、ほっこりしつつ見つめていると、ヴァイスさんの後ろにいたサラザールさんが、声をかけてきた。


 振り返ったヴァイスさんは、ピキッと固まり、そしてそのまま引き下がる。


 二人の間で何かあったみたいだが、こちらからはこれ以上の情報は読み取れなかった。



「お嬢さん、もう一度名前を教えて貰えるだろうか? 私はサラザール、訳あって姓を名乗れないが許して欲しい」


「えと、そのアツミ・リーフシードと申します」


「そうか、アツミ嬢。私達を貴重な薬草で治療し、助けて貰えたことを、感謝する」



 サラザール様が頭を下げて、礼を言われた。


 私は慌ててサラザール様に近寄り、頭を上げるようにお願いする。


 彼はギョッとして私を見たが、すぐにどうして? という、疑問の表情を浮かべた。


 ここで、もう一度確認しておこう。私主観では、彼らは様々なタイプのイケメンなのだが、この世界においては彼らはおぞましい醜悪なブサメンである。



「あー、その、アツミ嬢、私達を気持ち悪いとは思わないのか?」


「いえ、まったく! もし、気持ち悪いと思っていたら、治療しませんよ」 


「そ、そうか......」



 しゅんとなるサラザール様。だが、それも一瞬のことで、キリッと真面目な顔になると、もう一度頭を下げた。



「アツミ嬢、その優しさと慈愛の深さに感謝している、本当にありがとう。本当ならば、今から感謝の意を込めて、色々としてやりたいのだが、すまない。今は何もしてやれないのだ」


「気にしないでください、サラザール様。あ、そろそろ帰らないと、怒られてしまうので、私は帰りますね」



 気がつけば日が少し傾き始めている。ここから、どんなに急いでも、家まで一時間はかかってしまう。......距離的に、ではなく、身体的な意味で。


 爬虫類系のイケメンさんをまだまだ見ていたかったが、帰らないと大変なことが起こってしまう。


 そうなる前にと、よっこいせ、と立ち上がり、私は彼らが引き留めるのを無視して、短い足をなるべく動かして、家まで急いだのだった。















 なんとか夕方の鐘の音が鳴るまでに帰宅は間に合ったのだが、数少ない私のドレスの裾を勝手に裂いたこと、急いでいて家の持ち物であるバスケットを忘れたことを咎められてしまい、私が作ったにも関わらず晩御飯を抜きにされ、家から追い出されてしまった。

 

 仕方なく夜露を防げる、庭の外の小屋の中に入り、適当に寝る場所を整えて、横になった。


 思い出すのはサラザール様と呼ばれていた、爬虫類系のイケメンのことだ。


 肌は青白く鱗に所々覆われている。目は黄色に近い金色で鋭くて、爬虫類っぽいが、冷たい感じの切れ長とも言える。面長のイケメンだが、ちろちろ覗く赤い舌がとても気になった。



「あの舌って長いのかな、蛇みたいにシャーシャーするのかな」



 アツミはそんなことを思いながら、ボロボロの毛布にくるまって、眠りについた。


 





.

まだまた色々と説明文です


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