1話
色んな人々から蝶よ花よとおだてられ、美しいだの可愛いだのと褒められて、正直悪い気はしないです、はい。
でも、美しさの基準が太っていること、というのはどうも前世の記憶持ちからしたらいただけない。
また、顔の良し悪しも、一重で鼻が低く、二重顎が美形の基準だとか、本当にこの世界はおかしい。
つまり、だ。
私は、デブで顔も不細工であるのに、この世界の基準では絶世の美女ということになっているのだ。
そして、ボンキュッボンでパイオツカイデーで二重のお目めパッチリの美少女が、超絶不細工扱いされている。
あ、だからといって、ニキビや痘痕などがあったり、不潔だったりするのは、マイナスポイント、ここだけは変わらないようだ。
美醜逆転の価値観が当たり前のこの世界は、現在の私が生きているところである。
美味しい設定をいただいて転生したのは正直嬉しいのだが、家族から疎まれているのは辛い。
理由はわかっている。あまりにも私が両親と似ておらず、掃き溜めに鶴?鳶が鷹を産む?なんというか、超絶不細工の親から、どうしてこんなにも絶世の美女が産まれたということが、原因だろう。
似たり寄ったりの不細工家族の中に、一人だけ美形の人間がいれば、最初こそ可愛がりもするだろうが、毎日毎回、事あるごとに見比べられ、比較されていれば、疎ましくなるのも仕方ないことかもしれないが。
あ、自己紹介が遅れて申し訳ない、私の名前はアツミ・リーフシード、前世の日本人としての記憶があるといった、よくある設定の女の子である。
前世の名前は朧気なものしかないのだが、一般常識やマナー、文化的な営みなどなど、日本人として生活していれば身に付くモノは忘れていなかった。
そのおかげで、私は、イケメンや美女たち、おっとこの世界では超絶不細工達を独占出来るのだから、私の記憶バンザイ(笑)
「邪魔よ、アンタ何もしてないんだから、そんなとこに突っ立ってないで、何処か行きなさいよ!」
「そーよ!あんたみたいな穀潰し、いらないんだから!」
肩を押され、家の台所の床・・・というよりは土間に近い・・・に倒れこみ、押してきた姉妹を見上げる。
そこには、華美ではないものの下級階層の女の子が着ていても可笑しくない程度のドレスを身に付けた、ややくすんだ色の金髪に、淡い翡翠の瞳の美少女二人が、忌々しそうに、私を見下ろす。
私から見て水色のシンプルなドレスが長女のイザベラ、邪魔だといい放った方である。
そして、淡いグリーンのイザベラとよく似たデザインのドレスを着ているのは次女のカーミラ、穀潰しと罵った方だ。
ちなみに、我がリーフシード家は、下級階層に位置する一般家庭の1つで、父親はしがない下級騎士の一人で、母親はどこかの工房で編み物や縫い物を手伝っている。
子供は、長女のイザベラ、次女のカーミラ、長男のジョージ、そして三女で末っ子の私、アツミである。
私以外、色のバラつきはあるが金髪に翡翠の瞳がトレードマークのとっても不細工揃い(私からすると、そこそこ美形)の家族だ。
私?私も金髪に翡翠は受け継いだのだが、プラチナブロンドで金髪の中でも美しい色合いだし、翡翠の瞳もエメラルドを嵌め込んだようだと言われている、うん、一重だから見えにくいけどね。
「何とか言いなさいよ、アツミ」
「イザベラやめとこ、家族でもないやつ相手にするだけムダよ」
イザベラとカーミラから一発ずつ蹴りをいただいて、彼女らは台所の勝手口から出ていった。
私は、特に堪えていないので、ボロボロの身体に合っていないドレスというか、服というか、をはたいて立ち上がる。
そうして、何事もなかったかのように、家事を始めた。
私はこの家の召し使い、家族でも何でもない、使用人。
そうならざるを得なかった。
なぁんて、悲劇のヒロインぶってますけど、家族じゃない人からは可愛がって貰えてるので、元気にやってます、まる
.
私の妄想だけでお送りします