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第二十三話 電話
薄暗く晴れた空の下、外の空気はひりひりくらいするくらい乾いている。
彼女に電話をしようかと携帯電話を取り出すと、タイミングよくそれは小刻みに震えた。
ディスプレイの文字は、
『花』
僕はゆっくりと携帯をひろげ通話ボタンを押した。通話時間がカウントアップされる。
「もしもし」
彼女の声が通る。
僕は言葉を出せずにいた。唇が乾き、蛇みたいにちろちろと小さく舌でなめた。
「もしもし」
彼女が繰り返す。
「もしもし」
そう返した瞬間もう泣きたくなった。
「あ、ごめん今忙しかったかしら」
「いえ、大丈夫です」
そう言いながら、大丈夫でなかった。
「そう、よかった。昨日のこと、あなたには話しておこうかと思って」
「うみ、行きませんか?」
準備が出来ていなかった。
突然の僕の提案に彼女は少し時間をおいて答える。
「うみ、約束していたわね」
「はい、約束していました」
そう言って僕は公園のベンチに座り、そのまま仰向けに寝転んだ。
目の前に空が広がる。
「今から?」
彼女の問いに、
僕はただ頷いた。