第十六話 死にたい気持ち
再び目を覚ます日が落ちていた。
慌てて時計を見ると既にバイトに行く時間だったのでぼくは急いで準備をすると家を飛び出した。
スクーターを飛ばしていると景色が次々と眼の端を流れた。正面に受ける風が気持ちいい。スピードに乗りながら様様のことが面倒になってきた。
全部が面倒になって、
死んでもいいと思った。
そしてふと思った。
彼女はいつもこんな感情でいるのだろうか。
信号が赤色に変わる。ブレーキを踏まず、
このまま死んでしまおう。
そう思った。
なのに、次の瞬間やっぱり死にたくないと思った。
謝るように急ブレーキをかけるとタイヤがアスファルトをひどく擦る音が響いた。
ぎりぎりで止まるとトラックが目の前を通る。運転手は迷惑そうな顔をした。
そんなことで起こるなよ。
独り言を言いながら、つま先でアスファルトをつついてスクーターをバックさせた。
湿った空気がまとわり着くと、じっとりとした汗がにじみ出た。
何を必死にこんなに焦っているのだろうか。だんだんどうでも良くなった。バイトも大学も彼女のことも。
スクーターを逆に向けると、僕はバイト先に背を向けて走り出した。
とろとろと広い国道を走っていると何も知らない所にぽつりと取り残された気分になった。
ちょっと寂しくなって、スピードを上げた。
バイトの時間になると携帯が鳴ったので電源を切った。
何だかこのまま行けるところまで行きたくなった。