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  作者: ホタル
13/27

第十三話 母親

「聞いたこと無い?」


 嫌な振りだった。


「さあ」


 嘘をつく。陽樹に聞いていなければ良かった。


「あながち嘘ではないのかもしれない」


「どういうことですか」


 二つ目のデキャンタがやってきた。


「私はお父さん血が繋がっていないの」


 彼女はリングに触れる。一瞬テープルに手が当たり赤ワインが波立つ。


「連れ子とか、養子とか」


 言いきる前に彼女は首を横に振る。


「お父さんは母親を愛したわ」


 僕は唯頷く。


「母親は一度だけ他の男とセックスをしたの。ゴムも使わずに」


 セックスと言う言葉は、彼女から発せられるとそれは唯の言葉だった。


「浮気ですか」


 上ずった声で聞くと彼女は頷いた。


「いつそれを知ったのですか」


「七歳のとき、母親は原因不明の病気で入院するとみるみる弱っていったわ。半年ほどしてそのことを私に言うとあっけなく死んでしまったわ」


 彼女の言葉は無機的だった。そして、きっと僕に出来ることなんて何も無かった。あのサラリーマンはこういう話をどういった顔で聞いているのだろうか。でも、なぜ母親は死ぬ間際にそんなことをいったのだろう。


「それでお父さんは」


「話を大事に育ててくれたわ」


 彼女はやさしい顔をした。


 冷たくて優しい顔。


「良かったじゃないですか」


 父親殺しのことを忘れながらそんな言葉が漏れた。彼女の優しい顔に。


「そうね」


 そして彼女は悲しそうに笑った。


「お父さんのこと嫌いですか」


 頭が混乱してくる。


「すきよ」


「じゃあ、何故父親殺しだなんて」


 何だか本当に彼女は殺したんじゃないか。と言う気持ちになってきた。

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