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そんなわけで最終兵器  作者: パパン
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第1話:最終兵器、立つ

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鳥のさえずりが聞こえる。

目を開けた。


「……………」


視界に入ってきたのは鬱蒼と繁った木々だった。


「ここ、どこだ……」


どうやら寝ていたようだ。

上体を起こして周囲を確認しようとする。

が、それは叶わなかった。

ありえないものが見えたからだ。


「!!?」


何度も目を擦った。

しかし、それが変わることはなかった。

右腕が滑らかな銀色の光沢を放つ丈夫そうな金属製になっていた。


「何じゃこりゃああああああああああああっ!!」


いや、手だけではない。

ありとあらゆる部分、全身が金属製になっていた。


うん、落ち着こう。

いったん落ち着こう。

深呼吸だ。

ヒッヒッフーだ。

………違うか。


いや、まず思い出せ。

俺は何をしていた?


………そうだ。

俺はいつものように通りを歩いていた。

そこで小さな子がダンプに轢かれそうになってのを目撃して。

気がついたらその子を庇って。


――――そっからの記憶がないな。

残ってる記憶も遠い昔のように思えるし。


……死んだのか、俺。

ということはここは天国………。


いやいやいや。

ないない。

意識もはっきりしてるし、ちゃんと体もあるし。

金属製だけど。

てか何で金属製だ、おい。

俺は改造された覚えはないぞ。


じゃあ何だ。

まさか死んで魂だけになって違う人に乗り移ってしまったとかいう憑依か、これは。

憑依するほど現世に未練があったのかよ、俺。

それに金属製の人なんて聞いたことないぞ。

まるでロボットじゃねえか。


ロボット………。

まさかロボットなのかっ!!?


改めて自分の体を見る。


錆一つないパーフェクトな金属ボディである。


ロボット産業ってここまで進んでたんだなー。


……じゃなくてっ!!


こんないかにも高性能っぽいロボットを森のなかに放置しとくか、普通!


何かの陰謀なのか?

それでここに隠されたのか?

ここは日本なのか?

どうして俺はロボットになんかになってる?

いったい何が起こっているんだ?


………駄目だ。

考えれば考えるほどわからない。

とにかく動こう。

じっとしてちゃ始まらない。


体の感覚を確かめるようにそっと立ち上がる。


「よっこらせ………」


立った。

改めて落ち着くために深呼吸する。


「スー……ハー……」


あれ?

何でロボットなのに呼吸してるんだ?

いらなくね?


「………まあ、いいか」


どうせ考えたところで分からないし、わからなくても別に困らない。


そして俺は森の中を歩きだした。


「大自然だな……」


行けども行けども周りには木々しか見当たらない。

景色も同じようにしか見えないし。


構わず歩みを進めていく。


「ん?」


歩いていると、前方に何かが落ちていた。

近づいてみる。


「……なんだこれ」


それは一メートルくらいの大きさがあるゼリーだった。

ゼリーの中央には核のようなものがあり、うにうにと動いている。

ゲームでこんなの見たことがある。


「スライム………」


いやいや、ないだろ。

ここは現実だ。

そんな空想状の生物があるわけがない。


……じゃあこれは何だ?


相変わらずゼリーはうにうにと動いている。


生きてるのか、これ……。


落ちていた木の枝をつついてみた。

つついたところからそのゼリーに波紋が広がる。

心なしかびっくりしている気がする。


……和む。


つついて、つついて、つつきまくる。

ぷるぷる、うにうに。

ぷるぷる、うにうに。


楽しい。

めっちゃ楽しい。


「うわっ!」


つつきまくっていたら突然、その体に似つかわしくない速さで逃げていった。

ていうか生きてたんだ。

じゃあやっぱりあれはスライム………。


そんなことを考えているとふっと周りが暗くなった。

ついでに唸り声も聞こえてくる。


「…………」


うん、大丈夫。

きっと気のせいだ

たぶん夕立でもきたんだ。

唸り声みたいなのも幻聴にきまってる。


そっと後ろを振り返ってみる。


でっかい恐竜みたいなのが涎を垂らしながら俺を見ていた。


「う、うおおおおおおっ!!」


踵を返して脱兎の如く逃げ出した。

てか何だあれ!?

あんな生物がいるわけないだろ!?


「グギャアアァアァッ!!!」


恐竜みたいなのは咆哮しながら、俺を追ってきた。


「ちょっ、こっち来んなあああああああっ!!!」


全力で逃げる。

すると、みるみるうちに恐竜みたいなのと俺の差が開きはじめた。

差はどんどん開いていく。


「すっげ………」


普通じゃ考えられない身体能力。

このロボット、すげーハイスペックだな。

これなら逃げ切れる!


と思っていた矢先、思いっきり躓いた。


「っ!!?」


物凄い勢いで何度もバウンドしながら転がっていき、木に当たってようやく止まった。


「おうう……」


微妙に痛い。

例えるなら足の小指を机の角にぶつけた時くらい。

人間だったら今ので死んでるぞ……。

てか、ロボットなのに何で痛みを感じるんだ…?


顔をあげる。


「グルル……」


目の前に大口を開けた恐竜モドキが迫ってきていた。


「うっ、うわあああああああああああああっ!!!!」


恐怖のあまり、反射的に両腕を前に突き出した。


瞬間、鈍い音と共に恐竜モドキが空を浮いた。

そしてズズーンと地面に落ちる。


「…………え?」


目の前の出来事に理解が追いつかない。

なぜか両腕の肘から先から消えている。

俺が必死で落ち着こうとしていると、シュゴーというジェット機の噴射音が聞こえてきた。


見ると、消えた両腕の肘から先の部分がジェット噴射でこちらに飛んできていた。


「……………」


俺が呆然としている間にその両腕の肘から先の部分は元の腕にガシンと結合した。


「………………ロケットパンチ?」


どこの鉄人だよ。

俺っていったい何なんだよ!?


俺はそう思わずにはいられなかった。




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