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悪魔憑き -新たな未来を求めて 赤のクリスマス後-

約1ヶ月ぶりぐらいの更新です。今回は音姫視点ですが、考えが二転三転していたり殺す気満々だったり。その理由は二話後に。

すごく苛ついていた。


真剣を手にしての素振り。すでにここ数年の日課だから苦は無く楽な作業だった。


鞘から抜き放ちながら振り上げ振り下ろし、鞘に収める。その動作をひたすらに極めるだけ。これをすれば見ている誰もが驚いたように私を見る。


不思議なことなんてないのに。ただ、振り上げて振り下ろしているだけなのに。


問題はそこじゃない。苛ついている。振り上げて振り下ろす剣筋がかすかにブレている。


理由はよくわからない。いや、わかっているから私は小さく息を吐いた。わからない振りをするのも限界だ。


あの子供、海道周だったと思うけど、その海道周が白百合家に来た。話によれば前のクリスマス、『赤のクリスマス』と呼ばれる大惨事に巻き込まれた被害者らしい。


生きている、とは思うけど、ほとんどが客間のベッドの上で座っているだけだった。別にその海道周はいい。私の邪魔は一切しないし関わらないから。


だけど、問題はそこじゃない。問題は妹の由姫が全く関わって来ないことだ。あの日、海道周が来た日から、毎日縁側に座って私の日課を見るのが由姫の日課だった。


自由に生きて、私みたいに剣に束縛されないで、そして、天真爛漫な憎らしい妹。毎日絡んできた私に対して最近の由姫は一切近寄って来なかった。


必死に海道周とこみゅにけーしょん? 横文字は苦手だけど、ともかくそのようなものをしていた。無駄なのに。


見ていればわかる。海道周は生きるつもりがない。死ぬつもりなのだろ。はっきり言うならそれでいい。別に、他人が関わらないならそれでいい。


そう思っていたのに。


「イライラする」


真剣を振り抜く。その刃は滴り落ちた汗を弾き高く上げた。それを上手く三等分して刃を鞘に収める。


「私は、どうしたいのかな」


小さく息を吐いて縁側から家に上がる。少しだけ休憩しよう。10秒間に30振りペースはやっぱり辛い。


お父さんやお母さんは無理をしないように言うけど、私は無理をしないと。


「私は由姫とは違う。あんな落ちこぼれとは違う。違う」


これが私だから。私を唯一証明するものだから。だから、由姫とは違う。違うのだから。


あんな目で見られたくない。まるで、腫れ物を扱うかのような目で。才能が無いからと殴られたくない。まるで、全ての恨みをぶつけるように。両親だけしか優しい言葉をかけてくれたくない。みんなから愛されたいから。


強くならないと。強く、ならないと。


「私が守るんだ」


お父さんを。お母さんを。


「誰も反対しないくらい強くなるんだ」


私が強くなれば、きっと由姫にも友達が出来る。私を恐れて、優しい由姫に声をかける。


「妹なんていらない」


私だけが悪になればいい。そう、全てを背負えばいい。それまでは、少しだけ由姫に当たればいい。そうしたらきっと、私は一人になれる。


「孤高の剣士でいいのに」


私は天井を見上げる。この上は海道周の部屋。そして、由姫がずっといる部屋。


由姫は私よりもあいつがいいの?


いや、当たり前か。英才教育を受け、同年代とは比べ物にならないくらいの知識と技術を持っている私と、関わり合いは断ってもそばにいることは断らないあいつと比べればきっとあいつの方がいい。


これでいいはずなのに、私の心は晴れない。


「あー!! いらつく。スポーツドリンク飲も」


靴を脱いで縁側から家に上がる。もちろん、腰の鞘には真剣が入ったまま。冷蔵庫の中には冷えたスポーツドリンクがあるはずだ。最近新しくなった冷蔵庫は電力会社が新たに始めた魔力発電を利用しているからか、あんまり冷たくはならないけど。


私がキッチンに入るとそこにはお盆の上にお茶とコップにお菓子を乗せている最中の由姫がいた。由姫は私を見て一瞬だけビクッとする。


純粋に驚いているのだろう。私は稽古中は滅多に休憩しないから。


「あいつのところに持って行くの?」


私は冷蔵庫を開けながら尋ねた。由姫はこくりと頷く。


「お兄ちゃん、お腹減っているみたいだから」


「それはあいつが何も食べないからでしょ。そもそも、あんな邪魔者」


「邪魔なんかじゃない」


冷蔵庫の中にある微妙に冷えたスポーツドリンクを取り出した。由姫のポツリと呟いた言葉を聞きながら。


「お兄ちゃんは邪魔なんかじゃない。ちゃんと、私のことを考えているよ」


「へぇ、あいつを庇うんだ。実の姉よりも赤の他人を?」


「他人なんかじゃ」


私は真剣を鞘から抜き放っていた。由姫の前髪が何本か散る。由姫は呆然とそれを見ていた。


白百合家の血筋だから身体能力は悪くはないはずだ。だから、本気じゃないけの剣筋は見えたはず。


「他人よ。あなたは能無しの無価値。同じ存在だからって調子に乗らないで」


「同じ、存在」


思ってもいないことが口に出る。傷つけたくないのに傷つけてしまう。


「そう。生きていても邪魔な存在。どうして生きているの? 本当に、無能な人間は」


「無能かなんて、決めるのはあなたじゃない」


唐突にそんな声が聞こえてきた。知らない男の子の声。その声に私は反応していた。


一歩を踏み出しながら最速の振り上げ。だけど、真剣の先はそこにいた男の子、海道周の額を浅く斬り裂くだけだった。


距離を見誤った? 違う。避けられた。最速の一撃だったのに。


海道周はゆっくり歩き由姫の手を取る。


「価値なんて誰かが決めるものじゃない。自分で決めるものだ。妹を守ろうとしないあなたが一番無能だよ」


「死にたいの?」


真剣を鞘に収めて腰を落とす。


「死にたい」


私の言葉に海道周が即答する。だから、私は一歩を踏み出した。真剣を鞘から走らせて確実に殺す一撃を加えようとする。だけど、それより早く由姫が動いていた。


海道周を守ろうとするように動いていた。


走らせた真剣は止まらない。確実に由姫を殺す一撃になる。やりたくはないのに、どうしてかはわからないけど殺した方がいいと思ってしまった。


殺したらきっと、気持ちよくなれるから。


でも、結果として真剣は由姫を斬らなかった。斬ったのは海道周の左腕。それも、骨が見えるくらい深くまで斬っていた。


確か、海道周の左腕は後遺症で全く動かないという話を聞いていたのに。


後ろに下がった二人がテーブルに当たり、テーブルの上に乗っていたお盆が床に落ちる。


落ちたコップが砕け散り、お茶が入ったペットボトルも床を転がった。砕けた一部が突き刺さったからかお茶が少し漏れている。


「お兄ちゃん!」


青ざめた由姫が周囲を見渡す。そして、海道周の手を取って近くにあったトイレに走り込んでいた。


確かにトイレは鍵があるから入れないけど、ドアごと斬り裂くということも出来る。


だけど、私はその時には冷めていた。そして、鞘から抜き放った真剣を鞘に収める。


「バカバカしい」


そう思いながらも、私は歩き出した。訓練の続きをするために。






結局、私が八つ当たりした事実はあっという間に両親にバレて怒られたのは言うまでもない。

次はまたまたお茶会です。

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