第22話 スキル構成
試合が終わった。
森下が息を吐き、構えを解く。
向かいでは、優もまだ少し息を切らしていた。
そんな二人を、少し離れたところから眺めている人物がいた。
「ふっ……末恐ろしいな」
森下が声の方を見る。
「先生、いつから見てたんすか?」
「んー?」
篠宮は少し考えるようにしてから答えた。
「手裏剣流星群で森下のシールドが壊れたところからだな」
「えっ……」
優が固まった。
そして、少し遅れて。
「あっ!」
試合中の自分を思い出す。
あれは、確かに口に出していた。
「あ、あの手裏剣……流れ星みたいだなって思ってて……」
「ああ」
森下は納得したように頷いた。
「流星群なわけね」
優は少し縮こまる。
「別に技名言わなくても出るけどな」
「……はい」
優はますます小さくなった。
けれど、少し考えてから顔を上げる。
「でも……言ったら、ブラフには使えるかも……」
森下がぴくりと反応した。
その横から、黒瀬がさらりと言う。
「森下や柴田くらいにしか通用しないだろ」
「なんで俺なんすか!」
「引っかかっただろ」
「……」
森下が黙る。
実績があった。
「次は引っかかりませんよ!」
「どうだかな」
黒瀬はまるで信用していなかった。
◇
その頃。
部室の練習場では、柴田が一人、カカシを相手に練習していた。
構えを取り、狙いを定める。
「……っくしゅん!」
突然のくしゃみ。
手元がぶれ、攻撃が妙なところを通り抜けた。
『ん? なんか通った?』
「……」
ARグラスから聞こえた判定に、柴田はなんとも言えない顔をした。
◇
体育館では、栞が優のところへ歩み寄っていた。
「でも岡野くん、すごかったねー」
「ありがとうございます」
栞は先ほどの試合を思い返す。
「意地でも最速で手裏剣流星群……」
言ってから、自分で少しおかしくなった。
「ふふっ」
優がちょっと恥ずかしそうにする。
「撃つんだー! ってスキル構成だったね」
「……スキル構成?」
近くで聞いていた奏多が反応した。
「うん。岡野くん、耐久保護使ってたでしょ?」
奏多は試合を思い返す。
優がスキルを発動した瞬間。
「ニンジャを壊されにくくして、それから――手裏剣を使ったら、装填」
「あ」
奏多にも覚えがあった。
「ちょっとエネルギーが回復するスキルだ」
「そうそう」
栞が頷く。
「それでも耐久が削られたから――」
今度はリペア。
試合の途中で優が使っていた、もう一つのスキル。
「リペアで直す」
「……」
「とにかくニンジャを長く使うための構成だったんだよ」
奏多は少し考えた。
「でも、なんでそこまでニンジャを?」
「手裏剣乱舞を使うためだね」
「スペシャル?」
「うん」
大量の手裏剣が優の周囲に浮かび上がった光景を、奏多は思い出した。
「手裏剣乱舞はね、ニンジャを一分間使うこと」
栞が指を一本立てる。
そして、もう一本。
「それと、手裏剣を十発撃つこと」
「条件が二つあるんだ」
「うん。だから岡野くんは――」
手裏剣を撃つ。
耐久保護で守る。
装填する。
削られればリペアで直す。
「ニンジャを残しながら、条件を満たそうとしてたってこと」
奏多は改めて優を見る。
ただ必死にニンジャを使い続けていたわけではなかった。
「スペシャルって、みんなそうなの?」
「ううん」
栞は首を振る。
「発動条件はスペシャルによって違うよ」
「そうなの?」
「だから、使いたいスペシャルによっても考え方が変わるね」
「……」
奏多は少し黙った。
これまでに使った武器。
教えてもらったスキル。
見たことのあるスペシャル。
それから、自分のスマホへ目を落とす。
「……なるほど」
画面には、いろんなスキルが並んでいる。
奏多はしばらくそれを眺めていた。
「いろいろ試してみたいな……」
「いろいろ試してみて!」
「うん」
奏多は頷く。
それから、少し考えて栞を見た。
「……また今度、練習相手になって」
「いいよ!」
栞はすぐに笑って答えた。
「ありがとう」
試合を終えた体育館では、部員たちが片付けを始めていた。
奏多もスマホをしまおうとして――もう一度だけ、その画面を見る。
いくつものスキルが並んでいる。
何ができるのか。
まだ、分からない。
だからこそ。
奏多は少し楽しそうに、その画面を眺めていた。




