【転落少女】4
遅くなった麦畑だよ_:(´ཀ`」 ∠):
さーて、爆速展開始まるよ!
視線が気になる。
これだけ聞くと「注目されてるじゃない!羨ましい。」とか「くぅ〜!人気者だねぇ。」とか言われそうだと思うだろうけど、今回ばかりはそんなに良い事ではない。
だって、当の本人は疑似血だるまになって更衣室に向かって爆走しているんだから。
「最っ悪…!」
何が最悪かって?そりゃあ、ひとつしかないよね。
「絵の具が気持ち悪いっ!!」
妙にリアルな色合いで生々しい手触り。最悪なことこの上ない。
僕はぶっちゃけ、視線なんてどうでもいい。気になりはするけど、これから起こそうとしていることに比べたらくだらない。それより、更衣室が遠いな!?
「っ、はぁ、はあ…。」
普通にペース配分ミスったわ。菜子の野郎、やりやがったな。本当に吐き気を催してたら危なかったじゃないか!
「扉が2つあるな…。」
桃色と黄緑色か。まるで、花より団子論争で描かれる絵の配色みたいだ。問題は、どちらの扉が男子用かってこと。下手をすれば、両方とも女子用というのもありえる。しかし、シャワー付属の学校施設は此処しかないのだから腹を括る他ないというのは事実。
うーん。どっちがいいのやら。まあ、普通に考えたら緑の方だろうな。この学校が建てられたのってまあまあ古いらしいし。多様性が浸透していなくてもなんら不思議ではない。社会情勢に合わせていちいち壁を塗り直していたらキリがないだろう?
「ええい、ままよ!」
俺は黄緑扉のドアノブを握った。ちなみに、部屋の中を理解していない場合の正しい入室方法は「扉をノックする」だ。絵の具がついているならしない方が良いかもしれないが、少なくとも「誰かいらっしゃいますか。」が言えると良い。
そこまで思いついておきながら何故、俺はノックをしなかったのか。
それは、その方が俺のキャラに合っているからだ。
「あ。」
「ゲッ。」
扉を開けると、まさに服を着替えようと脱いでいる最中の人間と目が合った。青白い細身で眼鏡をかけている男。年齢は同い年ぐらいだろうか。しかし、制服のデザインが違う。つまり、この男は他校の生徒ということだ。
あまりジロジロ見るのも良くないと思ったので、俺は膠着していた目を動かして視線を外すことにした。
「わ、悪ぃ。人がいるとは思わなくて…。」
申し訳なさそうに謝罪すると、眼鏡の男はクスリと笑った。
「君。絵の具だらけだね。さっき凄い音がしてたけど、もしかしてソレのせいなのかな?」
へぇ…。
「え、分かる?そーなんだよ!突然上からバケツが降ってきてさぁ…。お陰で身体中べっとべとで気持ち悪いんだ。」
うええ。絵の具の存在を思い出しちゃった。吐きそう。でも、本当に吐いたら菜子のいいなりみたいで悔しいから絶対に吐かない。
「それは大変だね。手伝おうか?」
「えっ。」
男は親切にも着替えを止めてこちらに近づいてきた。これは、社会的に考えると。
「お前、優しすぎ!神だろ…!!」
ご厚意に甘えるしかないよね!やったぁ。
そんなこんなで俺は名前も知らない同期(?)に絵の具で密着している服を剥がしてもらうのだった。
▲▲▲▲▲
更衣室から戻ってくると、有原と菜子の姿がなかった。どうやら、勝手に始めたらしいな。好都合だ。
さてさて。皆さんお待ちかねの捜査パート〜。本日の被害者さんは【市立桜科坂高校の在校生】だよ。人への聞き込みは後で有原から聞き出すとして、まずはバケツだよ、バケツ!!
俺の頭にクリーンヒットしたバケツ。大きさはそこまで大きくない。丁度手で持ち上げられそうなサイズ。
次に、俺が絵の具を被ったところを確認しよう。上を見上げると、あら不思議。美術室が見える。バケツの転がっている場所といい、絵の具といい、十中八九バケツは美術室から落とされたのだろう。
落下地点はバケツ騒動から意外にも近い。おそらく血もどきに驚いて混乱させるのが目的だったんだろうな。でも、絵の具を浴びた俺でさえも被害者の足が見えたのだから明らかにミスだ。他の人達は狙い通り逃げまとってたけど。
「随分と長かったわね?」
突然、背後から声が聞こえた。
声の主は菜子だったようだ。有原もこちらやってくる。
「佐々木くん!絵の具、落とせて良かったね!」
相変わらず、神々しく爽やかなスマイルだ(俺の感想)。
「おうよ。ところで有原、あの落ちてた人って誰だったんだ?」
時間もないので何気なく聞いてみる。一応、俺も被害者の1人なので情報入手難易度は下がることだろう。
「被害者は【雪本あかり】さん。年齢は17歳。3年生になったばかりだ。」
ほほう。高校3年にもなると、さぞ、人間関係も複雑になってるだろうねぇ。
「高3かぁ。これから大変な時期なのに可哀想だな。」
「身元提供者は、彼女の友人である【伊崎果南】と【松下優香】。彼女とは演劇部で仲良くしていたらしい。」
へーっ、演劇部か!あの部活って一緒にやってくれる友達がいないと辛いタイプだよね。いざ、そういうメンバーが集まると途端に勢いづく不安定さを持っているのに潰れない、不思議な部活。
「雪本さんは演劇部のエースで演技もシナリオも出来る実力派。毎日のように練習していた。また、最近の練習時は紙ではなく彼女オリジナルのデジタル媒体の原稿を使っていた。」
なるほど、被害者は演劇ガチ勢。
「一応言っておくけれど、被害者は本当に負傷していたわ。演技ではなく。」
菜子が付け加える。
「でもさ、スマホだと見づらくないか?」
普通に疑問。スマホって小さいよね。意外といけるものなのか?
「伊崎さん達の話によると、雪本さんは流行に敏感でスマホもしょっちゅう買い替えていたらしい。スマホ原稿にしたのは丁度画面が大きめのバージョンが発売された後ぐらいだったから、それが転換の理由になったのかも。」
ふむふむ。
だとすれば、ここで気になってくるのはやはりスマホだ。
実は、最近のスマホには【緊急通報システム】という機能がある。大きな衝撃を感知すると自動的に通報をしてくれる便利なやつ。
しかし、朝霞が「救急車は自分で呼んだ」と証言していたことでふと疑問が浮かんだ。常にスマホを所持していたのに緊急通報が発動しなかったのは何故か。
被害者がその時偶々持っていなかった可能性も考えたが、有原の話では彼女のスマホはいまだに見つかっていないらしい。
つまり、これは事故じゃない。事件だ。その可能性が高い。そもそもの話、絵の具騒動があった時点でほぼ確定ではあったけど、【見つからない証拠】が出てきちゃったからね。
有原から追加で聞いたのは、転落発生時に周囲に居た人間は被害者含めて先程の3人と美術室にいた美術部員【竹内文美】と【吉田卓馬】の2人だけだったそうだ。
おーおー。これまた面白いぐらいに犯人が絞れてきたな?
まだ主人公くんの本領が発揮出来ない…
次回くらいには出来るかな?




