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舞台袖 【転落少女】

()()にとって、待ちに待った入学式。ほら、今に一番鶏が…。


「アツっ。春って、こんなに暑かったっけ?」


今日の主役の1人である青年【佐々木信也(ささきしんや)】は、校門前の看板を無視して近場の日陰に避難していた。


「やってられないな。高校生になっても式典が盛り上がるなんて。しかも、入学式だぞ?」


大袈裟にため息を吐く。これを誰かに見られていたとしたら、「めでたい日に憂鬱な気分になるなんて変な奴だ。」とでも思われることだろう。

しかし、()()()()()()()、1人の変人には目が向かない。

みんな自分とその身内のことで頭が一杯なのだ。つまり、わざわざこんなパッとしない男を気にかける奴などいないことは明白だ。


辺りを見渡すと、入学式ではあまりメジャーでない植物が視界に入った。


おっと!でたでた。卒業生アートだ。壁アートって大体、体育館の入り口とかにあるよな。こーゆーのって数年前とかが多いから、新入生はがっかりするんだよ。「自分達がやりたかったー」といった感じで。デザインが白い百合の花なのは珍しい気がするけど。


それにしても。絵に描いたような桜吹雪が自分の頬を撫でたときは絶望したものだ。それはもう、完璧な桜だったよ。完璧すぎて吐き気を催すぐらいにはね。


さて、冗談はこのくらいにして。お楽しみの時間としようじゃないか。

佐々木は、スマホと人間でごった返している道をすり抜けて目的の掲示板に辿り着いた。


「えーっと…。B組か!」


そう呟く彼は、どこか満足そうな笑みを浮かべる。


「B組か〜。やっぱり、前半クラスだよね!数字のクラスだと3組は真ん中でそこそこ注目されるけど、アルファベット式の3組…つまり、C組は影が薄くなりがちだからなー。あと、ちょっと個性派な印象があるし。」


先程のローテンションが嘘のようなノリノリ。鼻歌でも歌い始めそうだ。この調子の良い男は、生来楽観主義者である。


「…ん?」


ここで、佐々木は異変に気づく。()()()()()()()()()が混ざっている気配に。

これは、なんと形容すれば良いのか。強いて言うなら。


「波乱の予感って感じ?…うんうん。大歓迎だ。」


彼の足取りがさらに軽くなった。




▲▲▲▲▲




佐々木は失望した。あんなに、ワクワクする雰囲気が漂っていたというのに。


(何も起こらない…だと?)


高校生としての始まりに対してかなり期待していた彼にとっては、相当ショッキングなことであった。言ってしまえば、勝手に期待していただけのこと。この場合は、全面的に期待した側が悪い。しかし、それよりも腹立たしいのは、肝心な時に自分の勘が外れそうになっているという事実だ。


「君。大丈夫かい?」


突然、近くにいた同期に声をかけられた。どうやら、無意識のうちにB組の列に並んでいたらしい。

目元が熱いな。声をかけてくれた優しいクラスメイトの瞳に映ったのは、自分の静かな泣き顔だった。


「B組!」


コールが鳴る。いよいよ、本番が訪れたようだ。

頭を冷やし、感情を抑えることに集中するとしよう。

しかし、雑念は中々消えないもので。


「…そりゃあさ。何もないことが1番なんだけど。もっと、こう…ハッピーなことが起こればいいのに。」


ポツリと落とした願いは流星となり、本来ならば空気に馴染むように消えてしまう。しかし、時には地球にぶつかって大騒ぎになることを忘れてはならない。





「…お、おい。大丈夫か?アンタ。」


近くにいた別の新入生が、ぎょっとしている。まあ、驚くわな。


突然目の前の人間が血まみれになれば、動揺するのも当たり前のことだ。


正直、これには当事者が1番驚いた。だって、自身の身体には何も損傷がないことがわかっていたのだから。




▲▲▲▲▲




次に思考が回ったのは、会場がすっかり混乱に陥った後のことだった。空間をつん裂く、鋭い叫び声が聞こえた気がしたが、それどころではない。問題は…この液体が何処からやって来たのか。

普通に考えたら上だろう。直前まで誰にも気づかれなかったことを考えると。じゃあ、誰の血?


《あ゙…な…ごろ…だ…》


視界には、ボロ布のようになった肉がもぞもぞと動いている様子が映っていた。


「…は?」


一周回って僕の頭は今、実に冷静になっている。もっとも、まともに思考が出来ているのかは分からない。一種の深夜テンションとでも呼ぼうか。


「…身体は大丈夫か?危ない液体なら、すぐに洗い流した方が良い。」


近くに来た人が注意喚起してくれたようだ。彼は…【有原義(ありはらつとむ)】、だったかな?騒ぎに逆行してこちらに来るだなんて良い度胸してるなー。


…人工の不快感がする。


あー。ビックリした!どうやら、僕の頭に降ってきたのはただの絵の具だったらしい。

血特有の生臭い匂いがしなかったからね。ペンキみたいな匂いならしたけど。有原くんも、それを聞いて安心したようだ。それよりも。


形だけの自己紹介も済ませたから、そろそろ()()を始めようじゃないか。せっかくだし、今回は有原くんを巻き込んでしまおう。


「有原、気づいてるか?」


今日は回り道はしたくない気分なんで。早速だけど切り込ませてもらうよ。


「え?何が…?」


「先公共が疑似血まみれの俺を放っておく理由さ。」


わざと冷めたような口調で言い放つ。そして、目線は先程のお肉…もとい、倒れている人間に向ける。つられて有原もそちらを向く。アレを見て口を押さえないってことは、慣れてるのか。驚いてはいるようだが、怯えてはいない。


ほほう!これは興味深い。もしかしたら、彼は良い人材かもしれないな。


人が原因不明で倒れている上にソイツが血まみれパーリィだから警察案件になるとは思う。しかし、この学校は少し離れたところにあるから警察もすぐには来れないはずだ。賢い人間ならば大人しく警察が来るのを待つんだろうけど、僕は待てない愚か者なんだよね。


「俗に言う肉塊…ってところね。」


「…え?」


肉塊?


「貴方は…確か、クラスメイトの。」


有原は、彼女…【粟倉菜子(あわくらさいこ)】の物言いに引いたようだ。彼女は、かなり個性派らしい。


「よろしく。ところで、佐々木くん。貴方…とても情熱的な格好をしているわね?」


情熱的だって?!ああ。ある意味そうかもな!


「うるせぇ!なりたくてなったわけじゃない。」


とりあえず彼女の挑発に乗ってみる。予想通り、彼女には1ミリも効いていないようだ。


「寧ろ、ゾクゾクするわぁ。血まみれでも尚強気な男の子。刺しても良い?」


光惚した顔でそう言い放つ。

なんてこった。現代人の中でもかなりヤバい人種かもしれない。これが、俗に言うヤンデレ。


流石に恐怖を感じたので、それっぽいセリフでも言っておこう。それと、後退るのも忘れずに。有原は自分が何か言われたわけではないのに、彼女の放った言葉に凍りついていた。彼女もやりすぎたと思ったのだろうか。クスクスと笑いながら言弾をぶつけるのを止めた。


「冗談よ。それよりも、良いの?ア・レ・。」


菜子は、校舎裏の肉塊(彼女曰く)を指で指した。

そうそう!ソレだよ、ソレ。


あの制服、俺らのと同じだよね!旧デザインの制服だから在校生みたいだけど。それに、コサージュもしてないし。


「あれは…足、か?」


うーわ、グロッ!!マジもんじゃん、これは。…生物学的に女だな。ちょっと曲がっているが身長的に2年生か。3年生は受験勉強とかで部活動に参加しなくなる人が多いしね。参加するのは新入生歓迎兼勧誘タイムである部活動仮入期間ぐらいな気がする。


それに、今日は入学式。関係者外の一般生徒は来ない。部活動だって今日はないはずなんだけどな。


「息はしてるわよ。さっき確認したけど。ただ、今は下手に触らない方がいいわ。」


菜子が落ち着いた様子で応じる。


「そうか。とりあえず、救急車をー。」


有原はスマホを使って救急車を呼ぼうとしていた。


スマホ…ね。

そんなわけでネクスト探偵'sヒーント!「スマホ」

まあ、麦畑の知能はそこまで高くないからトリックもありきたりなことだよ。そもそも、高校生が考えてる設定だし大丈夫っしょ!あれ、新一くんって高校s((殴

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