第1章 転落少女
やあ!麦畑だよ٩( ᐛ )و
100pv記念企画に見せかけた春チャレンジ企画だよ。…ちゃんと、100pv用の作品も出すよ。本当さ。でも、その前にコースターくんの続きを書かなくては…。
学校の一番鶏が高らかに声を上げた時、僕らの高校生活は始まった。桜舞い散る花道に、在校生と教師陣が並び、新入生達を温かく出迎えてくれている。
「わぁ。綺麗なお花。ビオラですかね…?」
「うっ、うっ。みんな、大きくなったなぁ。」
「未来の若者に幸あれ!」
「あの子、ウチの子なんですよ。」
春。それは、出会いと別れの季節。季節は、大人でも子どもでも変わらない。けれど、少し。見え方は違うのかもしれない。
「新入生の入場です。皆様、拍手でお迎えください。」
アナウンスが終わると、盛大な拍手が新入生に送られる。保護者の中には、感極まって涙を流している者もいるようだ。一方、式場の入り口で待機している新入生達は、期待と緊張で胸がいっぱいになっていた。もちろん僕も、その1人。何を隠そう、全身はガッチガチ。前日は、楽しみで全然寝れなかったんだよね。…ついに、高校生になるんだ。通学は歩きではなくて電車を使うことになったし、知り合いは誰ひとりいない。高校は、想像したよりも人数が居てセンチな気分にもなったけれど、同時にワクワクもしている。だって、新しい環境で、新しい友達を作って、新しいことに挑戦する。そんなの、絶対に楽しいに決まっているじゃないか!
△△△△△
1組、2組、3組。次々と生徒が入場していく。ちなみに、僕のクラスは6組。学年全体では8組まであるんだ。私立高校とかだと10組まで存在しているところもあるんだって。
「5組!」
前のクラスが呼ばれた。次はいよいよ、僕のクラスの番だ。来賓者の視線が、一気に注がれる。中学の卒業式でも見たけれど、やっぱり、緊張するなぁ。ふと、周りを見渡すと、隣の列に並んでいた女の子と目が合った。女の子も緊張していたが、僕と目が合ったことで緊張が和らいだみたい。ふふっと笑みを溢した。その笑顔に、僕はかなりドキッとしたのだが、その後すぐに6組が呼ばれたので、前を向かざるを得なくなった。
「6組、入場。」
軽くなったその足取りで、僕はアーチを潜り抜ける。体育館の壁には、紅白の垂れ幕と花紙で作った花が飾られ、[入学おめでとう]の文字が彩られている。体育館は、快適性の観点から窓が開放されており、そこから桜の木々が覗く。風に揺られて運ばれてきた花びらが、僕の目の前にー
ー瞬間。近くで、何か…重い物が落ちた音がした。
驚いて音のした方を向くと、隣の校舎裏の方に人間の足らしきものが見えた。
気のせいであることを祈りたい。誰だって、平穏が破れることを恐れるものだ。しかし、現実はただ整然と事実を写し出す。確かに今、落ちたのだ。僕と同じぐらいの歳の人間が。そして、事態を認識した来賓者達が、声にならない声を出して腰を抜かしていた。
△△△△△
「飛び降り自殺?」
春は色々な事が、次々に巻き起こる。それに耐えられなくて、残念なことに命を断とうと動く人もいる。確かに言うけれど、まさか、自分が入学する学校の在校生が飛び降りるとは。…それにしても、随分とタイミングが妙な気がするな。
飛び降りた人は、ここの在校生の女の子なのだとか。彼女と親しい人物によれば、彼女はとても恥ずかしがり屋で目立ちたがらない性格だったそうだ。それも、授業で発言がしたくても出来なくて、悩む程に。つまり、わざわざ入学式に飛び降りようとするような人間ではないらしいのだ。
落下した場所も、芝生の上。もし、死のうとしてたのなら、校舎側にあるアスファルトの上にでも飛び降りたことだろう。僕は、次々と思考を繋げていく。…と、言っても。これでも冷静に動けている方ではあるが、目の前で人が死にかけたのだ。混乱しない方が無理がある。式は…中断だよな。入学式のあの子、大丈夫かな?トラウマにならなければいいけど。…在校生の彼女は、どうして落ちてしまったのだろう?自殺ではなさそうだけど。…知ったところで何になるんだとは思う。むしろ、辛くなるだけのような気もする。でも、それでも。知りたいんだ。この不可解な現象の、原因を。
「そんで、彼はこう呟くわけよ。『この事件の真相は、一体なんなんだ…』ってね。」
勉強机の上に乗って足を優雅に揺らしている少年は、自身の指を空中に走らせている。どうやら、明日の入学式が楽しみでたまらないようだ。
「まっ、こんな漫画展開なんて、起きっこないんだけどね。でもさぁ…一度は、考えたことない?『私もこんな体験してみたいなー』って。」
「別に、事件うんぬんとかに興味がなくてもさ。例えば、【魔法が使えるファンタジー世界に転生する主人公の話】とか、【女の子に好かれまくるハーレム系の話】とか、【甘酸っぱいラブコメ系の話】とか。実際にはありえない要素があるけれど、普段みんなが当たり前にやっている要素も入ってて共感出来ることもある…みたいな。現実のイベントと非現実の出来事を掛け合わせるのって、なんか面白いと思わない?」
彼は、一見何もない空間に向けて熱い演説をし、くすくすと笑った。
キーン。キーン、コーン、カーン。近所の学校の最終下校時刻を知らせるチャイムが、町に響き渡った。彼は弾かれたように机から飛び降り、一枚の楽譜を取り出す。
「そうそう!コレはね、俺が作った初めての音楽なんだ。もちろん、作曲なんて欠片も知らないから、曲にはなっていないんだけど。」
彼は、懐かしむように楽譜を眺める。【人形】。彼の天才的な感覚によって名付けられた素晴らしい題名だ。
「ステキだろう?聴いてみたくなった?…でも、作った俺ですら弾いたことがないんだ。楽器と触れ合う機会がなかったせいで、そもそも弾けなくて。」
残念。彼は、曲を演奏することが出来ないようだ。しかし、諦めてはいけない。自分が弾けないのならば、弾ける人間を探せばいい。
「そんなわけで、俺はこの音色を奏でられる友人をつくる!それが、目標だ。目標は、口に出した方が叶いやすいからね。」
なんて、志の高い人間。聞いてくれる人間がいないことは悔やまれるが。だが、それも仕方のないことだ。何故なら、彼の知り合いは、みんな違う進路に行くことになったからだ。忘れがちだが、高校は、義務教育ではない。自分で道を決めて、自分自身で歩まなくてはいけないのだ。交友関係というものは、その道の副産物でしかない。裏を返せば、これからいくらでもつくれる、ということだ。
「こんな感じでいいのかな。ま、何は何あれ、明日が本番だ。…楽しみだなぁ。」
「ーーー!ちょっと、手伝ってくれるー?」
1階から、母の呼ぶ声が聞こえた。時計を見ると、6時を回っている。おそらく、夕飯の支度をするのだろう。それと、洗濯物を取り込むのも。
「分かった!今行くよ。」
彼は、持っていた楽譜を、新しい鞄に丁寧にしまった。
学校って楽しいなぁ〜
出来れば高校まで義務教育になって欲s(((((殴
…ちゃんと、選挙投票をしなくちゃね。