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うっかり(?)最強ランク

…………え。


「え、えーっと……。コトハ様のランクは、『E』、と……」

お姉さんが露骨にがっかりしたような顔になる。

……いや、なんで……?


「ええ!?そ、そんなわけなくない!?」

「ふむ……なるほど、しまったな……」

「ユーリ様?どういうことですか?」

「今の琴葉君は、『てぇてぇパワー』を発動していない状態。つまり、ただの一般的なインドア運動音痴JKということさ」

「そ、そんな……」

「あら~……。琴葉、ゲームばっかりでずっと引きこもってるから……」

「そ、それは今関係……ないことはないかもしれないけど!」


くぅ……。めっちゃ高いランク叩き出して、「ええ!?あなた、何者なんですか!?」「あれ、私何かやっちゃいました?」的なこと言う、な、お決まりのやつやってみたかったのに……!


「……では、次はソラネ様。お願いいたします」

「あっ、はーい!」


……うーん。

この流れで行くと、空音だって高くてもCランクくらいでしょ?

いくら『てぇてぇパワー』で強化されるとはいえ、魔王退治とか夢のまた―――――


―――――と。

私が、水晶に手を置く空音を後ろから見ていると、急に、ドン、と背中を押されて前によろけ、そのまま空音にもたれかかった。


「わっ!??な、なに琴葉!?」

「ご、ごめん!……っ!?」

私は思わず、顔を勢いよく背けた。……そ、空音の顔が、急にあんな近くに……。


「あはは、どうしたの琴葉。顔真っ赤だよ?何照れてんのさ~」

「ち、違うわよ!ちょっとびっくりしただけ!」


……ああもう。ていうか、私を後ろから押したのって絶対ユーリさんだよね?

「ンフフフ……」

ほら、なんかニヤニヤしてるし―――――


『てぇてぇレベル110!!』


……へ?


「えっと、ソラネ様のランクは…………ええっ!??」

「「「!??」」」


突然発せられたお姉さんの驚愕したような声に、私、空音、メナちゃんの三人がビクッとなる。


「び、びっくりしたぁ……!あの、どうしたんですか?」

「…………ト、『SSS《トリプルエス》』ランク……!?」

「「「え!?」」」


……さ、さっきの指輪からの声……!

もしかして、今ので『てぇてぇパワー』が発動したってこと……!?


「な……なな……!!こ、こんなに高いランクは初めて見ました……!」

お姉さんは、驚きのあまり腰を抜かしそうになっている。


……いや、流石にやりすぎでは……?

何、トリプルSランクって。インフレし過ぎでしょ。


「フフ。まあ、『てぇてぇパワー』なら当然だね」

「ま、まさかここまでとは思いませんでした……」

「おお……!さっすが女神様の力!すごいね、トリプルSだって琴葉!」

「くそう……私はEなのに……」

「ふふん。私、なんかやっちゃいました?」

「あっ!そ、それ私がやりたかったやつ!……ていうか、私だって今測ったらそれくらいになるんじゃないの!?あの、もう一度測ってみていいですか?」

「……あ……あ、ああ、申し訳ございません。測定ができるのは、月に一回までと決まっております」

「ええ~……」


まじか……。しかも次まで結構長いし。


「……では皆さん、これにて冒険者登録は完了となります。こちらの冒険者カードをお受け取りください」

お姉さんから、免許証くらいの大きさのカードを受け取る。


「そちらのカードは、主にクエストの成果報告の際に使われます。倒した魔物を認識・記録することができるため、クエスト達成の証拠になります。また、倒した魔物のランクに応じて、カードにポイントが溜まります。そのポイントは、食事や買い物などで幅広く利用することができるので、ぜひご活用ください!」

「おお!すごいハイテクだ!」

「う、うん……。ていうか、オーバーテクノロジーすぎる気もするけど……」

「それでは、良き冒険者ライフを!」

そう言うと、お姉さんはお手本のような綺麗なお辞儀をする。


「どうもありがとう!……それじゃあ、早速なんかクエスト受けてみよっか!」

「そうですね。まずは簡単なものから―――」


「あの、皆様。もう少し、よろしいでしょうか」

私達が背を向け、歩き出そうとすると、お姉さんに呼び止められた。


「ふむ?どうしたんだい?」

「……皆様の腕を見込んで、折り入ってお願いしたいことがあります」

お姉さんが真剣な表情で言う。

……腕を見込んで、って言っても私はEランクだったけどね、という言葉は飲み込んでおこう。


「このクエストを、受けていただけませんでしょうか」

「……??」

空音は、お姉さんから一枚の紙を受け取ると、その内容を読み上げた。


「『特別クエスト・EXランク魔物討伐』……?」


ちょっと待って。

なんでいきなりそんな大ボス戦みたいなのに挑まされそうになってんの?


「サウスウェスタン地方の山中にあるダンジョンに住まう最上級魔物、アラクネを討伐していただいた方には、報酬として1000万Gゴールド差し上げます。だって」


え、なに最上級魔物って。

そいつが魔王じゃないの?


「そちらは、半年ほど前から掲載されているクエストなのですが……なにしろ難易度が高すぎるということで、達成される方がおらず、私達ギルド管理協会一同、困り果ててしまっているのです」

「なるほど……。それで、SSSランクの冒険者である空音さんに、直接頼もうという訳ですね」

「そうなんです。どうか、その類まれなる才能を持つソラネ様に、そのお力を貸していただけないかと……!」

「ええ?……ふふん、じゃあチャチャっとやっちゃおうか!」

お姉さんの分かりやすいヨイショに、空音はご機嫌そうに答える。


いやおい。

チョロすぎるでしょ流石に。


「ちょっと、空音。流石にまだそんなクエスト受けるには早いって」

「琴葉さんの言う通りです。まずは簡単なクエストをこなして、戦闘に慣れてきてからの方がいいと思いますよ」

「……そっかぁ。ユーリさんもそう思う?」

「私は何でもいいさ。みんなに任せるよ」

「う~ん……じゃあ、一旦断らせてください。ごめんなさい、お姉さん」

「…………分かりました。では、また気が向いたらいつでも仰ってください。ああ、その募集用紙は差し上げます」

空音が募集の紙を返そうとするのを押し返し、お姉さんはカウンターの奥に入っていった。

うん、あれは全然諦めてない感じだな。


「……では、今度こそあちらのクエスト募集の掲示板を見に行ってみましょうか」

「うん!」

私達は、受付を離れて掲示板の方へ歩き出す。


「初心者向けの簡単なものがあるといいけど……」

「大丈夫だよ、琴葉!なんたって、トリ!プル!エス!ランクの私がいるんだからね!ちょっと難しめのクエストでのへっちゃらよ!」

「くっ……!分かりやすく調子に乗りおって……!」

「でも実際、本当の初心者向けクエストでは拍子抜けしてしまうかもしれませんね。超高ランクの空音さんと、それと実質同じ実力を持つ琴葉さんのお二人がいらっしゃるわけですから」


……確かに、言われてみればそうだ。

あのお姉さんの態度からして、空音だけでも並大抵のクエストは余裕で達成できそうな感じだったし。

とりあえずいくつか適当なクエストを受けてみて、いけそうだったらあの特別クエストを早めに受けてみてもいいのかも……?


―――――と、その時。


「わああああっっ!!???」

と、後ろから誰かの叫び声が聞こえてきた。

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