表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/15

絶対百合守護神

―――――視界が開けると、そこは、まさしく異世界といった感じの場所だった。

中世ヨーロッパ風の、ラノベやRPGゲームなどでよくあるファンタジー世界だ。


「おお!なんかワクワクするね、琴葉!!」

「う、うん……。で、でも……」


今は、それよりも気になることがある。


「フフ……それは良かった」

「それは良かった、じゃないですよユーリ様!!私やユーリ様も異世界転生するなんて聞いてないです!」

「おや、そうだったのかい?てっきりメナちゃんは知っているものかと……」

「知りませんでしたよ……あまりに突然過ぎて困ります。ユーリ様には、女神としてのお仕事がありますし、私は女神になるために、もっと見習いとしての経験を積まなければいけないのですから……」


確かに唐突な話。

流石に申し訳ない気持ちがある。


「問題ないよ、メナちゃん。転生者のサポート役となっている間は、女神としての死者を導く仕事は免除される。さらに、もし転生者が世界を救い、復活を成し遂げた場合は、サポート役の女神見習いにもご褒美が与えられるのさ」

「えっ?ご、ご褒美とは??」

「見習い卒業さ。転生者が世界を救うのに貢献したとして、特例として女神への昇格が認められる」

「ええっ!??」


メナちゃんが驚きの声を上げる。


「ほ、本当ですか、ユーリ様!?」

「本当さ。私はそんな汚い嘘は吐かないよ」

「……分かりました。ユーリ様を信用します……!」

「それじゃあ、メナちゃんも気兼ねなく一緒に冒険できる、ってことですか?」

「はい。……なんだか、ご褒美に釣られて同行するようでお恥ずかしいですが……」

「そんなの気にしないよ!ね、琴葉!」

「うん!もちろん」


むしろ、私には復活という特典があるのに、その付き添いのメナちゃんには何もなかったら気が引ける。


「……あれ?それじゃあ、ユーリさんにとってのご褒美は?」

「ん?私かい?それはもちろん……ねぇ?」


ユーリさんがニヤニヤしながら私に目配せをしてくる。


「ユーリさん、言わなくていいです」

「言わなくていいですよ、ユーリ様」

「えっ?な、なんで??」

「フフフ……ま、『その時』までのお楽しみということにしておこうかな。よし、それじゃあ早速、魔物狩りにでも行こうか」

「えっ?も、もうですか!?」

「早く『てぇてぇパワー』がどんなものか見てみたいだろう?」


……いや、確かに気になるっちゃ気になるけどさ。

それを発動するために必要なものが問題なんだよなあ……。


「ですがユーリ様。この世界では、魔物討伐をするには冒険者登録をしなくてはいけませんよ。それに、後々魔王退治を目指すのであれば、まず初めに冒険者登録を行っておいた方が良いかと思われます」

「ああそうか。私としたことが、忘れていたよ」

「それじゃあ、まずは冒険者ギルドを目指しましょうか。……多分、この町のどこかにありますよね?」

「よーし!まずは冒険者ギルドを目指して探検だね!」


「―――――おねーさん達、ちょっといいかな~?」


突然、後ろから知らない男性の声が聞こえてきた。

振り返ると、まさしく異世界の住人といったような恰好の男四人が立っている。


「そこのお姉さん。いやぁ、めちゃくちゃ綺麗っすねぇ」

「む?私かい?」

「他にいないでしょ~。初めて見かけたけど、新人さんっすか?」

「いいや。これから冒険者登録に向かうところだよ」

「そりゃいいや!俺達もちょうど冒険者ギルドに行くところだったんすよ。案内してあげるんで一緒にどうっすか?」

「ふむ。いいのかい?」

「もちろんっすよ!」


「―――――こ、琴葉。これって……」

空音がそっと耳打ちしてくる。

「う、うん……」


……まずい。異世界に来て早々、怪しいナンパ師(?)に捕まっちゃった。

確かに、奇行が目立って気づかなかったけど、ユーリさんはかなりの美人だ。中身を知らない男が見れば、ナンパの対象になるのもうなずける。


「とても親切な方々ですね。私達、実は右も左も分からない状態でしたので助かります」

「ああ。それでは是非甘えさせてもらうとしようか」

「よっしゃ!」


メ、メナちゃんまで……!

そっか、ナンパっていう概念を知らないのか。

まずい。本格的にまずい。


「ちょ、やばいよ琴葉、どうする!?」

「どうするって言ったって……。本人の目の前で、『この人達ナンパ師です!』って言うのも無理あるし……」

「じゃあついていくの?」

「それは絶対やだ。あんなチャラ男、生理的にムリだし」

「私もだよ!だから、どうにか理由を見つけて―――――」


「君達も。彼女のお連れさんだよね?」


……!!男達の一人が話しかけてきた。


「あ、いや……そうですけど……」

「あれ?君もよく見たらめっちゃ可愛いじゃん!」

そう言って、男は空音の手を取る。

って、ちょっ、こいつ何して……!?


「や……離してください!」

「良いじゃん良いじゃん。これから同じ冒険者同士、仲良くしようよ!」


こ、こいつ!!!殺…………じゃなくて、引きはがさないと!!

「あっ、あの!嫌がってるので―――――」


……と、その瞬間。


「ウラッシャアアアアアアア!!!!!」

「ヘブッッッ!??」


横からユーリさんが思いっきりドロップキックをかまし、男を蹴り飛ばした。


「フーーーッ、フーーーッ…………」

「ア、アンタ何して――――グへッッッ!!?」

「ちょ、待っ――――ブフッッッ!??」

「ひっ―――――ゴヘッッッ!??」


そして、たちまち残りの男達をなぎ倒し、全員まとめてKOしてしまった。


「……ユ、ユーリさん……?」

「―――――はっ!??す、すまない……見苦しいところを見せてしまったね。私は、百合の間に挟まる男を見ると我慢がならないんだ」

「……そ、そういえば、一度それで部屋を半壊させたことがありましたね……」

「よく分からないけど、ありがとうユーリさん!助かったよ!」

「フフッ、例には及ばないさ。……これからは、この手で百合を守護ることが出来る。私の目が黒いうちは、何人たりとも間に挟ませはしない!だから安心したまえよ、琴葉君」


そう言って満足げに笑うユーリさんを、恐ろしいながらも、ちょっとだけ頼もしいと私は思ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ