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真っ白な空間

う~ん…………?

―――――あれ。なんだここ?


気が付くと、私は見覚えのない場所にいた。

辺り一面、360度見回してみても、真っ白で何も無い空間。


……これ、創作の世界でよくあるような、死後の…………って、そうか。

私、あの時暴走して歩道に突っ込んできたトラックに轢かれたんだ。それで…………死んだ、ってこと?


下を向いて、自分の手や体を見てみる。恰好はあの時と同じ制服姿。体の方も、特に怪我などもなく普通に動く。


「あー、あー…………」

うん、声もちゃんと出る。

死んだっていう実感は全然ない。けど、あの時轢かれたっていうのは事実のはずだ。


「うーん……」


―――――と、その時だった。


「…………!!…………!……!??」


「!!」

かすかに、誰かの……人の声が聞こえた。

そしてその方角を見てみると、遠くの方に、何か茶色っぽい物があるのが見える。

私は瞬時に立ち上がり、無我夢中で走り出した。


「……!もう…………!!……いつま…………!!」


近づいていくにつれ、少しずつその声が鮮明に聞こえてきた。どうやら、何かを怒鳴りつけているような、怒りが含まれた声のようだった。

そして、私が見た茶色っぽい物もはっきりと見えてきた。


「あれって……ドア?なんで??」


……まあいいや。

ようやく何かを見つけたんだ。それに、おそらく人も。これを逃す手はない。


―――――数十秒ほど全力で走って、私はその茶色いドアの前までたどり着いた。

やっぱり、その奥からは人間の声が聞こえる。どうやら二人の人間が会話をしているっぽいけど、その内容はよく聞き取れない。


「うーん……」


とりあえず、そのドアを観察してみる。

まあ、特に何の変哲もない、木でできたよくある普通のドアって感じだけど。でも一つおかしな点がある。

まるでど〇でもドアのように、この茶色のドアだけが、ただポツンとそこに存在しているのだ。

それなのに、中(?)から声が聞こえてくる。


……まあ、でももうなりふり構っていられない。ようやく見つけた、このよく分からない状況を変えられるかもしれない存在なんだから。


「ふぅーーー…………」


私は、覚悟を決めて大きく息を吐くと、ドアノブに手をかけた。

鬼が出るか蛇が出るか…………いざ!


恐る恐るゆっっくりとドアを開け、少し顔を出して中を見てみる。

するとそこには…………


「もうっ!!その巻で終わりにするって約束しましたよね!?これは絶対に渡しませんからね!!」

「ま、待ってくれメナちゃん!あと一巻!!あと一巻読んだらやるから!」

「ダメです、ちゃんと仕事してからにしてください!」

「いいとこなんだよすっごく!頼む!後生だから!!」


……床がたくさんのライトノベルで散らかりまくった部屋の中で、幼い少女(?)が走って逃げ回り、それを大人(?)の女性が追いかけ回すという、不思議な光景が広がっていた。


……えーっ…………と?何これ…………??


「いいじゃないかあと一巻くらい!」

「ダメです!ぜっっったいにあと一巻じゃすまないですから!これは渡せません!」


下手したら小学生くらいにも見える小さな女の子と、スタイルが良く身長の高い大人の女性。

そんな二人が、一冊のラノベを巡って追いかけっこをしている。


……自分で言ってても訳が分からない。

どういう状況??


―――――と、その時。

ふとお姉さんと目が合った。


「ん?あれっ!?」

「!??」


やばっ!??


…………あ、しまった。

びっくりして、ついドアを閉めてしまった。

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