冒険者三姉妹
「……あ。ごめん、忘れてた……」
「忘れてた、じゃねぇんですよ!!!お前達、揃いも揃ってどんだけアタシらをガン無視しやがるんですか!」
「まあまあ、落ち着いてネピィちゃん。……とにかく、お仲間全員が無事でよかったですね、ソラネちゃん」
「…………よ……よかった……ね……ソラ……ネ、……ちゃん……」
「うん!へへ……!」
空音は、ようやく私を放して立ち上がる。
「あの……失礼致しました。遅ればせながら、私、メナ・トートイアと申します。そしてこちらにいらっしゃるのが、私の主、ユーリ・トートイア様でございます。どうぞよろしくお願いいたします」
「よろしく」
「まあ……まだ幼いのに、ご丁寧にありがとうございます。私は、ラーナ・フラノ―ルっていいます。ぜひ仲良くしてくださいね」
ラーナと名乗ったその女の子は、そう言ってにこやかに笑った。
いかにも穏やかで優しそうな、可愛らしい女の子って感じの子だ。
「へんっ!そんな呑気に挨拶してる場合かよ、です。そもそも、こんな出会ったばかりで得体のしれないヤツらに対して、仲良くしようなんて軽々しく言うな、ですよ」
「このツンツンしててとっても可愛らしいのが、私の妹で……ネピィちゃんって言います。お口は少しだけ悪いかもですけど、中身は良い子なので、仲良くしてあげてくださいね」
「はああ!??何おかしなこと言ってやがるですかラーナ姉!脳味噌お花畑は黙ってろ、です!」
「……なにも……おかしく……なんて、ないわよ……?ネピィちゃん、とっても……良い子……だもの……」
「クロハ姉はそのボソボソ声で喋るのをやめろ、です!その声で言われると余計腹立つんですよ!」
「うう……。だ、だって……知らない人がいっぱいで……」
「うんうん、大丈夫ですよお姉ちゃん。……えっと、こちらが私達三姉妹の頼れる長女、クロハお姉ちゃんです!ちょっとだけ人見知りなんですけど、優しくていざという時にはとっても頼りになるんですよっ」
「……そ、そんなこと……ない……よ……」
ラーナちゃんに言われ、クロハさんは恥ずかしそうにうつむく。
「それで、そちらの方がコトハちゃん、ですよね?ソラネちゃんの親友だっていう」
「うん、そうだよ!ワガママで人見知りで寂しんぼだけど、…………。えっと…………」
「おい。フォローもしっかり入れんかい」
「あはは、冗談だよ!いざって時は、身を挺して守ってくれる私の騎士様だもんね!」
「ナ、ナイ……!??……ん。ま、まあよろしい……」
「あれっ、琴葉照れてる?」
「あ、あんたが変なこと言うからでしょ!もう……」
「へへ。こういう恥ずかしがり屋で可愛いところも、琴葉の良いところでーす!」
空音は、私の両肩に手を置きながら笑顔で言う。
くっ……!
また軽々しくそんなこと……小悪魔め……!
「うふふ。お二人とも、とっても仲が良いんですね」
「公共の場でイチャイチャすんな、ですよ。見てらんね…………ん?な、なんですかお前……。なんでそんなにこっちを見てんですか?」
ネピィちゃんの視線の先を見ると、ユーリさんがじーっとネピィちゃんの方を見つめていた。
…………あ。
「あの目」は……。
「失礼。いいや、君達もなかなかどうして、仲良しで素敵な姉妹だと思ってね」
「本当ですか?うれしいです。ねっ、お姉ちゃん」
「……ふふ……うん……そう…………ね……♪」
「それで君達、姉妹百合という言葉を知っt」
「ユーリ様」
暴走しかけたユーリさんを、メナちゃんが冷たく制止する。
「わ、分かったよメナちゃん。確かに他所見はよくないね。これまで通り、『ことそら』だけを推していくことにするよ」
……うん、ダメだ。全然分かってない。
「…………はぁ」
メナちゃんは、呆れかえったような大きなため息を吐いた。




