WsTs ドラゴンハグ 第一話 第六部
一番長いです
感想を書いてくれたら嬉しいです
「えっと……その、ライザムてのは誰?」
「ライザムさんは……、水龍のばあちゃんなんだ……」
なるべく落ち着いて答えるが声が震えてしまう。
「いつも僕の事を優しくドラゴンなんだ……森で取れた野菜とかの素材を持って行って食料をくれたんだよ」
「いつも東の森から素材を持って来てくれるドラゴンがいると言っていたが……君だったか……」
「いや、パンをたった十個だけですよ……」
「いや……それだけでない……。ギルドやレイクラスパイラルの君などの反感を買っている方々を守っているんだ……。君の優しさにいつも助かっているて言っていたよ。それに薬ももらっていたよね」
「いえいえ……最近は自分である程度作れるようになってもたってないですから」
「……あのさ~話に割って入るようで悪いんだけどさ〜ギルドマスターさんは急いでるんじゃなくて? 」
ケルラムさんの言葉でウィルさんは我に返ってまた北門に向かっていった。
「すまなっかた! ライザムの気配のある北の森に行ってみることにするよ! 」
「やはり北の森かいつ出発だ? 私達も同行する」
(ケルラム院……)
念話でツッコミを入れる。
(いいセンスだ。もっとオススメ作品を教えてやろう)
(それに助けにいきたっかたんでしょ)
(……ありがとうございます)
どうやら僕のことはお見通しみたいだ。
「もちろん今からだ! 」
「そんなわけはないだろ。見たところ手に持っているものしか用意してないだろ。腕も怪我してるし、とりあえず、物資を揃えるぞ」
「すまなかった。焦りすぎていた。行きつけの万屋を知っているついて来てくれ」
「わかった。ハラグいくぞ」
「……はい! 今行きます! 」
途中から全く会話に参加できなかったが、とにかく水龍のばあちゃんを助けにいくことになった。
〜とある万屋にて〜
「いらっしゃ……ああフェイフルとダーメイションか。どうしたのかい」
「ウィルは寄ったか? 」
「ん? ああついさっき出て行ったよ。知らない連れもいたな〜、食料とか、回復薬とか……、あとついでに爆薬も……、どうしたんだい? 」
「…………どこにいった? …………」
「ああ、それなら北の門に行ったよ」
「ありがとう。さようなら」
ウィルとダーメイションは踵を返して店を出て行った。店長の声も聞かずに。
「くそ!! 」
壁に衝撃が広がる……まえにダーメイションの腕がフェイフルを止める。
「……落ち着いて……壁を殴っても解決しない」
その後ゆっくり抱きしめる。植物のいい匂いが漂う。
「すまない」
ムギュ
「……もうはなしていいぞ」
「……うん……。じゃあ、行こうか」
少し物寂しそうに腕を離すと並んであるき出した。
〜北の森〜
東の森に比べるとおぞましい気配はしないけど、嫌な予感はする。
「こっちの方向であっているか? 」
レイクラスパイラルに行った時と同じクロールに乗って行ったのを使って移動していた。
「あ、ああ……やはり君たちの力は凄いな……」
「オホメニアズカリコウエイデス」
素早く気配を悟らせない動きで軽快に進んでいく。
そのためかいっさい敵対する生物と出会わない。
僕は何もしなくていいと言われて本を読まされている。
(君も頑張って心彩闘法を続けているじゃん)
言われた通りしているため心の声がダダ漏れだ……。
「んっ! そこの洞窟だ! そこから気配を感じる! 」
「わかったよ! 急停止による衝撃にご注意ください! 」
派手な衝撃はしなかったがケルラムさん達の船に乗った時のように飛ばされかけた。
ウィルさんは流石ギルドマスター。衝撃への対処も早かった。
僕はケルラムさんに捕まってどうにかなったと思った……が、ケルラムご本人が衝撃を利用して着地したせいで結局は、僕はぶっ飛ばされケルラムさんに直撃しウィルさんしか助からなかった。
「褒めたことは撤回した方がいいかな……? 」
「あはははは……この世界に来てから飛び降りる時は失敗ばっかりだな……」
てことは僕を助けてくれた時もこのクロールに乗っていたのか。
(ザッツライト! 落とされても心彩闘法を止めてないね)
「とりあえず、はやく立ちたまえ」
「はい! ありがとうございます」
「あいよ、はいよ」
「……ついて来てくれたことは、嬉しいのだが……やっぱり連れて行きたくはない。なんかこう心配なんでね君たちが、どうかここで待っていてくれないか」
「いーや! ついていくね! 」
「はいっ! 僕も水龍のばあちゃんを助けにいきたいです! 」
「……あぁ、じゃあついて来てくれ……」
やっぱりウィルさん元気無いのかな……
〜洞窟の中にて〜
洞窟の中もどんどんクロールで進んでいく。ところが……、
「!! みんなふせろ! 」
洞窟の奥から強烈な風が吹いてくる。攻撃体制になっていたため僕は瞬く間に外に出される。
「く……すぐにむかいますっ」
有言実行! すぐに向かおうとするが……
「! こっちにくるな! 」
ズンズンズンズン、ガン!
〜洞窟突撃数刻後〜
水龍のばあちゃんを助けるために来たのについていけなかったなー。
急に壁が降ってくるなんて……
「はぁ……」
無意識にもため息が漏れてしまう。
とりあえず本の続きでも読もう。そう考えて本を開こうとしたとき、
「!! 」
殺気! まるでナイフを首筋に当てられて、いつでも終わらせることができるといったような、だがどこか既視感がある殺気だ。
とにかくすぐに対応できる状態にしておく。
すると森の木々の中からキラッと光ったと思うとナイフが飛んできた。
反応が遅れた! 速い!
ずっと手の中にあったクロールが飛ばされると洞窟の方へ行ってしまった。
確認と同時にバックステップで森の中に隠れる。
相手が目に頼った敵だったらだいぶ厄介になるはず。
だが油断できない。さっきのナイフは明らかに知能が高い存在が作った物。もしかしたら水龍のばあちゃんを攫った奴の物かもしれない。
だとしたらマズイ! ここで僕がやられたら洞窟から出て来たウィルさんとケルラムさんが逃げられない、最悪挟み撃ちになりかねない!
チラッ、チラッ、チラッ
また飛んでくる!
次は木の上に飛ぼうとしたが、幹のザラ付きを感じる前に鋭い痛みが走る。
なぜだ! 僕は弱いっ! だからナイフに当たるのはわかる! でもどうして上に飛べていない!
スッと足もとを確認すると地面から植物が伸びており、僕の足に絡みついていた。
抜け出そうにも抜け出せない。ここで僕を仕留めるという気迫すら感じる。
ドッドッドッ!
力強い足音が聞こえる! とにかくどうにかしないと!
まだ完成してないから自分のナイフで植物を力づくで切断。
急接近してきた存在の攻撃を受け流す!
思いっきりぶっ飛ばされる。受け流せなかった! 僕のナイフは遠くに飛んでいき、ドコッ! と、どこかに刺さったおとがした。
痛みに耐えながら顔を見上げるとそこには……、
ギルドマスターの側近、フェイフルさんナイフをとダーメイションさんが槍斧を携えていた。
〜洞窟にてウィル〜
突撃からあまり時間は経っていないが相当疲れた気がする。
洞窟そのものの構想が入り組んであり、いかにも最奥ぽい珍しいキノコが群生しているところがあるため、もし探索しに来た物達は満足するだろうし、そこを少しズレた所には隠し道。
その奥にも隠し道が二個程ある。
だが今はそことは別の場所に移動している。本当の最奥の場所にはトラップがありその匂いを追っているからだ。
さらに全ての道にライザムの匂いがあるためしらみ潰しにするしかなかった。
認めたくはないが、ケルラムの喋る乗り物がなければもっと時間がかかっていただろう。
……少し気持ち悪い……。
「大丈夫か? 乗り物酔いにはこれを飲むといい」
そういうとケルラムは緑色のお茶が入ったコップをだしてきた。
「これはオーレイツ……ああ、緑の仮面の人ね。その人が作った薬茶だよ」
「……ああ、すまない」
彼からのコップを両手でしっかり受けとる。
少し……いや結構苦いが、しっかり飲み切ると全身に熱が広がる。
「ありがとう……少し楽になったよ」
「どういたしまして。おっと……」
「んっ? どうした? 」
「どうやら本当の最奥についたみたいだ」
最奥に入るとそこには、沢山の錬金術や薬学の機器などが散乱していた。
そんな中、壁を這うように調べていく。
「この感じからすると……おっ、あったあった」
ギゴゴゴゴゴゴ……
壁が奥へと動いていく。
「ギルドマスター、覚悟はいいですか? 」
「ああ……では、行こうか! 」
〜洞窟前にてハラグ〜
「なんで二人がいるんですか?! 」
ダーメイションさんの容赦のない、ハルバードによる大振り。
フェイフルさんのナイフの弾幕。
はっきり言ってすごく息があってる! それに、
「ホーミング・ロガー」
四方八方から火球が追尾してくる。火球と火球が、ナイフとナイフが、火球とナイフが、不規則的に弾かれあって避けにくくなっている。
避けれてもそこから燃え広がっている。
迎え撃つことにリソースが割けないっ!
「なぜっ! 敵同士では無いのに襲ってくるんですか! 」
疑問に思ったことを直接聞いてみる。
「じゃあ逆に聞こう。何故、ウィルと一緒に行動しているのだ? 」
「??! ちょっと待てどうゆうことだ! 」
「話しは……、君を……、ぶちのめしてからだっ……! 」
っ…………!
どっちにしろ倒さなければ……!
追尾して来た炎によって木に燃え広がる。
「ぐうぅ……」
少し足に燃え移った。
そこから素早く体に激痛が走る。
こんなに燃え広がっていたら、いつかは呼吸が困難になる!
呼吸が困難になる?
確かケルラムさんの船の図書館の本には、呼吸に必要な[酸素]が大切で物が燃えるのにも必要なはず……、
じゃあなんでフルアーマー装備で燃え広がる炎の中を走っているのダーメイションさんの方はあんなに余裕でいるんだ?!
そして炎もなんか変だ!
燃えたはずなのに通り過ぎた所は何事も無かったように元通りだ!
もしかして……、
念の為、念の為とケルラムさんが買った爆薬の入った袋。
素早く中に手を突っ込み投げる。
黒い粉は反応すること無く少しずつ地面に降りていく。
やっぱり爆破しないっ!
つまりこの炎は本物じゃない……、痛みだけなら耐えられる!
タネがわかれば簡単。あとは突っ込む!
シャボン玉を飛ばしながらナイフを振り切る。
ケルラムさんの時にやったシャボン玉で攻撃することをはやく飛ばす。
「オッラッ! 」
「…………?! 」「炎に反応しない! バレたのか! でも苦痛は感じるんだぞ! 」
「うっっっっしゃぁーー! 」
攻めて、攻めて、攻めまくる!
だか……
「ぐぅ……! 」
ダーメイションさんの蹴りが横から入る。
「……終わりだ……」
ポワポワ……
「やっぱり……その程度か。こんな奴にウィルはそそのかされたのか……クソッ!!!! 」
ポワポワ……
「……さっさと……吐かせる……、どこにウィルが……いるか……」
ポワポワ…………パチンッ!
「……!! 」「!! 」
!!?
なんでだ……あそこまでの威力はないはずなのに……!
もしかして心彩闘法……、
プワン……、
試しにもう一度、今回はフェイフルさんに撃ってみる。
ポワポワ……パチンッ!
「グッ……! 」
やっぱり心彩闘法のおかげか! ん……?
シャボン玉が触れた小石が中に入っている……、これなら……!
「いまだ! 」
「……! まっすぐだ……! 」
そうまっすぐだ、だがそれがいい、ほんの少し警戒されてるくらいがちょうどいい……!
ポワポワ……パチンッ!
「はずしたな……! 」
グゥリャァ……
「綺麗に決まった……。こんなこともできるのか……」
シャボン玉の中から飛び出された小石はダーメイションさんの鎧にめり込み、破壊した。
鎧の中のダーメイションさんは気を失っている。
「あとは……、フェイフルさんだけだ! 」
ナイフを握り直し、フェイフルさんに向き直った。
ついでにハルバードも別方向に飛ばしておく。
「もういい……徹底的に……ぶちのめしてやる……! 」
〜洞窟の最奥にて〜
ケルラムが言った通りさらに奥に道が続いていた。
だが今までのコケや鉱石などでは無くとても人工的な何かが光っていた。
「ふぅ〜〜ん。機械ぽいな〜。水色の光の線だらけ〜。まっ、なんとかなんっしょ」
ケルラムは妙に落ち着いている。
「すまないがこの後、何かと戦う時は私にやらせてくれ。さっきから君にやってもらってばかりだ」
「そっか。わかったよ。でも、ヤバくなったら援護にまわるから」
「ああ、助かる」
しばらくすると光が差し込んできた。
道を抜けるとだだっ広い空間が広がっていた。
「ここは……」
「……かまえろ」
「!! 」
空間の真ん中辺りに来ると、突然上から何者かが降ってきた。気配を感じなかった……。こんなに威圧感があるのに……!
「君たち、何者だ? 争いごとは、望まないのだが」
上から降って来た者とは別にの存在が話しかけて来た。
「……すまないが今は帰ってくれないか……。この世界の為にしなくちゃならない事をしているんから」
襲って来た方はドラゴンとも人ともとれない二つの要素が混じっており、理性を失っているが、悲しい目をしている。
一方、奥から出て来た方は、全身を白衣で覆っており、仮面をしているため種族がわからない。
おまけに声を変換させて違う声にする装置を使っているため、そこからも何者かは判断できない。
「お前何者だっ! ライザムは、おばあちゃんは何処へやった! 」
「……仕方ない……、グレイバー……、やれ」
そう言い残すとやつは奥へと消えてしまった。
「……ぐぅぃ……! 」
何者かの命令にで[グレイバー]と呼ばれた者が襲って来た。
ドッ!
たったひと蹴りで目の前まできた。
「っ……! 」
重い、重すぎる拳が胴体に襲う。
(盾でギリギリ防げた。だけど……)
盾、鎧はもう使い物にならなった。下手をすれば骨が折れていた。
「……援護しようか? 」
横からケルラムが声をかけて来た。ああ言った手前断りたかったが、
「……くっ! ああ悔しいがよろしく頼む」
「わかったぜ! そっちの行動に合わせるから、合図を頼む」
一人でやるにはきつすぎる。とりあえずケルラムの援護も期待できる。
だがやはり不安だ。ケルラムの水鉄砲も威力は保証できるが相手は速い。ケルラムに期待してい無いわけではないが。一撃で決めてもらいたい。
とゆうことは確実に当ててもらうため私が相手の足を止めるしか無い。
ケルラムご本人も私に合わせると言っている。
「ぎぐぅ……アガガガガッ! 」
グレイバーは体制を立て直し今にも襲ってきそうだ。
「……では、行くぞ! ケルラム! 」
「アイアイサー! 」
それと同時にグレイバーへと向かっていく。
得意技で一気に決める!
「[水龍疾走]! 」
全身に激流を身にまとい、一気に突撃する技。
だが向こうも真正面からぶつかって来る。このままなら大変なことになる。ならば……、
クルリ。
グレイバーとの衝突の直前、尻尾に遠心力を加えて右に回る。
その勢いのまま尻尾をグレイバーにぶつけて吹っ飛ばす。更に激流で火力が上がる。
「そこだね! 」
キュイーン……、ジュババババババババババ!
私が強打をあたえたその刹那。
そんじょそこらの水龍の比でもない水撃がグレイバーに襲う。
私に放ったときよりも威力が上がっているように見えた。
だが……、
「フガッ! 」
体が一気に吹っ飛ばされる。この感じは風龍のスラッシュウィンド。だがその威力は桁違い! 全身が切り刻まれるような感覚が体に伝わる。
「よっと。大丈夫か? 」
声を聞いて目を開けるとケルラムがいた。どうやら受け止めてくれたらしい。
「とりあえず、鎮痛スプレーとさっき買った薬だ」
「すまない……。ありがたく使わせて貰うぞ」
言われた通りに使うと痛みや傷は無くなった。
「本当はこれで終わって欲しかったんだがな〜」
確実に肉を抉った。骨も砕いた。
その筈だがすぐに再生が始まり、更に回復魔法も使っている。
そしてその隙を隠すため、稲妻と旋風を纏っている。
(ドラゴンの再生力と人間の魔法! その二つをつかうのか! )
この世界で圧倒的に肉体が強いドラゴンと、それに比べて体が壊れやすい人間との関係が均等なのは、手札……魔法の有無があるからだ。
どんな魔法を使うかわからないのが人間よ強みだからだ。
今回の場合、風龍のスキルと雷撃魔法。
二つの力を持ったあんな存在が解き放たれたら世界の均衡が確実に崩れる!
「ケルラム! 先に奥のやつを倒してくれ! ここは私がやるっ! 」
「それは……論外だね。グレイバーはあくまでも奥の野郎を守る事を主軸に動いている。それに……、他にどんなドラゴンのスキルや魔法を使うかわからないのに突っ込むのは、余裕であってもできればしたくない」
「!! 」
ケルラムの言う事は最もだ。守る事だけを集中して作戦を立てている相手は攻め落とすのは難しい。
理由は単純。攻撃しなくてもいいからだ。
反撃にリソースを割かない分、他の事に集中できる。
他にも相手の事が良くわからない状態で行動すると最悪詰みかねない。
だからと言って攻めあぐねると何をされるかわからない。
何をするべきか考えがまとまらない中……、声が聞こえた。
それは私の声でも、はたまたケルラムや奥のやつの声でもない。
目の前のグレイバーが発していたのだ。
〜洞窟前にて〜
「さすが……噂通りだな……」
フワフワ……
「それは、嫌味ですか! 」
パチンッ!
そう言う意味じゃぁない。確かにさっきまで甘く見ていた。ダーメイションだってそうだろう。
信じたくなかった。
水龍のばあちゃんが言っていた通りハクソ……、ハラグが[東の森の果て]に住んでいるなんて思いたくなかった。
[東の森の果て]は世界有数の危険地帯。歩くだけで死体を見つけるのは当たり前。悲鳴の惨響は小鳥の歌。非日常が日常の場所。
何故知ってるかて? 前にギルドメンバー総出で探索したからだ。
見つけた死体の中には一部奇妙な物があった。
[一撃で破壊された死体]だ。
他の部分は全く傷つけずに。
そして前にハラグがとって来たと言う獣の傷痕とナイフと刃型が一緒だった。
今まで[レイクラスパイラル]の連中がハラグを下に見ているのは何を言ってもやり返さないことや、彼自身が反撃や言いたい事をはっきり言わないからだ。
それに今、圧倒的に力のは差がある相手との戦いでまだ決着がつかないのは大きく分けて三つ。
一つ目はハラグの対人経験が無いからだ。
彼はあくまで森奥との獣との戦いが主で対人はほとんどない。
二つ目は相手のオハコで戦わないからだ。
彼の得意戦法は一撃必殺。確実に、体力は最小限に、
[東の森の果て]においてとても理にかなっている。
よって攻撃に迷いは無い。だが手加減はある。私やダーメイションを殺すきは毛頭なく無力化することに注力している。
三つ目は私自身も攻めあぐねているからだ。
ダーメイションはリタイア。ハラグも本気を出していない。
つまり、ハラグの本当の実力も計れず、作戦も戦力も一気に半分減った。
よって今できること……。いつか来る[チャンス]を物にすること。
一番簡単なのは……、
「フェイフルさん! どうして襲って来るんですか! 」
「それは簡単だ……。貴様らがギルドマスターを、ウィルを傷つけたからだ! 」
態度を崩さず、余裕を見せて、話しをする。
「傷つける? 違うよ! ライザムさんを……水龍のばあちゃんを助ける為に協力しているんだよ! 」
「はぁー……。そう言う事じゃ無い……」
「それは、どう言うことですか!? 」
逆転の一手、最高の[チャンス]……それは、
「説明は後からだ! 今だ! ダーメイション! 」
ダーメイションが復活すること!
「……まかせろ……! 」
フォレストドラゴンのダーメイションは回復のスキルが使える。
ハルバードは使えなかったが、確実に重い拳が入った。
だが……ハラグに効いているように見えない。
何故だ?! 確かにダーメイションの体はドラゴンの中ではだいぶ華奢な体だがギルドでトップクラスだ。やっぱり……でもだからって……!
「……! 拳が当たってない……! 」
ハラグの気配が変わった。
「シャボン玉で防ぎました……」
単純な理由。シャボン玉が邪魔をしていた。だが何故破れない?! だが一つわかることがある。
「わかりました。そう来るならもう手加減しませんよ……」
「ダーメイション! 」「フェイフル! 」
「「逃げろ!! 」」
[チャンス]は[ピンチ]になってしまったことだ。
〜洞窟の最奥にて〜
「あいつを……殺してくれ……。僕を楽にさせてくれ……」
それは意外……グレイバーの理性的な哀願だった。
「しょうがない……、少し汚い手を使う。気絶させる方法はできた! 行け! シュガルツ! 」
「ワカリマシタ! マカセテクダサイ! 」
ケルラムの声が響くとさっきまで乗っていたクロールから人型の個体が出てくる。
高速で動くそれは、グレイバーに攻撃を仕掛けた。
グレイバーは確認と同時に向かいかかる。
その目は少し濡れていた気がした。
お互いは素早く攻撃を連続して仕掛け合う。
方や精密過ぎる拳のラッシュ。
方や野生的でどこか苦しそうな乱舞。
だがケルラムがシュガルツと呼んだ個体の方が攻撃が速く、グレイバーは守りに転じているようだった。
まともに喰らえばお望み通り楽になれたかもしれないが、本能的な物で防御耐性をとってしまっているのだろう。
「確かに少しずつ押しているがジリ貧だぞケルラム……。 あれ! ケルラム! 」
さっきまで横にいた筈のケルラムがいなくなっていた。
急いで見渡すと外周を走っていた。
飛んだり跳ねたり、意味の無い行動をしている。
当然グレイバーが許す事は無くケルラムを攻撃する。
「ちょっと! 大丈夫そうならてっだってよ! 」
「! ああ、すまない。今行く! 」
[水龍疾走]!
「シュガルツと一緒に攻撃するからな! 」
「おう! 怪我すんなよ。とゆうわけで、シュガルツ頼んだぞ! 」
「ギョイ! 」
ケルラムの合図とともにシュガルツの行動は私に合わせてくれるようになった。
「ウ……ウガァーー! ……」
グレイバーの攻撃も遅くなって来ている。
だか、最後の足掻きか向こうも全てできることをしてくる。
風龍スキルの烈風による斬撃。駆け巡る竜巻。
魔法の貫くような電撃。引き裂くような落雷。
そんな攻撃もシュガルツが援護してくれるためすり抜け懐に潜り込むことができる。
ズバッ! メギィ!
やっと刃が届いた。
それに続くようにシュガルツの拳が入り込む。
「イマデス! キメチャッテクダサイ! 」
「応! 任されろー! 」
ケルラムが腕を後ろに引くと、グレイバーの周りに紐が起き上がり絡みつく。
「痺れちまいな! 」
その後ケルラムの腕が光って見えた。
「後はこのまま……殴り抜く! 」
素早く場所を変えながら周りながら乱舞を叩き込む。
一瞬にして何発も確実に。
「ぶっとびな! 」
最後はお腹にハッケイを打ち込み壁まで飛ばす。
「……ゴハァッ……」
それでも回復していく、これじゃあ意味が無い。
「そしてこれがっ! 例の策だ! 」
ケルラムは自身の爪で手に持っていた糸をめいいっぱいはじいた。
「ウィルサン。耳ヲ塞ガセテイタダキマスネ」
むにゅ
その言葉の通り、耳に圧力を加えられる。
次の瞬間、空間が歪んだ。
鱗が震えるのを感じる。
やばいことをしている事がなんと無くわかった。
「ッワッ……! ロワッ! グワッ! アッ……」
グレイバーは気絶してしまった。
「ほい」
グレイバーの様子を確認したであろうケルラムは手に持っていた糸を切ると、
「シュガルツ。もういいぜ」
「ワカリマシタ」
耳を離してもらうとケルラムに近づいた。
「えっと……何をしました? 」
「沢山糸を張って音を反響させた。これなら行動不能にできるだろ? 」
えげつなぃ……。
「楽にする、こう言う事ですか? 」
「まあね。なんで……楽にしてほしいのか。わからないままにしておくにはさ、いけない気がしてね」
「なかなかに隅におけないやつだな」
「それほどでも。まあ聞き出しは後にして、先にライザムを助けに行こうぜ」
そう言うとグレイバーを差し向けたやつが逃げた先のドアに向かう。
「シュガルツ、グレイバーのことよろしく」
「マカセテクダサイ」
「ほら、ウィルも行くぞ」
「わかりました」
そう言ってドアに入っていくケルラムの後を追った。
〜洞窟前にて〜
このままじゃダメだと判断した。
無力化させる事は変わりないが……、とにかく徹底的にやる事にした。
最近練習して、ケルラムの図書館で完璧にやり方がわかった。シャボン玉の中の環境を変える事ができるようになった。
図で、感覚で、イメージできた。
本に書いてあった天気の概念を利用して圧力を高くした。
心彩闘法でさらに強度を上げ、模擬戦で知った、シャボン玉を勢いよく飛ばす方法。
確実に骨を砕く。今はそれがやりやすく強力になった。
殺しはしない。だが、もう容赦もしない。
射程距離内……。先に送っておいたシャボン玉に撃つ。
集中……!
ピュンッ!
狙った通りとばす。シャボン玉を破る。そして更に弾く。シャボン玉を破る。とばす。繰り返す。
この流れで身体にまるで鉛球をめり込ませたような鈍痛を与える。撃って撃って撃ちまくる。ダーメイションには効きにくいかもだがフェイフルには効く。
優先的に狙う。
絶対に逃さない……!
いつもやっている。狙うところはわかっている。感情に流されず、でも心彩闘法を出しながら、冷静に決める。
パチンッ!
音とともに影が一人傾いた。
ドサッ……。
フェイフルはリタイア。
倒れたフェイフルの頭にシャボン玉を被せる。
シャボン玉にスタミナを吸収させる。これでさっきみたいな強襲はされない。
「おい……! フェイフルから離れろ……! 」
ダーメイションが助けに戻ってきた。
「おとなしくやられてくれませんか。これ以上やっても意味ないですよ」
確実に倒す。
ダーメイションは突っ込んでくる。
パチンッ!
シャボン玉は破裂する。
「……怯むか……」
わかってる。でもダメだ。口を開けた。
口にシャボン玉を、心彩闘法を出来る限りこめたやつを。
「……ム! 」
痺れるような音がした。
ダーメイションは気絶した。
音さえならなかった。
最後の方はあっけなかった。
「やっぱり、心彩闘法は便利だ。教えてもらって助かった」
……とりあえず二人は洞窟前で縛っておこう。
森に静寂が戻る。
「はぁ。これで安心だ」
これからの事は洞窟前で考えるか。
パチンッ……。
最後に破れたシャボン玉の音が遅れて聞こえたような気がした。
〜洞窟、最奥の研究所〜
「さっさと出て来い! このアンポンタンな白衣やろうが! 」
白衣のおっさんが逃げた先は研究所になっていた。
だいぶ先進的な機械が沢山ある。
案の定、ウィルは驚いてしまっている。
「ウィルさあ、この先もっと驚いく事があるかもだからさ、落ち着いて来いよ」
ご本人は隠しているが疲労を隠している。
こんなんじゃいつかはち切れる。故にこうして元々一人でなんの準備もしないで、単身突撃をかまそうとしていたのだろう。
ハラグも言っていた水龍のばあちゃんが拐われたのもそうだが、他にも理由があるのか?
少し奥から音が聞こえる。
「! ケルラムさん! はやく行くましょう! 」
まぁそこらへんはウィルの口から直接、後で聞こうかな。
少し進むと大きめなドアが見えスライド式に開く。
その先に見える様子は、慣れているやつには大丈夫だと思うが、ウィルにとっては発狂してしまうかもしれない。
俗に言う、ホルマリン漬けとゆうやつだ。
沢山のドラゴン、人間問わずに、身体丸ごと保管されてしまっている。
中にはグレイバーのように人間とドラゴンが融合した見た目の者もいる。
う〜ん、すっごくヘビーな感じだ。
ウィルは目を見開いて固まってしまっている。
「ウィル、下手に壊そうとすると最悪中の奴らが死ぬかもだから触っちゃダメだよ」
ゆっくりと真ん中の道を進んでいく。
青色のネオンな光の線が少し走っている。
少し奥に向かうとさっきの白衣の男、いや半龍半人の何が、三段ほどの階段の上に立っていた。
「………………。! ライザム! 」
思考を放棄気味にしていたウィルが声を上げる。
そのライザムは案の定、カプセルのようなものに閉じ込められている。
「ほう来てしまったか、しかし邪魔しないでくれ。頼む、本当に」
そこにウィルが反応する。
「なぜだ……、なぜこのようなことをするのだ! このっ、このっ、みんなを閉じ込めている物はなんなんだ! 」
その声は恐怖や怒りで震えていた。
「ギルドマスターとして、私は貴様の所業を見過ごせない! 」
荒く息をしている。ところどころ声が裏返ってしまっている。
「ここ数ヶ月間の失踪事件は貴様が原因か! 」
それと同時に男につかみかかる。
「聞いているのか! 貴様は! なぜこのような事をしたのだ! 」
男は抵抗することなく、一呼吸して話し始めた。
「私しかできない……。近い未来に訪れる厄災から……、少しでもみんなの記憶を、精神を、保つためには……」
「それは、少し興味が湧いてきたな」
ゆっくりと階段を登りウィルの斜め後ろに立つ。
「今から私は牢獄に入るだろう。最悪、処刑だろう。それだけの事をした自覚はある。だからせめて、この話だけは聞いてくれ」
「ふざけるな! この期に及んで何をするのだ……」
「落ち着け、ウィル。まずは話しをしてもらおうか、考古学者のミトルク君」
「何?! 」
「話が早くて助かる。そう私はミトルク。ここ最近の事件の最初の犠牲者になって、犯行アリバイを作った。単純だが上手くできていただろう? でもなぜわかった? 」
ケルラムは頭を少し下げて、
「…………テキトウ言ったら当たった……! 」




