ぼっちに優しい物語
昨今、自称モブ・自称ぼっちの主人公に『だけ』優しい物語なら山ほどあるんですけれども。
弱くもなければ不遇でもない主人公が、ボク弱者ですボク被害者ですって顔してチート無双してるのとか。
モブ異性には目もくれず、お姫様や王子様を狙ったり、ハーレムを狙ったりして、耐え難きを耐え、忍び難きを忍んでる顔をしてるのとか。
あげくのはてには、敵国のモブとみれば大虐殺してボク英雄。
ちょっと待て。だいぶ待て。いろいろ待て。
まがいものばっかりだぞ。
もしかして、転生チートの悪役令嬢が、モブを一途に愛し抜く物語って、『悪役令嬢と十三霊の神々』だけ……?
古きよき時代においては、割と王道だったような気がするんですが。
他にない斬新な物語! なんてつもりじゃなかった。
だけど、最近、全然みない。
主人公が女性の逆玉の輿。一途な純愛物語。
異世界転生としては他になかったりするんでしょうか。
何のための転生チート。何のための完全攻略ガイド。
全世界のモブを救うためだよ!(`・ω・)9
なんで、どの作品の転生者もモブですがって言いながら美少女やハーレムを狙うんだ。
そこらへんの村娘、たった一人の愛を得るために全力! 難しい!
それでこそ応援したくなりませんか!?
頑張れモブ! 負けるなぼっち!(`・д・)9
デゼるんはまさに、そこらへんにいた町人Sとの愛を守るために全力! 難しい! やってるわけですが。
さいふぁ様って実は、デゼるんに出会うまで、モブな上にぼっちだったんだよ。
子供だから、あんまり、自分が不遇だという自覚はなくて、ふつうのつもりだったけど、うすうす、ふつうじゃないかもしれないと気づき始めていた、十歳の春。
いじめに遭ってるのと、家に多額の借金があるのはわかっていたから、デゼるんに同じクラスに編入すると言い出された時には、にわかに恐怖を覚えて、反対したあの日。
がっかりされるんじゃないか。嫌われてしまうんじゃないか。
でも、デゼるんはがっかりしない。嫌わない。
同情でもあわれみでもなく、さいふぁ様が素敵で可愛くて優しくて大好き。
ふりむいて。だっこして。傍にいて。
神の祝福を授かった絶世の美女に転生してるのに、ちょっとでも長く町人Sの傍にいたくて必死。
あんまり一緒にいたら嫌われないか、邪魔にならないか、でも一緒にいたい、日々これ葛藤。
町人Sには何の地位もなく、財産もなく、容姿も端麗ってわけじゃない。
神様がサイコロ振って、庶民パーツで創造したモブだもの。
だけど、出会ったのも、惹かれ合ったのも、きっと、偶然じゃない。
悪魔を恐れず、愛さず、何者にも征服されない、世界ただ一人の邪神キラー。
悪魔の言葉がかの少年の心に響くことは決してない。
逆はあるかもしれないね。
だから、邪神の方が彼を恐れる。死に物狂いの連続攻撃、すべて無効。
ついに、悪魔は札を切り尽くして撤退する。
そんな物語。







