過剰貸与者
「女を連れてくるとはレイもモテるんだねえ」
「うっせえ」
ニヤニヤとプテラ・マギニクスが好奇心を向けた。細身の長身でカールした茶髪が特徴的なレイの友人だ。ミソラとぴったりとくっついていることを観察して彼は肩をすくめる。
「ニンフィがみたら卒倒しそうだよ…」
「あいつは関係ないだろ」
「マジで言ってんのか?」
「違うのか?」
奇怪な友人の発言にレイは怪訝そうな顔をする。
ダメだこいつ、と右手で額を押さえるプテラ。彼の行動でレイの顔がいっそうアホらしくなっていた。
「それより紹介する。ミソラ・コムラだ」
「初めまして」
ミソラはレイから離れて深々と礼をする。
「ミソラ・コムラ。16歳女性。身長155センチ、体重は……マル秘情報としておこうか」
「何で私のことを知っている?!」
ミソラは目を丸くする。予想どうりの反応が返ってきたのかご満悦な友人に呆れてレイが口を挟む。
「権能だ。こいつはヘルメスの神官なんだよ」
「そ。それも過剰貸与者だよん」
キランという効果音が出そうな勢いでピースする。
「過剰貸与者って何だ?」
小首を傾げるミソラにプテラはノリノリで説明する。
「説明しよう!過剰貸与者とは神官になる際神から賜った権能が突然変異を起こしてしまったものである!!」
「お、おう…わかった」
ミソラが説明中にプテラから少し距離を取ったことは言うまでもない。
「さて一通り自己紹介が済んだということで本題にいこうか」
「そうだな。プテラ、頼みたいことが―」
「ミソラの情報だろ」
レイの頼みも聞かずプテラが即座に彼らが来た目的を言い当てる。彼の目には先程のいい加減な空気からは想像つかないほどの真剣さが宿っていた。