天空の手がかり
α区ビル「パルテナ」
地上70階地下20階に及ぶ超高層ビル型商業施設でこの国のランドマークとして老若男女問わず人気のスポットである。中には大手ブランドのブティックやレストラン、最上階には展望エリアもある。
レイはオリュンポス案内の締め括りとして島内が見渡せるここを選んだのだった。
「この島が小さく感じられるな…」
「だな」
ミニチュアになった商店街を眺めているミソラの瞳には柔らかな光が灯っていた。
「…しかし土地勘がないとどこに何があるのかわからないな」
「UUPの機能にあるぞ。使ってみるか?」
レイはズボンのポケットからスマホを取り出しミソラに手渡した。
「…ヘイシリ」
「?シリ?」
「シリジャネーヨUUPダヨ」
「ミソラ、シリって何だ?」
ミソラの発したまじないのような言葉にレイの疑問センサーが反応する。
「……そんなこと言ったか?」
「えっ?」
場の空気が一瞬凍る。ミソラと目が合うと彼女は心底意外そうな顔をしていた。レイもおんなじ顔をしていたのだから鏡合わせのような感じになっている。
「シリって何だ?何を言っているんだ?私の記憶か?」
「落ち着けって。記憶の手がかりが見つかっただけでも収穫だろ?な?」
頭を抱えて錯乱しかけているミソラをなだめるが、止まらない。夕日に照らされている彼女の顔は赤いように見えたが見開かれた瞳からは恐怖の感情しか映っていなかった。
5時を知らせるチャイムがゆっくりと流れていく。
「……今日はもう帰ろう。家でゆっくり休めよ」
未だに何だ、何なんだ、と呟き続ける彼女の手を引いてレイはパルテナをあとにした。
鏡合わせのように二人の顔には猜疑と恐怖が混ざっていた。
どうも紙村滝です。
休日ってなにも考えられなくなってボーッとしちゃいますよね。やる気がx軸にくっつきそうです。
次回から少しずつミソラの素性を探っていきます。乞うご期待!