痴話喧嘩を察知する能力の欠如
「次はγ区なんだけどな。ただの住宅街だから何も面白くないんだよなあ」
ニンフィと別れたレイたちが乗っているのはγ区へ向かう路面電車。昼時のため乗客が少なくレイたちは座席に座ることができていた。首筋に当たる日差しが暑い。車内は冷房が効いているがじんわりと汗ばんでくる。次の予定を相談しようとレイが顔を向けるとミソラも唇に手を当てて何か考え込んでいるようだった。
「やっぱり住宅街を見たってつまらないよな。このままこれに乗ってβ区に行くか?」
「ああ、そうだな」
ミソラの口からで適当な受け答えが聞こえたかと思うとまたすぐに閉じてしまった。よほど真剣に考えているらしい。
「β区は農耕区画だ。オリュンポスの食料全てを賄ってる。自然が多くて綺麗なところだよ」
「…ああ、そうだな」
「………こっちの話また聞いてないな?」
「いや、聞いているぞ」
「じゃあ今言ったことを言ってみろよ」
どうせまた聞いてないのだろうとレイが軽く挑発するが、
「β区は農耕区画なのだろう。自然が豊かで綺麗なところだ」
「本当に聞いてたんですねー!疑ってすいませんね!」
こんなやり取りも束の間、ミソラはまた思考の海に漕ぎ出してしまった。
静寂が続くこと三駅。太陽光で首筋がウェルダンになりそうだ。なおも彫像のように動かないミソラに遂にレイが痺れを切らした。
「……ミソラ、さっきから何考えてるんだ?」
「………」
黙り続ける彼女に二言目を言おうと口を開いた瞬間、
「やはりあの女はむかつくな!」
ミソラはキッと誰もいない前方のシートを睨み付ける。
「はい?」
ポカンとするレイをお構いなしにミソラの熱弁が火を吹く。
「あのニンフィとか言う女は何だ。少し見た目が良くてレイと幼なじみだからって何であんなに上から目線なんだ。あーもー嫌いだあいつは!」
「さっきから考えてたのそれだったのかよ?!」
「次あったらこちらも相応の報復をしてやらねばな」
「落ち着けって。ここ一応電車内だから!」
ニンフィをなぜか敵視しているミソラをなだめているうちに路面電車は目的の駅に到着したのだった。
どうも紙村滝です。
金欠ですね。新しい本が買えません!読みたいのに。。
次回、超田舎っぽくなります!
乞うご期待!(?)