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私女神、視察に言っただけなのに…魔王につかまっちゃいました

作者: 花木 満

 あるところに

 銀髪、色白、蒼い瞳という 美 という文字が似合うけれどいまだ結婚できない魔王がいた。


 そんな魔王は、神に頼まれ人間と魔人の争いを見事におさめた実力者。しかしどうしても得られなかった何千年も生きる自分と共に時を過ごしてくれる妻を創造の神にお願いすることにした。



 妻を用意する約束なんてしなきゃよかった…。おさめてもらった創造の神は、何千年も生きる女なんて、いるの?と頭をねじりよじり考え…。自分の娘、癒しの女神ユレーネを魔王の嫁として送り出すことにきめた。



 娘を嫁に出したくない気持ちもあり。

 魔王の嫁となるユレーネが魔王の嫁となることを、な・に・も・知らせていなかったことは置いておくことにしよう。




 ただの世界視察だと聞かされていた癒しの女神ユレーネは空に浮かんだ。

 澄み切った空気。青い空。

 美しい世界に心を踊らせ瞬きをし、にっこりほほ笑むと、目の前に銀髪で蒼い瞳をした美しい人の顔が目に映った。

 この世界に知り合いなどいない女神。首をかしげる。


 「美しい貴方の名前を教えて頂けませんか?」


 ずいぶん唐突に聞かれたことだったが、純粋なユレーネはそんなこと気にしない。


「ユレーネと申します。」




 ユレーネは【ます】を言う前に魔王に連れ去られた。状況把握ができないが高度の魔術により意識を強制的にシャットダウンさせられたことはわかる。さて、どうしたらいいのか…。まぶたを閉じ、今にも失いそうな意識で思う。


 ちなみにその時の魔王の耳はほんのり赤かったという。




*****************************************************************************


「ここは?」


ユレーネは見慣れない天井を目にし驚きの声を上げる。


「魔王城だよ。」


低くとも響く美しい声が聞こえた。

部屋にその男以外誰もいないことから見て、口を開いたのは銀髪の男のようてある。


「そうなのですか、教えてくださってありがとうございます。貴方のお名前を伺いたいのですが・。」


まずはこの男から話を聞きたい。

わたくしは蒼空にいたはず、なのにここにいるのだから。


「私の名前はフォルト。この城の城主。」


この城の城主。。。。。。。。



城主。




もしかして、



「あなたは。・。・。・。。・」


「正真正銘魔王だけど…どうした?」




魔王、まおう。マオウ。。・・・。・・・。・。・。・。。・。・。・。




視察に来たら、癒やしの女神ユレーネ。魔王につかまっちゃいました、。、。、。、。、。、。、。、。、。







「ユレーネ、ユレーネ。」

 自分の名前を連呼されまぶたを開けると、フォルトと名乗る男が私の目の前にいた。

 シャツのボタンは第2ボタンまで開いていて…鎖骨くっきり、色気だだ漏れ。


 てんてんてん。

 ニッコリじゃないのよ!フォルトさん!  

 そんな格好されていると恥ずかしくなっちゃうじゃない。


 待て待て私、落ち着くのよ私。

 こほん。まず状況を整理しよう。

 私は、このフォルトさんに連れ去られた。

 そしてこのフォルトさんと結婚するっていう事実を知らされた瞬間いきなり、その…ディープなキスをかまされて…。

 頭がぽわ〜んとして気を失ったんだっけ。


 やばい。詰んでるかも。

 気を失っちゃいけないときに失ったよね。



「ユレーネおはよう。気を失って、そのまま寝ちゃったみたいだね。よく眠れた?」


 きらきら〜。


 なに?人からきらきらって出るの?

 違う、この人魔王だった、種族が人でも魔人でも常識で考えちゃいけないんだった。

 ??ん??ちょっと待って〜、その伸びてくる腕が私の腰に…。やめて、変なとこ撫でないで。ちょ…。耳もとで「昨日はキスだけで気を失っちゃったね」ってつぶやくのやめましょう。ね?恥ずかしい。二人だけでも恥ずかしい。


「そんな真っ赤になっちゃって…。ごめんごめん。朝からからかい過ぎちゃったね…。朝食を用意させよう。口に合うといいのだけど。」


 よくわからないが高速で朝食の準備が進んでいくことはわかる。

 123と数えればあっという間にセットOK。

 私もフォルトさんの魔法で一瞬でお着替え完了。


「あ…」


 驚きすぎて声を失うかも。あ、だけしか言えなくなったらやだな。

 フォルトさん、間違いなく笑うと思う。なんか、そんな気がする。


「さあ食べよう。結婚式は一週間後。ドレスの準備もあるし結婚指輪も準備したいしね。」


「結婚式?」


「そうだよ。私達は結婚するのだから、当たり前だよ。ほら早く食べて。食べないならあ〜んするけど。」


 結婚式、実感0だけど結婚するのか…。

 うん、とにかく食べよう。

 あーんをしてもらったら食べられない自信がある。主に、フォルトさんが美形過ぎて、きらきら過ぎて顔を見られないって感じだけど。


「いただきます。」


 口に幸せが広がる。美味しい。

 料理長さん凄腕決定。


「ユレーネ可愛い。君を食べてしまいたくなる。」

 フォルトさんに言われたそんな言葉をスルーできるくらい美味しい。

 そしてなぜかにこにこ笑ってるふくよかなおば様の視線が…。

 私とフォルトさんを見ているようで…。いたたまれない。

 




 執務に行ったフォルトさんに手を振ると入れ違いでやってくるのは、先程にっこり笑っていたふくよかなおば様。


「本日よりユレーネ様付きとなりましたマレーナでございます。神界からいらっしゃいましたことは承知しておりますのでご安心くださいね。早速でございますがお支度をさせていただけますか。」


 相手が落ち着いているから私も一安心。

 優しそう。



「マレーナさん、よろしくお願い致します。」


 そう返事をするとまず湯浴みにと廊下を歩く。


「こちらです。」  

 

 マレーナさんにつられて入ると4人の侍女さんたち。

 

「ユレーネ様、湯浴みに入らせていただきます。」


「はい。」


 そう返事をしたら早かった。

 先程お着替えしたドレスのチャックをしゃっと下げられ湯浴みスタート。


「ユレーネ様、身を任せてくださいな。」


 そう言われ身を任せると頭から足まであわあわもこもこ状態。顔はかろうじてもこもこじゃないのでマレーナさんたちとお話をしながら湯浴み。



「ユレーネ様、見てください。ほら。」

 そう言われ見せられる大きな鏡。映る私は全身泡もこスーツを着ているようで…くすっと笑ってしまった。


「ユレーネ様は神界にいた際は湯浴みはどうなさっていたのてすか?」


「そうですね…自分で洗っておりましたよ。昔は洗ってもらっていたのですが、自分も忙しい身のため時間短縮を考えたのです」


「まあ、そうだったのですか。ではゆったりしていただけるよう頑張りますね。」 

「疲れをすべて湯浴みで落としてしまいましょう。」


 侍女さんたちの腕が良過ぎて…。もう、それはそれは気持ちが良い。

 温かいお湯に全身を浸からせてしてもらうマッサージ。

 体中がぽかぽかで。



 少しのぼせてしまった私が連れられ湯船から上がると採寸表とメモリ付きの紐を持った方々が勢揃い。

 ありとあらゆる場所の採寸をしていただきました。

 ええ。足の指の長さから耳たぶの厚さまで。恥なんか途中でどっかに行きましたよ。

 

 まだまだ終わらない魔王の婚約者(結婚していませんので)一日目。湯浴み、採寸が終わったら今度は隣のお部屋に連れてこられる。


 待っていてたのはメガネをかけたおじいさま方。ペンと髪をばっと目の前に置いたと思ったらピッと笛の音。

 

 いったいなにかしら。衝動的に裏返されていた紙をめくるとざっと1000問はあるテストが登場。

 視線を上げると解いてくださいとのこと。


 神界の仕事量なめないでくださいね。

 私キャリアビーナスと呼ばれていたのよ。

 あら、結構かんたん。

 らくらくいけそう。


「解けました。」

 見直しもしっかり行いましたよ。

 ミスなんて許されない世界で生きてますので。



「満点です、ユレーネ様。」

 



 その声を聞くとまともや移動(強制連行)。

 移動中に素晴らしいと声をかけてくれるマレーナさんによると次で終わりらしい。

 

 部屋に入るとテーブルが1つ。

 


「お作法のチェックをさせていただきます。」


 入ったときから試されるお作法。

 爪の先まで美しく、優雅に。まるで仙女が微笑みかけるように。




「か、完璧です。」


 

 やった。クリアした。終わった!

 湯浴みと採寸だけで半日かかったからね。もう夕方、夜よりの夕方。

 今日は一日早かった。恥を感じるのも多かった。

 そうね、精神的にやられた部分がある。

 色気だだ漏れの方にやられましたよ。ええ。心、ハートを優しーく色気でなでくりまわされて…。真っ赤に染められました。


「ユレーネ様、フォルト様がいらっしゃいました。」

「あ、はい。」


 ここは二人共有のリビングみたいなところだからね。来ることに不自然感なし。


「ユレーネただいま。今日はユレーネに早く会いたくて頑張って執務を終わらせてきたよ。」


「まあ。」

 そうなんだっていう感じ。

 でも、朝とは違う疲れた顔つきから、多分本当に頑張ってきたんだって感じる。


「ありがとうございます。」


 もしも本当ならきっと大変だったと思うから。 


「ユレーネ…。可愛すぎるよ。」


 抱きしめられた腕はあくまで優しい。

 だけど意外にも厚い胸板に、あっ男の人だ。って唐突に思ってしまった。

 フォルトさんはただ抱きしめてくれただけなのに…。

 そんなことを考えてしまう私が恥ずかしい。


「ドレスも似合ってるね。かわいいよ。」

 

「ありがとう、ございます。」


 いつかフォルトさんの可愛いを素直に受け入れられる日が来るのかな。

 ふとそう思って、私がフォルトさんとの結婚を大して嫌だと思っていないことに気がついた。



 まだ、正直恋とは言えないし、愛とも言えない。

 だけど今日。

 小さな新しい気持ちが芽生えたのは事実だ。





「ユレーネ様!起きてくださいまし。」


 重いまぶたを開くとマレーナさんの顔が見える。マレーナさんに起こされるということはすなわち朝ということ。

 だけど。いつもならカーテンの隙間から溢れ出る太陽の光が見えない。

 


「まだ、朝じゃないんじゃ…。」

「ユレーネ様!今日は結婚式でございます!」

「結婚…式。」


 寝ぼけたまま、まずは湯浴みと急かされ移動。


「湯殿まで行きましたら寝てもいいですから。細心の注意を払いますし。ですから移動だけ…。あと少しでつきますから。」


 寝ぼけた耳にはそんな言葉は入ってこない。

 昨日は早く寝たはずなのに…。眠い。


「着きました!あとはお任せください。」


 もう眠さには勝てない。

 と、寝ようとしたけどむにゅむにゅと揉まれるツボが的確すぎて…。

 神経が覚醒していく感覚を覚え、お目めぱっちり。完全に目が覚めた。


 湯浴みが終わっても化粧やらマッサージやらで休みは一向に訪れる気配がない。

 髪の毛セットの途中にサンドイッチと栄養バランス抜群のスムージーをお腹に入れて、美しいウェディングドレスに体を滑り込ませる。


 私の体にぴったりと合うドレスは少し動くだけでもキラキラと美しさを放ち、既に私を魅了している。

 正直なところ、このドレスの美しさに自分が負けないか不安な気持ちがあるけれど…。この一生に一度しか着れないだろうドレスを今着れていることに喜びを覚えていて。嬉しい、美しいドレスは気分を明るくしてくれるみたいだ。



 花嫁は結婚式で新郎と出会うまで男性に顔を見せてはいけないらしく、私の周りには男性0。

 バージンロードを歩くためにお父様も来ているとの連絡を受けたが決まりに乗っ取りまだ会っていない。


 マレーナさんが口を開く。


「ユレーネ様、お時間でございます。」


「はい。わかりました。」


 案内されながら結婚式場へ向かう途中、私はフォルトさんとの出会いやまだ数少ない思い出を、思い出していた。


 出逢ったときはいきなりのキスで驚いて気を失ったっけ。思えばあれがファーストキスなんだよね…。女なれしてそうなフォルトさんには絶対言えないけど、あのときは恥ずかしながらドキドキしてしまった。ただのキスされどキス。

 

 その翌日も、そして今日に至るまでずっとフォルトさんにドキドキさせられた。  

 自分でもちょろいなと思うけど、私は今、素直にフォルトさんを好きだと思うことができる。言うことはできなくても彼が好きだと。


 たった一週間で人の気持ちは簡単に動くらしい。いや、違う。


 私の心が彼に動かされたんだ。



 この扉を開けたら、育ててくれた父がいて、その向こうにはフォルトさんがいる。

 

 創造の神の父にお願いして私を嫁にする魔王様。始めはどうかと思ったけど、今ではお願いしてくれてありがとうと思っている。

 あの日、本当に視察に来てよかった。




「扉をお開けいたします。」   


 私の名はユレーネ。癒やしの女神です。

 空に浮かんだ瞬間に連れ去りに会いまして、今日。

 連れ去られた相手(魔王)と結婚します。


 


 

 

 


 

 


 読了ありがとうございます。

 

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