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解離性フラジール  作者: 雪時雨
第一章 ペンフィールドの小人たち
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残酷な世界に抗う者たち

冬樹たちが目的地へ向かうと、そこへはすでに5つの影があった。2人は前の作戦会議にも参加したよく知ってる人、2人は数回見たことのある顔見知り程度の、もう一人は初めて見る人だった。冬樹が目的地へ着いてその輪に入ろうとするなり、顔見知り程度であまり話したことのない、いかにも若々しくてツインテールにした女が、ブーブー文句を言ってきた。

「聞いてくださいよ!冬樹さん!慎太郎さんったら、全く話に乗っかってくれなくてぜんっぜん面白くないんですよ!冬樹さんも何か言ってやってくださいよ!」

うん…え、俺?顔は見たことあるけど…困ったなぁ。そこまで話したことなかったから名前とか全然覚えてないや…。慎太郎さんは今聞いて思い出したけど…。えと…、JKで学校で人気とか言ってたな…。さ、さ…さく……さくや!阿武隈咲夜だ!思い出したぞ!で、えと…なんて言われたっけ?

名前を思い出すことに注力したためか、阿武隈の質問への返答が疎かになってしまった。すると阿武隈は、自分の意見に同意されてないと思ったのか、よく話を聞いてくれなかったためか、近くにいた橋立の胸へ飛び込んでわざとらしくわんわん泣いた。

「はーしーもーとーさーん!男子がみなひどいですー。うわーん。」

するとその様子を見て麻田慎太郎は不満げにものをいう。

「第一、咲夜さんはOPTをわきまえないんですよ。いちいち虫がついただの、大きい声で化け物がいたなど。」

それを聞いて、さらに阿武隈が頬を膨らませて何か言おうとしたところで、指山が仲介に入って場を丸めた。

「まぁまぁ、お二方とも落ち着いてください。これから最後のボスを倒しに行こうとするときに仲間割れしてはいけません。しっかり力を合わせましょうよ。」

そのゆっくりで穏やかな年上の声を聞いたためか、2人は言い争いをやめ、戦闘の準備を始めた。その後、橋立が冬樹の方へ近寄ってきて何か話しかけてきた。

「冬樹君巻き込んでしまってごめんね!咲夜ちゃんああなったら言うこと聞かなくて…。」

「別にいいですよ。それに橋立さんが謝ることじゃないですし…。」

話を聞くと、警備部隊は3チームに分かれて活動していたらしい。その班分けが橋立さんと指山さん、阿武隈さんと麻田さん、残り1人で1チーム。橋立さんと指山さん、1人のチームのところは特に問題もなく、あぶれてきた敵の処理を行っていたのだが、阿武隈&麻田チームは2人の相性が悪いらしく、ずーっともめていたらしい。そこへたまたま合流した橋立さんらがずっと泣きつく阿武隈さんを見て、阿武隈さんの面倒を見ていたという具合だ。だが話を聞いても特に麻田さんが悪いということではなく、一方的に阿武隈さんが騒いでいるといった印象だった。まったく、橋立さんもお疲れさまである。


ここで新しい登場人物を紹介しておくと、1人が阿武隈咲夜(あぶくま さくや)という解離性遁走症を患っているアタッカーのロールを持つ女子高生だ。彼女はよく他人に絡むことが多く、結構めんどくさい性格である。しかし持ち前の明るさと、そこそこかわいいルックスからも学校では人気があるらしい(本人談)。女子高生と言うこともあり、本部での夜の会議に参加しないことも多いが、戦闘当日の夜は協会のものと協力して無理やり家から抜け出しているらしい。以前に一度顔を合わせたことがあるが、それ以外はほとんど面識がなく、また前回は彼女の都合で参加できなかったため、今回が彼女との初の戦闘になる。

もう1人は麻田慎太郎(あさだ しんたろう)。彼は解離性昏迷症を患っており、ディフェンダーのロールを担っている。彼自身がアクティブな人間ではないので、何かにつけて言い訳をし、めんどくさがって会議に参加しないことが多い。そのため面識は前々回と前回の戦闘の2回しか面識はなく、正直どのようなことを考えているのかもわからない。面倒くさいことが苦手なので、確かに阿武隈との相性は悪そうだ。

最後に今この場で初対面の男、弥栄川斎(やえがわ いつき)。彼は解離性健忘症を患っており、スナイパーのロールである。彼はスナイパーでありながら、前線で堂々と戦う極めてまれな人間である。しかしその行動には理由があった。あとで聞いた話だが、彼は桜園が入ってくる前はこの日本解離精神協会のメイン火力だったそうで、傲慢で偉そうにすることが多々あったが、協会に一目置かれていた。しかし桜園が加入したときに、圧倒的なフィルスマ技術力・一発一発の火力の桁の違い・装填速度の異常な速さなどからその座を奪われてしまい、メイン火力として前ほどの脚光を浴びることはなくなった。そして2位に落ちたのが気に食わなかったのか、それまで樹木が務めていたサブスナイパーの座に就くことを拒み、こうして一人で黙々と活動を続けている。

基本は人手不足なので、解離性協会に所属している解離性障害者全員が参加することが望ましいが、中には今回の戦闘には来ていない人もいた。


ざっとみんなの様子を見て、少し会話を聞いていると篠原からの通信が入ってきた

『各自持ち場に着いたようだな。それでは説明を開始する。敵はオブザーバー1体に、半壊したサボタージと無傷なものが1体ずつ、ガーディアンが21体、アグレッサーが8体、コントローラーが2体。他は先ほどの攻撃ですべて死亡したとみられる。まずアタッカー部隊+1~2名でガーディアンとコントローラーを攻撃し、タクティカルとディフェンダーでサボタージの攻撃をしっかりと受け流す。そして北西の山に移動したスナイパーが隙を見てサボタージとオブザーバーを攻撃するというような具合だ。何か意見はあるか?』

すると待機しているメンバーの中から、ボロボロの黒いマントに身を包み、やややつれた顔をした30路のおっさん、弥栄川が意見を言った。

「そのアタッカーの+αは誰が行うんだ?適任がいないなら俺が出るが。」

『それに関してはそちらで決めてもらって構わない。だがバランスはしっかり考えてくれ。他に意見がないなら報告は以上だ。健闘を祈る。』

そういって篠原が通信を終えると、残されたメンバーはこれからどういう役目で分配するか話し合った。と言っても各自のロールに沿って別れるだけなのだが。アタッカー部隊が幸助、霧島、阿武隈、ディフェンダー・タクティカル部隊が橋立、指山、麻田、アタッカーを支援する援護部隊は弥栄川と冬樹となった。特に異論も起きずに軽く作戦内容を確認した後、各員は今戦闘最後の後詰に入っていった。



他にも敵の残党がいないか注意しながら進んでいくと、少し開けた場所へ出た。そしてその目の前には膜票の敵、オブザーバーがいた。オブザーバーを倒すことができればゲートが閉じ、増援によるさらなる被害を抑えたり、敵の統率を瓦解させて戦力大幅ダウンも狙える。しかし、オブザーバーの前には精神妨害電波を発するサボタージ、さらにそれを囲むようにガーディアンが配置されている。そして敵がこちらに気づくなり、バラバラに散らばっていたコントローラーとアグレッサーがすぐに隊列を形成し、迎撃戦としていた。

とても迫力があるな…。前回は順序を飛ばしてさっさとサボタージを破壊したけど、今回はサボタージ以外にアグレッサーやオブザーバーがいるため、前回のようにうまくはいかない。攻撃・防御の態勢を整えつつ、しっかりスナイパーの攻撃を入れていかなければ…。

いよいよ最後か、と緊張が走って冬樹の手には思わず汗が滲み出た。まわりを見渡してメンバーを見ると、幸助や指山などのベテランメンバーはいつものごとく処理するだけだと少し余裕の、しかし真剣な表情を見せている。確かに今回は雨で敵の分布が少なかったことと、一網打尽にしたことで戦力が分散しておらず、一点火力集中を仕掛けることができる。だが一瞬の油断が命取りとなる。そのことを念頭に置いて戦いに臨まなければならない。

しばらく隊列を整えた敵と、メンバーの間で少しの間沈黙が流れたが、その開戦の火ぶたは一つの砲撃音によって切って落とされる。後方の茂みに待機していた弥栄川のフィルスマ、トランスペレントレイ[透過貫通]を発動し、敵の半壊しかけているサボタージの脚を狙って射撃したのだ。

トランスペレントレイ[透過貫通]は、しばらくすべての物質を透過した後、周りの温度を吸収しながら爆発するスナイパーのフィルスマだ。

見事サボタージの脚に直撃した弾は、その脚を破壊するだけでは飽き足らず、周辺の温度を瞬時に零度以下まで下げ、サボタージの円盤状の体の地面側についている砲塔を凍り付かせて動作不能にした。そして半壊していたサボタージは、もともと4本のうち3本あった脚がさらに攻撃によって2本になったため、バランスを崩して転倒した。

流石スナイパーのフィルスマだ。そこら辺にいるアグレッサーの数百倍以上もある強度の脚を吹き飛ばした。そして脚の関節のような個所にピンポイントで当てる技術もすごい。これが元日本解離協会トップの威力か。

しかし冬樹がのん気に感想している場合ではない。それに続いて幸助・霧島・阿武隈が切込みにいき、次々とアグレッサーを屠っていく。すると敵のサボタージがこちらを向き、その1mほどはあろうかと言う口径の砲をこちらに向けて砲撃してきた。凄まじい発射音と共に巨大なプラズマを纏ったような弾丸が射出された。それがアタッカー部隊に着弾する…ことはなく途中で軌道を変えて指山の方へ飛んでいく。どうやらアトラクトガイザー[誘導煎盾]を発動したようだ。また、後ろではその背中に橋立が手をついている。おそらく橋立の[脳力加速]を指山にかけることによって、フィルスマ効率的な切り替えや、弾道の正確な目測を立てているのだろう。そして弾丸の軌道を変えた後、すぐさま指山はそれを解除して自身が持っている巨大な盾にアンチエロードバリア[耐侵食壁]を発動させる。するとその盾の中心に見事に弾丸が直撃した瞬間、バリバリバリバリという破裂音と眩い閃光があたり一帯を埋め尽くした。極めて近距離にいたせいか、先ほどのエレクトンスパークと比べて同等かそれ以上の音の破壊と、閃光の眩さと、空気の振動があったように感じられた。心配になってすぐに指山の方を向くと、その手に持つ盾にはまだ弾丸が突き刺さっており、今も攻防の戦いが繰り広げられている。しかし弾丸の威力が激しいのか、徐々に指山と橋立が押されていった。すると麻田が自身の槍を内側から盾に突き立て、エネルギーパーティクル[活性分散]を発動させる。すると、直接弾丸に触れていてその影響で光り輝いているように見えていた指山の盾だったが、同様の輝きを麻田が持っていた槍も発し、指山らが押されるのが抑えられた。そして、指山が一唸りして盾を前に押し戻すと、莫大な光量をまき散らしながらプラズマの弾丸は消散した。それ同時に麻田が槍を地面に突き立て、その直後、やりはボロボロになりながら崩れ去った。

そして指山は未だに呼吸を荒くしながらも、感謝の意を述べた。

「はぁ、はぁ…。二人とも、助かりました。」

すると橋立と麻田が同様に息を荒げながら答える。

「はぁはぁ、今のはかなりきつかったですね…。」

「ふぅ…、槍は消耗品と思ってるので、別に構いませんよ。」

自身の放った弾丸が全く効果を示さなかったのが気に障ったのか、サボタージは再び砲撃しようとその砲にエネルギーを溜め始めた。流石に二連続はキツイが覚悟を決めるしかないと、腹をくくっていた3人であったが、しかしそれはそのサボタージの胴体の盛大な爆散によって事なきを得る。そして通信が入る。

『サボタージ一体撃破。クール終了まで10分。』

その声の主は桜園だった。どうやら先ほどの大規模なフィルスマのクールタイムを終えて、小規模な[要素崩壊]を放ったらしい。そしてそのクールタイムは小規模を放ったためかとても短く、非常に頼もしい存在だった。その通信を聞いて弥栄川はチッ!と舌打ちしながら、ひたすら自身のクールタイム45分を苛々しながら待つ。

アタッカー部隊の方を見やると、アグレッサーを追い詰めていたが、後方へ撤退してコントローラーの回復を受けていた。代わりにガーディアンがアタッカー部隊に立ちふさがり、追撃ができない。これまでの一連の戦闘を見て冬樹は思った。

チームでまとまって防衛するときはああするのか…。ディフェンダー部隊へのヘイト分散した後の桜園さんの狙撃のタイミングも素晴らしいし、アタッカー部隊の猛攻によってディフェンダー部隊は遠距離攻撃だけに専念できる…。チームが一つにまとめっていてすごい。では自分もしっかり頑張らなくては…回復しているコントローラー、あれを倒せばアタッカー部隊が有利になるかな。

冬樹は銃を前に構え、[脳力加速]と[情報変換]を発動させる。加えて自分の弾丸に[高密度化]を加えて、弾の威力を底上げしてから確実に仕留めにかかる。射出された2発の弾は見事に予定通りの射線を通って、コントローラーの喉元をぶち抜いた。すると傷が回復したアグレッサー4体がこちらに気づいたのか、冬樹の方へ向き直り、前衛のアタッカー部隊を無視して冬樹に突っ込んできた。しかし冬樹はこれに落ち着いて対処する。まずは敵の肩を狙って片腕を吹っ飛ばし、さらに速度が減衰したときにもう一方の肩も吹き飛ばした。すると弱弱しく飛行するようになり、問題にはならなくなった。次に地面に近い鎧の一部を重点的に攻撃した。すると射撃を受けるたびに反動で体が少しずつ片側にのけぞっていき、そのたびにアグレッサーの速度が落ちていく。そして速度が十分に落ち切ったときに、狙いを定めて首元を撃ち抜いた。3、4体目は前者の2体の教訓を学んでか、ジグザクに動きながら接近してきた。冬樹はそれらの肩を狙って撃つが、その弾道は外れて鎧の中心にあたり、少しへこませて弾かれた。

クソッ!全然弾が当たらない…!

その後何発も射撃したが焦っていたせいもあり有効打は与えられず、ついに10m手前まで接近していた。もうダメか、と防御用のフィルスマを発動して受けの態勢に入ろうとした時、そのアグレッサーの頭が吹き飛んだ。しかしよく観察すると、後方にいた最後のアグレッサーの頭部も同様にはじけ飛んでいる。

はて何が起こったのか…?

とすこし思案したのち、その解が横にあることに気づいた。

弥栄川はふぅ…と一息つくと構えていた銃を下ろした。そしてこちらの視線に気づいたのか、一度こちらを振り向いたが、そのまま何事もなかったように正面に向き直った。

弥栄川さんのことはさっき幸助さんから聞いていたけど、やはり協会が認めていた元メイン火力の名は伊達じゃないな…。話を聞いてるだけだったら、何だかだらしないおっさんのような感じだったけど、戦闘ではベテランであるし技術力もあるし、かなり強い人だ…。かなり関わりづらい雰囲気だけど、戦闘時に背中を預けるには十分すぎる存在なんだな…。心の中で謝っておこう。

そう認識を改めたところで、次はコントローラーに意識を向けて銃口を構える。同様に弥栄川もコントローラーを狙っており、撃ち抜く準備をしていた。弥栄川は頭を一発で、冬樹は肩に当てて動きが鈍った後、首元に当ててそれぞれコントローラーを撃破した。

心に少し余裕ができた冬樹は現在の味方の状況を確認した。すると、アタッカー部隊に橋立と麻田が補助で、指山が他の警戒を行っていて順調にガーディアンを倒していた。しかし、アグレッサーよりも防御に特化してるせいか、ガーディアンの減りは先ほどのアグレッサーに比べると遅い。

しばらくして、ようやく弥栄川に脚を一本撃ち抜かれたサボタージが立ち上がろうとしていた。しかしその努力も虚しく、立ち上がろうとした瞬間、チャージが完了した桜園の攻撃によってあっけなく破壊されてしまった。さらに残りディフェンダーが15体ほどまで減少してきた頃、通信に樹木から連絡が入った。

『そろそろ自分もフィルスマを使いますので、各自下がって防御隊形を整えてください。』

その声を聞いたガーディアンと戦闘していた部隊は一気に後退をし、最悪攻撃が飛んできてもいいようにディフェンダー部隊が前に、その内側にアタッカー部隊が入るような隊形を整えた。ガーディアンはアグレッサーに比べて速度が非常に遅いので、難なく退避でき、隊形を整え終えた。その直後、集団で固まっていたガーディアンのところへ激しい轟音とともにスパークが生じた。すると、正面にいたガーディアンでスパークに触れたものはすべて爆発し、跡形もなく消え去った。その威力は味方を考慮してか、先ほどの誘導作戦時よりは低い。だとしても、この人数でやっと十数体倒したガーディアンを一瞬で屠れるのはやはり強い。

残った数体のガーディアンを弥栄川と冬樹が協力して撃破した後、残るは直径20mほどはあろうかと言う球体のオブザーバーのみとなった。

これがオブザーバー…。てっきり司令塔って言われているからすごい強いかと思ったけど、戦闘時も全然攻撃してこないし、全く動く気配もない…。作戦指揮に特化した個体ゆえにこうなってしまったのだろうか?それに、アグレッサーと同じように少し宙に浮いている…。

その巨大で動く気配のない5mほど浮遊している球体を見て冬樹は色々思惑を巡らせるが、その結論は当然出て来ない。

ふと周りを見渡してみると、メンバーは余裕な表情で少し会話をしていた。どうやら本当にオブザーバーは攻撃してこないらしい。

すると通信に篠原の声が入ってきた。

『護衛を撃破お疲れさん。あとはオブザーバーのみだ。弥栄川と桜園のフィルスマで一気にケリをつける。各自は安全な場所まで下がってくれ。』

2つのスナイパーのフィルスマ同時攻撃で仕留める?それだけ硬いということなのだろうか…。

冬樹が考えていると、肩に手をポンッとおいて幸助が話しかけてきた。

「基本は大丈夫だが一応最後まで気を抜くなよ。今までにもオブザーバーを撃破しそこねて半端にダメージを与えたときに、敵の増援が来たことがあったんだ。ま、いつもあるわけじゃなくてたまにだけどな。それに今回は樹木のフィルスマも残してあるし、来たとしても対処は容易にできる。」

いやいや敵の増援が来たら不味いのでは…?でもメンバーを見る感じ、緊迫した空気と言うよりかは少し和やかな空気なので、どうやら幸助さんの言う通りごくたまに起こるらしい。それに樹木さんのフィルスマも保険として残しているのならなお安心だ。

全員が一応オブザーバーを視認できる範囲で距離を取った後、弥栄川と桜園がそれぞれのフィルスマを放った。直撃した瞬間は空間のゆがみと激しい閃光でその様子が見えなかったが、徐々にそれが引いてくると、半身をアイスのように溶かしたオブザーバーが地面に着いており、撃破したことを確認した。その後オブザーバーの残っていた部分が消散して消えると同時に、ゲートもだんだん収縮して消滅した。

ゲートの消滅を確認した後、互いにメンバーで褒め称え合い、勝利を喜んだ。篠原はお疲れさんとみんなに言うと、崩れた地形をもとに戻すため現地で黙々と作業をつづけた。そして作業が終わって全員が帰る頃には、東から勝利を祝うようにまぶしい太陽が顔を出していた。


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