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神才と瞬雷

誰もが分かっている。

この場にいる誰一人として、あの槍使いには逆らえない。

 瞬雷のゲイボルグ。

 Sランク目前、討伐失敗ゼロ。

 理論と実践を極めた、正真正銘の天才。


「気をつけろ、神田!こいつは凄まじく強いぞ!」


「わかってる、そうなんだろうな。」


「……聞こえているか?」


 ゲイボルグが、俺を見て言う。

「さっきから、ずっと俺を見ている」

「見てたな」

「理由は?」

「癖を確認してただけだ」

 ざわり、と周囲が揺れた。

 ゲイボルグは一瞬だけ目を細める。

「……なるほど。

 初見で俺を分析する気か?」

「分析ってほどでもない。

 もう分かったし」

「――ほう?」

 次の瞬間。

 ゲイボルグの槍が、音もなく消えた。

 いや、違う。

 速すぎて、見えなかっただけだ。

 瞬雷。

 その異名に恥じぬ一突きが、俺の喉元へと迫る。

 ――が。

 カン、という軽い音。

 俺は、二本の指で槍先を挟んでいた。

「な……?」

 ギルド内が凍りつく。

 止めた?

 受けた?

 いや――摘んだ。

「今のが、最速か?」

 俺の問いに、ゲイボルグは言葉を失った。

「違うな。

 “最速を出すための条件”を揃えただけだろ」

 呼吸。

 間合い。

 床の摩擦。

 相手の反応速度。

「全部、計算して撃ってる」

 俺は槍を離す。

「だから、読める」

「……ふざけるな」

 ゲイボルグの声が低くなる。

「俺は、負けたことがない」

「知ってる」

「努力して、積み上げてきた!」

「それも知ってる」

 だから、と俺は続けた。

「お前は“正しい”」

 その言葉に、ゲイボルグの目が揺れる。

「だがな――」

 一歩、踏み込む。

 誰も反応できない速度で。

「正しさは、勝利条件じゃない」

 拳が、ゲイボルグの腹に触れた。

 触れただけだ。

 次の瞬間、彼の体は宙を舞い、ギルドの壁を突き破った。

 静寂。

 誰も、声を出せない。

 俺は手を下ろし、淡々と言う。

「天才は、世界を理解する」

 そして。

「神才は、世界の外に立ってる」

 瓦礫の向こうで、ゲイボルグが咳き込みながら理解する。

 ――敗北を。


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