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【主人公】入学式

クラリエル学園の校門前から校舎まで続く道には、人があふれていた。

本日4月7日は入学式が執り行われる。校門前には新入生や保護者、そして役員としてから出された一部の在校生で賑わっていた。

その中に一人、栗色のふわふわとした髪を持つ少女が、あまり迫力のない目で校門を睨んでいた。


「つ、ついに、来てしまった……。」


周囲の新入生達が期待や喜びに目を輝かせるのとは対照的に、少女の目には不安と恐れが見えた。これから始まるであろう新生活に対して緊張しているにしてはいささか異様な光景だろう。

次々と式典の会場へ向かっていき校門前の人も徐々に減る中、彼女の足は一向に動かない。


「行かなきゃ……、でも、やだなぁ……。」


重々しいため息を吐き少女は地面へと視線を落とす。

何故こんなにも彼女が入学を躊躇うのには理由があった。


彼女、エリカ・サイアーズは所謂【異世界転生者】というものである。

前世ではごく平凡な人生を送っていたのだが、齢17にして命を落とす。

死亡原因は受験勉強による睡眠不足により、階段から足を滑らせ転落。苦しんだ覚えもないことから打ち所が悪くそのまま即死だろうと本人は踏んでいる。


その彼女が以前プレイしていたゲームに、【ナイト&プリンス】というものがある。

魔法が存在する世界のとある学園に入学した主人公が様々なトラブルに巻き込まれながらも成長し、そして意中の男子と恋人になる、又は結婚までこぎつける、所謂乙女ゲームである。

タイトルに難があるためか有名ではないものの、密かにファンが多い作品である。かくいう前世のエリカもその一人だ。

そして、そのゲームの世界に今まさに立っている。


そう、この世界は乙女ゲームの世界なのである。

そして彼女は、本来ならばプレイヤーの分身とも言えるべき主人公へと転生していた。


「やだやだ、全年齢とはいえ普通にいじめもどきのシーンとかあったし怖いよ

ゲームだから楽しいのであって現実じゃ無理だってー……」


目の前のクラリエル学園はゲームの舞台、主人公の入学から物語が始まっていた。

ここに足を踏み入れた瞬間からストーリーは始まってしまう。だが今更自宅に戻り学校には通いません!と宣言したところで強制的による連れ込まれるだけだろう。

そんな葛藤をしているとふとエリカに影がさす。思わず顔を上げれば、深い藍色の瞳とぶつかった。


「どうしたの?気分が悪い?」


優しい、爽やかというのがぴったりな声がその人から放たれる。

その人を見たエリカの第一印象は綺麗な男の子、だった。

藍色の短い髪はまっすぐで、サラサラと春の風に揺れている。心配そうに見る目は少しキツく見えるものの、不快な印象は与えない。鼻筋も通っていた唇も薄くパーツごとでも全体を通しても綺麗に見える。


「あの……?」


「は!す、すみません!気分大丈夫、です!」


「本当?」


「はい!この通り!」


そう言ってその場で跳ねてみたり、力こぶを作ったりして元気なことをアピールするエリカ。それをみて目の前の人は少し驚いた後、クスクスと笑う。

笑う顔も綺麗だなと感心しているとスッと手を差し出される。


「じゃあ式場、行こうか。案内するよ。」


「あ、でも!」


「あ、名乗りもしないのに案内は失礼だね。

私はクレア・マクレイ、クラリエル学園高等部特進科2年だよ。」


「あ、えっと、エリカ・サイアーズと申します!

高等部普通科に入学です!」


「エリカ嬢、ではお手をどうぞ?」


差し出された手を取りエリカは歩き出す歩き出す。

この時、彼女はクレアの名に聞き覚えを感じたものの、ありふれた名の1つであろうとその考えを打ち消した。



こうしてこの学園での彼女達の物語が、始まった。

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