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百色眼鏡  作者: 八木うさぎ
第2章 干渉色
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修学旅行③

肝試しの全様と、ペアの決め方についての話です。

……まあ、ペア決めについてはあらすじ欄でネタバレしてしまっていますが。

 宿の外には、活気だった生徒が入り乱れるようにして集まっていた。

 集合時間にはまだ五分もある。けれど、おそらくはもうほとんどの生徒がこの場にいることだろう。これも校長の説明がいい意味で中途半端で、酷く曖昧だったが故のことだろう。



 人混みの隅で場を俯瞰していると、「各クラスとも、男女に分かれて並べ!」という張り上げた声が聞こえた。

 ここからでは姿こそ見えないが、声でわかる。ついさっきまで携帯電話の回収を行っていたあの男性教師だ。



 指示を皮切りに、無秩序だった集団が徐々に整頓されていく。男女に分かれろという指示だけだったせいもあって、背の順でも出席番号順でもなく、集まった順に適当に列ができていた。



 ある程度形になってから、はじに控えて様子を窺っていた校長が前に出てきた。



「えー、みなさん揃ったようですね。では定刻より少々早いですが、これから何をするのかを発表しますので、どうか静かに傾聴するように」



 食堂のときとは違って地声での語りである。

 屋外であり、かつ時間も時間なので、わりかし控えめだが、校長の声は元々よく通るほうだし、今にあっては興味津々の生徒らが口に封をしているのもあって、聞き取れないことはない。



「今から我々は、この場で、男女二人一組のペアを作ります。その後、この宿の目と鼻の先にある、共に廃校となっている小学校と中学校に向かいますーーそう、ちょうどあちらに見えますな」



 校長の腕が、小学校と中学校が連なって存在しているという方角に伸びる。

 目で追ってみると、暗くなりつつある空のなかで、確かにそれらしき大きな建造物の一端が薄っすらと見えた。



「そして、そこで我々教師陣と数名のボランティアの方々が共にお化け役にふんし、至るところで諸君らを待ち伏せし、驚かせることになります」



 決定的なキーワードこそ伏せているものの、この時点ですでにあらかたの生徒は気づいたようだ。あちこちで驚嘆の声があがっている。その様子に校長もご満悦の様子だ。



「もうおわかりですな。諸君らがこれから行うのは、『肝試し』です」



 そう言い放ったが最後、口火を切ったように、そこらじゅうから多種多様な声が湧き上がった。 



 やれやれ、本当にやるんだな、肝試し。

 俺としてはありがたい話の方が俄然よかったんだけどな。聞いてるフリをしてればいいだけだし。まあ、もう決まったことだ。愚痴っても何も変わらないか。



 よく見れば、俺の他にもあまり乗り気じゃなさそうなのが男女問わず何人かいた。こういう奴らとペアを組めばある意味、好都合なんだが……そういえば、ペアはどうやって決めるんだ? 



 良くも悪くも興奮冷めやらぬなか、「静粛に。話はまだ終わってないですぞ」と注意喚起される。



「いいですかな。オホン。これから行う肝試しは、あくまで我々が主催するものに違いないのですが、それでも十分に注意が必要ですぞ。なにせ、舞台となるその小中学校には、本当にーー出るらしいんですよ。幽霊が、ね」



 沸きあがっていた場が一気に静まり返る。

 遅れて、所々から失笑が漏れた。



「……フム。どうやら何人かは信じていないようですな。でも、少し考えてみてください。どうしてそこの小学校と中学校が、そろいもそろって廃校になっているのか、と」



 その言葉で、今度こそ誰もが口を閉ざした。

 それにしてもーー校長の口調が、まさしく怪談話の語り部のようになっている。おいおい、ノリノリじゃないか。



「これは、今回の件で二つの校舎を借りるにあたり、地元の役所の方に聞いた話なのですが……この小学校と中学校にはね、もう何十年も前から、幾度となく怪奇現象が目撃されているらしいんですよ。

 かねてよりそういった噂が絶えないせいか、入学するはずの生徒の親御さんが役所に学区域の変更を申し出たり、もしくは家族ともども転居や転出をしてしまったりということが頻出して、結果的に、学校運営として成り立たないほどにまで生徒数が減ってしまったそうです。

 そうした経緯を念頭に、この街の市議会で幾度となく論議が交わされ、その結果、廃校となることが数年前に決まったとのことです。そして、実際に廃校となったのが、ついこの間の三月のことです」

 


 誰もが話に聞き入っている。

 校長は一息ついて生徒の様子を観察すると、話を再開した。



「しかし、この話にはまだ続きがあります。予定では、四月に入るとすぐに解体工事を着工するはずだったのですが、初期の段階で作業員が原因不明の体調不良を訴えだしたそうです。それも複数名。

 そういう背景もあって、工事は一時中断となり、今もああして存在している、ということです。

 もうおわかりですな? あそこが単なる校舎ではなく、『いわく付きの心霊スポット』だということが。

 というわけで、くれぐれも軽率な行動は慎むように。

 もう一つ。廃校だからといって、間違っても校舎の器物を破損したりはしないように」



 ……なるほどな。

 校長の話からは、二通りの見解を持つことができる。

 一つは、『どうせ、俺たちの恐怖心をあおり、肝試しでをより演出するために、校長が考えた、ただの作り話だろう』というものだ。

 実際にそんなことがあったりしたら、地元の役所だって校舎の使用に許可など降ろさないはずだしな。

 だが一方で、『役所とか市議会とかいう仰々しい単語を使っているところが妙に生々しく、やはり本当の話なのでは?』とも考えられる。

 実際にどんな怪奇現象が起こったのについては触れていなかったが、それでも聞いているぶんには特段変なところはなかった。



 この、絶妙なさじ加減。

 嘘か本当か、考えてみたところでこの地域の実情を知らない俺らからしてみれば、疑いを晴らすことはできないという点。

 実に絶妙、実に巧妙だ。さすが校長といったところか。

 毎週月曜の朝に長話をしているだけのことはある。まあ、今日のこの日のためじゃあないだろうけども。 



「いいですな? では、肝試しを行うにあたっての手順といいますか、これからの段取りと実際に校舎内に入ってからの説明をします。 

 まず、これから二人一組を組んでもらいます。その後、あちらに見える入り口に一列に並んでください。そして会場に着いたらこのようなA4の用紙を一組につき一枚配ります」



 校長が垂直に腕を伸ばし、手にした紙をヒラヒラとさせる。



「これには校内の見取り図が描かれてあるのですが、具体的な進行手順が矢印で記されているので、その通りに進んでください。そうでないと校内で渋滞やら混雑やら発生して、肝試しどころではなくなってしまうので」



 校長は自嘲的に笑ったが、つられて笑う者は一人もいなかった。

 さっと腕をひっこめ、本当の意味で静まり返った空気を入れ替えるように、何事もなかったように咳ばらいを一つしてから、さっきの調子で話を続ける。



「えー、そしてここからが重要なところのですが、校内には全部で七箇所、チェックポイントなるものを設けました。具体的にどの辺りかは見取り図を手にしてから確認していただきますが、各々の場所にはそれぞれ、ある色のビー玉を用意してあります。それをみなさんに一つずつ回収してきてもらいます。

 つまり、七箇所すべてをちゃんと回れていれば、七種類のビー玉をもっていることになるわけですな。みなさんは一緒に回る相手の方と協力して、七色のビー玉を揃えて下さい。いいですな。では、説明は以上となります」



 校長の話を要約すると、次のようになる。

・これから、廃校を舞台に肝試しをする。

・肝試しは、男女二人一組で行う。

・一組につき、校舎の見取り図が手渡される。そこに巡回する段取りが記されている。

・おおまかに、七か所巡回する。それを証明するために、それぞれの地点に置かれているというビー玉を回収する必要がある。

 ……だいたいこんなところか。



 俺に限らず、誰しもがこんなふうに校長の話を吟味していた。

 そんなところに、ある生徒の挙手が舞い込んだ。



「すいません校長先生。その、ペアの決め方の説明をまだ、されていません」



 そう、それ。俺も疑問に感じたことだ。

 だが、校長は「おお、そうでしたな」と言うだけで、失念していたというよりかはむしろ妙ににこやかな表情を浮かべていた。この感じ、さては意図的に説明をしていなかったな。



「えー、ペア決めについてですが、クジ引きとさせていただきます」



 クジ引きか……まあ当然と言えば当然だが。



「これから四人の生徒ーーこれは各クラスの学級委員の方々です。彼らに協力していただき、男女それぞれ、数字を書いた四つ折りの紙が入っている箱を順番に回していきます。自分の番になったらクジを引き、そのまま担当の生徒に渡してください。その番号の一致でペアを決めます。

 なお、我が校の三年生は6クラスでいずれも生徒数は36人。つまり216名ですが、男女比はちょうど半々なので、合計で108組となります。

 ここで注意が必要です。時間の都合上、1番から54番までのペアは小学校で、55番から108番までのペアは中学校で、それぞれ同時に肝試しを行うこととなっていますので、くれぐれも会場を間違いないように」



 ついさっき、説明は以上ですと言ったくせに、さらっと重要なことを付け足した。

 どうしてさっきからずっと『小学校と中学校』と口にしているのかよくわからなかったが……なるほど、まさか半々に分かれて同時に行うとは。

 滅多に耳にしないようななんとも変則的な手法だが、改めて考えてみると、そうせざるを得ない理由にも納得がいく。 

 単純に、時間がないのだ。



 普通の都立高校は一学年当たりだいたい7クラスまたは8クラスくらいだろうが、俺たちの学校はどの学年もA~Fの6クラスまでしかない。比較的少人数の学校だ。

 もっとも、偏差値の山を考えてみれば、それがそのまま日本全国の生徒数の分布なわけだから、偏差値が30しかないこの学校の生徒数が少ないのもある意味頷けるところだ。これで10クラスもあろうものなら世も末だ。日本に明るい未来はないだろう。



 俺たちの学年は6クラス×36人で計216人。それを2で割って、つまり108組のペアが成立する。そこまではいい。校長の説明のとおりだ。

 だが、十九時から二十二時までのたったの三時間で108組を一つの校舎だけでさばききるとしたら、180分×60秒を108組で割って、一組あたりちょうど100秒。つまり1分40秒ごとに新しいペアが校舎内に入ることになるわけだ。



 ペアとペアの間隔がそれだけしかないとなると、渋滞ができることは予想がつく。そうなったら雰囲気も丸崩れで、せっかくの催しが台無しだ。

 だからこれは、そのような事態を回避するための、苦肉の策だろう。まあ、会場を二つにしたところで、1分40秒が3分20秒になっただけだ。雀の涙程度に過ぎないが。



 それはそれとして、会場を二つにするということはつまり、運営する側の人手も単純に倍必要になるわけことを意味している。けれど教師だって必要最低限しかこの旅行に参加していない。そこでさっきの校長の「ボランティアの人」という発言の意味が浸透してくる。



 いやいや、そこまでするか?

 なんか本当、無駄に周到だな。教師どもも、そんなに手間暇かけたり意気込みがあるのなら、普段の授業にこそその熱を注げよなって気もするが……まあいいか。どうでも。



 真相が明らかになったせいで、そこかしこで談笑があがっていた。列を崩さないまでも、さっきよりも入り乱れている。



 ……ん?

 気のせいか、いくつも視線を感じる。

 ふとさりげなく見回してみると、いくつかの女子の集団が、揃って俺を盗み見していた。

 まさかとは思うが、俺とペアを組みたいとか思ってるんじゃないだろうな。

 おいおい勘弁してくれよ。こっちは日中、可燃ゴミの扱いに追われて無駄に疲れているんだ。これ以上の面倒ごとは本当にごめんなんだよ。



 一人で静かにげんなりしているなか、遠くでけたたましい声があがった。すべての視線がその一点に注がれる。

 どうやらクジ引きはすでに始まっていたらしい。見た限りだと、男子はAクラスから順に、女子はFクラスから逆順に、それぞれ執り行われているようなのだが、なんといきなり一組目のペアができたらしい。今の声は、それに対する反応だったみたいだ。

 こんなことで一喜一憂してるなんて、めでたい奴らだーーと罵る一方で、ひっついたりずっと話しかけてきたりするようなろくでもない女とペアにならないよう祈っている自分がいた。 



 かくいう俺はFクラス。自分の番は最後の方である。一方で、女子の騒ぎの震源地が徐々に近づいてきていたのを横目で見てみる。

 女子のクジ引きを担当しているのは、BクラスとEクラスの男子の学級委員だった。一人がクジの箱を手にもって対象者に差しだし、引かせ、それを受け取ってから開示し、数字を確認する。そしてもう一人がそれを名簿に書き記していく。そんな段取りのようだ。



 こんなことは本来なら教師がやりそうなものだが、舞台を二つに分けている以上、どうあっても人手が足りないのだろう。……ああなるほど、そこで学級委員が雇用されたのか。



 事実、Aクラスの男子の学級委員と俺のクラスの学級委員の宮城が、クジを引き終えた生徒を、小学校組と中学校組とに分別して列を築かせるのに奮迅している。

 他にもあと男女三名ずつ学級委員がいるはずだが、見た限りこの場にはいないようだ。もしかしたら別の準備をしているのかもしれない。

 ってことは、火曜日にあいつが言ってた、学級委員が急遽呼び出されたとか何とかってアレは、この段取りの打ち合わせのことだったのかもしれない。まったく学級委員も大変だな。おいそれとなるものじゃない。



 ただクジを引くだけとはいえ、男女それぞれ108人もいるとなれば、すぐには終わらない。仮に一人に10秒かかったとしても、18分もかかってしまう計算になる。

 けれど、学級委員の手際が良かったようで、女子の学級委員二人がFクラスにまで来たときには、まだ10分ほどでしかなかった。

 この時点で、すでに半分以上のペアが誕生していた。なかには喚起する者もいれば驚嘆する者もいた。



 気づけば、Fクラス付近に、女子どもが何人か集まっていた。まだペアができていない奴らだろう。男子も同じようにAクラスに群がりつつある。

 ……それにしても、なんか多くないか?



 学級委員はそれ以外の生徒がクジを引き終わった後に自分たちのクジを引くらしい。ということで、まだクジを引いていない男子は俺のクラスの十八人と学級委員の六人だけのはずだ。その割には、周囲にはその倍近くの女子がいる。

 ……もしかして、俺の相手が誰なのか気にして? 

 


 いやいや、まさか。

 自意識過剰な気もするが、でもみんな、チラチラと盗み見してくる。さっきよりも露骨でわかりやすい。

 たかが修学旅行の肝試しのペア決めで、時間にしたら数十分くらいのものだろうに、そんなに俺が誰と組むのかが気になるのか。

 共感しがたいと思っているところに、とうとう順番がやってくる。

 そこで息が詰まった。



 クジの箱を持っているのが、あろうことかあいつだったからだ。



 あまりに突然だったので、思わず息を飲む。

 そんな俺を窺うようにして、目を合わせてきた。



「一つ引いて、開かずに私に手渡してください」



 なんとも事務的な対応だった。不思議と胸が疼く。

 たとえそうでなかったとしても、今は周囲の視線の的となっているのだ、この状況で噛み砕いた会話などできるはずもない。特に言葉を交わしたりはせずに、ただ黙って差しだされた箱に手を入れた。



 もしも俺が芸能人であれば、群がる女子にもったいぶるようにして、なかなかクジを引こうとはしなかっただろうが、生憎と俺は芸能人でも何でもない。一番最初に指に触れたものをそのまま引き抜いた。そのまま「はい」とそっけなく手渡す。

 両手で受け取った鈴鹿は、俺とは違ってもったいぶるかのように、ゆっくりと紙を開いていく。そして自分にだけ見えるくらいにまで開くと、何故か深呼吸を挟み、それから大きな声で番号を読み上げた。



「……100番」



 途端、ざわめきが起こった。主に落胆の色が多かったような気がする。



 しばらく待ってみたが、100番を名乗りでる奴はでてこなかった。どうやらまだ引かれていないらしい。

 女子のあいだで、「何番だって?」「100だってさ!」と、まるで伝令のように俺の番号情報がAクラスの果てまで広まっていく。その横であいつは、もう一人の学級委員が控えるのを確認すると、そのまま何事もなかったかのように次の奴に進んでいった。 



 その後もクジ引きは滞りなく行われ、やがて学級委員以外の全生徒のクジ引きが終了した。

 この時点でも、俺とペアを組む奴が誰なのか、まだ決まっていないかった。ということはつまり、学級委員女子の六人のうちの誰かということになる。



 余談だが、俺のペアが一体誰になるのか女子どもが気にしているのと同じように、男子は男子で、宮城のペアが誰になるのか気になっているようだった。

 新幹線内でも宮城の人気を耳にしたが、そんなに人気があるのか、あいつ。



 しばらくして、姿の見えなかった六人の学級委員がどこからか戻ってきた。そこでようやくクジ引きが再開された。

 学級委員の六人もまた、男子はAクラスから、女子はFクラスから引いていくらしい。というわけで、いきなり宮城の番である。男子のざわつきが一段階あがった。

 この時点で欠番なのは、男子が「9」、「35」、「52」、「61」、「84」、「107」の六つ。そして、女子が「13」、「29」、「46」、「78」、「95」、そして「100」の六つである。

 


 宮城が引き当てたのは、「95」だった。

 95は誰だ? という野性味あふれた声がやかましく飛び交うなかで、それを飲みこんでしまうほどのざわつきが女子のほうで起こった。

 すぐそばで、顔も覚えていない女子が俺を見ながら「100出たって」と別の女子に耳打ちしているのが漏れ聞こえた。

 そうか、ようやく決まったか。で、誰なんだ? 宮城は95番らしいから……。



「誰?、誰だったの?」

「それがーーほら。あの娘よあの娘」



 女子たちの様子が、少しおかしい。

 なんだ? もしかして、なにかしらいわく付きの奴なのか? おいおい勘弁してくれよ。

 いったいどいつなんだーーと思って身構えるところにやって来たのは、なんと鈴鹿だった。



 ……え。

 まさか。嘘だろ?

 一体どんな確率だよ?



 108人もいる女子の中で、あろうことかこいつとペアになってしまうとは。

 ある意味、こいつでよかったと思っている自分がいる。でも、どうして今こいつとーーこいつじゃなければよかったのにと思っている自分も確かに存在していた。



「……よ、よろしくお願いします」



 絶句しているところに、まるで初対面かのように深々と頭を下げてくる。

 まだ衝撃が抜けやらぬなか、俺も便宜上「あ、ああ、よろしく」と言うには言えたが、柄にもなく棒読みになってしまっていた。



 鈴鹿は鈴鹿で、なんだか針の筵のように周りの視線の的になっていた。その圧迫感もあってか、妙に縮こまっている。

 そうこうしているうちに、会場への移動が始まった。


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