勇者と魔王
勇者視点です
私は勇者、人間で最強の存在と言われている
そんなことは無い。普通の女の子になりたい、と叫んだところで何も変わらない。生まれて直ぐに受けた洗礼で勇者の資格があると言われた時、両親はとても喜んだらしい。でも、私が大きくなるにつれて、だんだん私に恐怖を感じるようになった。だから、私は教会に預けられた。この話はシスターから聞いた話。そして5歳から勇者としての教育を受けることになったが、10歳の時には人間の中で最強と言われていた人を片手で倒せるようになった。その時から私の中に聖属性の魔力が強くなり始めたこともあり、だんだんと私に近づくことの出来る人は減って、1年後には1人になった
そして、唯一近くに居てくれるシスターと山奥の家に引っ越した。勇者としての仕事は大量発生したモンスターの討伐ばっかりだった……
そして、今回の魔王討伐。要は領土の拡大がしたいから1番強いやつを私に倒させるのが目的だ。まあ、国王達は私が死のうが関係ないのだろ
この魔王のいる場所まで来る時に門番はおろか、敵は誰もいなかった。それだけ強いのだろうか?あと可愛い子だ、外に出てないのか白い肌で銀色の髪と綺麗な赤いや紅色に染まった目があいまって美しい。王女様よりも可愛いんでないだろうか?私はこんな子と戦わなきゃいけないんだろうか?そんなことを考えているうちに
「そなたは何者か?」
どうしよう取り敢えず、穏便に済ましたいんだけど。決めゼリフを
「私は勇者だ。魔王、お前を倒しに来た」
「仲間も無しとは、随分と調子に乗っているな」
ただ、ぼっちなだけです
「仲間なんていなくても、お前に勝てるさ」
見え張っちゃった。どうしよう。でもこの子なら私を……
「ならば、冥土の土産に、一言言っておこう」
「奇遇だね、私も冥土の土産に言いたいことがあるんだ」
「ならば同時に言おうではないか」
「いいよ」
これが最後に誰かにするお願いだ
「「せーの」」
「「私を殺して」」
静寂が空間を支配した
「「えっ?」」
どういうこと?
「何を言っておるのだ?そなたは勇者なのだから余を殺すのが役割だろ」
「そんなことを言ったら、魔王も勇者を返り討ちにするでしょ」
なんでよ。この子なら私を殺せると思ったのに……
「せっかく死ねると思ったのに。まだ、あの国に戻りたくないよ」
涙が溢れて止まらなくなった
「これこれ、そなたが泣くでない。わけを話してみよ」
「実は…………」
私は、魔王に生い立ちを話し始めた
~1時間後~
「そうか、そうか。苦労したのだな」
いい子だ。こんなに親身になって話を聞いてくれて。そしてとても温かいし、いい匂いがする
「ぐすぐす…聞いてくれてありがとう。今まで私に近づけた人は、シスター以外あなただけだから」
「よいよい。私も似たようなものだからな」
「そうなの?!魔王の話も聞かせてよ」
魔王が話を始めた
~さらに1時間~
「ぐすん、苦労したんだね。私と同じじゃん」
私と同じく独りだった
「そうだな。ところで、今日はこの後どうするんじゃ?」
「殺してくれないの?」
「身の上話を聞いた後で殺せるか!」
「それもそうだね」
やっぱり優しい
「もう遅いから、こんばんはここに泊まっていけ」
「いいの?」
「ああ、大丈夫だ」
本当に優しいな。でも……
「ありがとうね。ところで、口調は戻さないの?」
「うっ。気づいておったのか」
「もの凄い使いにくそうだったよ」
「うー。じゃあ、元に戻す。これでいい?」
「いいね。話しやすくなったよ」
「そっそう?」
この口調の方が断然可愛い。でもなんだろう、この感じは。初めての感覚だ
私達はこの後一緒に仲良く過ごした
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