魔王と勇者
魔王視点です
私は吸血鬼で魔王、魔族達の王
この魔王城サブジーナスにずっっっっっっといる
生まれ持った力が強すぎて私に近づくものは誰もない。家臣は当たり前で、親ですら私が5歳の時には私の傍に来ただけで倒れてしまうようになった。私の近くに来れるのは、昔から仕えてくれているメイドだけ
街に出れば尚更だ。一般人は私が100歩以内に入るだけで恐怖を感じるらしい。だから、私はこの城から出たことがない。それに不満はない、自分が原因で街の人々が傷つくのは嫌だから。でも、友達は出来なかった。遊ぶのはいつも1人。メイド以外と会わない日のほうが多かった。人を見るのはお城の窓から、ずっと道を通る人を眺めているとき。あと、新年と誕生日の挨拶に遠くにいるのをみるだけ
私は、10歳で魔王に即位した。父が自分より娘の方がふさわしいとして退位したからだ。そして、魔王城は辺境の土地に動かされた。ここは人間の国との国境に近いところにある。内政などは父がまだしている。だから、要はさっさと遠い場所に行け、という事だ。あと人間との争いの時の盾役でもあるんだろう
概ね、これが私が生きてきた17年の歴史だ
そして今、私は玉座の間で1人の少女と向かいあっている。私と同じぐらいの年齢、髪は金髪で目は銀色で腰には剣を下げている。顔も騎士のようにスマートではなく、どこかのお姫様のように優しげな印象だ。素直にとても可愛いと思う……少なくとも、私が見た事のある人の中では。この国の貴族の娘達よりも上でなからうか。まあ、私はその子達を遠くからしか見たことは無いが。私はこの子と戦わなければならないのだろうか?
とりあえず穏便に負い返せないか試してみよう。メイドに言われた口調に変えて
「そなたは何者か?」
「私は勇者だ。魔王、お前を倒しに来た」
あ、これあかんやつだ。でもこの子なんで仲間居ないんだろ?
「仲間も無しとは、随分と調子に乗っているな」
「仲間なんていなくても、お前に勝てるさ」
私とは違うな。きっと強い子なんだろな。この子なら私を……
「ならば、冥土の土産に、一言言っておこう」
「奇遇だね、私も冥土の土産に言いたいことがあるんだ」
「ならば同時に言おうではないか」
「いいよ」
私は、初めてのお願いをすることにした
「「せーの」」
「「私を殺して」」
静寂が空間を支配した
「「えっ?」」
どういうこと?
「何を言っておるのだ?そなたは勇者なのだから余を殺すのが役割だろ」
「そんなことを言ったら、魔王も勇者を返り討ちにするでしょ」
なんでこんなことに、せっかく殺して貰えると思ったのに。その時勇者が
「せっかく死ねると思ったのに。まだ、あの国に戻りたくないよ」
そう言って、泣き出した
「これこれ、そなたが泣くでない。わけを話してみよ」
「実は…………」
勇者の話が始まった
~1時間後~
「そうか、そうか。苦労したのだな」
私と同じだ
「ぐすぐす…聞いてくれてありがとう。今まで私に近づけた人は、シスター以外あなただけだから」
「よいよい。私も似たようなものだからな」
「そうなの?!魔王の話も聞かせてよ」
私は勇者に話を始めた
~さらに1時間~
「ぐすん、苦労したんだね。私と同じじゃん」
「そうだな。ところで、今日はこの後どうするんじゃ?」
「殺してくれないの?」
「身の上話を聞いた後で殺せるか!」
「それもそうだね」
全く調子が狂う
「もう遅いから、こんばんはここに泊まっていけ」
「いいの?」
「ああ、大丈夫だ」
メイドに聞いてみないと
「ありがとうね。ところで、口調は戻さないの?」
「うっ。気づいておったのか」
「物凄い使いにくそうだったよ」
「うー。じゃあ、元に戻す。これでいい?」
「いいね。話しやすくなったよ」
「そっそう?」
全く勇者は容赦ないな。でもなんだろう、この感じは。初めての感覚だ
この後私達はこの城で一緒に過ごした
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