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ただすれ違っただけの君を助けたい 月城白亜の物語  作者: 透坂雨音
おまけ 高坂凛子の物語

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24/30

01



 高坂凛子は、魔女ではなかった。

 彼女は昔、ただの人間だった。


 強烈な個性も持たず、普通の人間のように過ごしていた。


 しかし、そんな彼女を変えたのは、周りの環境だった。


 彼女に残されていた選択肢は、二つだけだった。


 人間をやめて魔女になるか、それとも死ぬか。





「君の瞳は綺麗だね」


 夏のある日。


 もう戻れない過去のあの日。


 彼女の前にもたらされたのはありふれた出会いだった。


 凛子は、懲罰牢にとじこめられて、膝を抱えていた。


 自信を取り巻く環境が異常なものだと分かっていたが、凛子にはそれらを変える力は何一つなかった。


 あったのは、声を掛けてくれたその少年だけ。


「そんなところにいないで、外に出ようよ」


 懲罰牢は地下にあった。


 しかし、密室にするわけにはいかないため、空気をとりこむための穴があったのだ。


 そして、その穴は凛子が努力すれば通る事ができる穴だった。


 しかし、進んだ先には鉄格子。


 それは、小学生低学年の、凛子の腕の力ではどうにもならないものだった。


 けれども、そこに通りかかった少年が、鉄格子を外してくれたから、凛子は外に出られたのだ。


 凛子はその少年と共に、束の間の時間を過ごした。


 日が暮れる頃には、懲罰牢に戻って、何食わぬ顔をするが、誰も脱走には気づけなかった。


 凛子のことなど、いないものとして扱うのが日常だったからだ。


 凛子はそれからも毎日少年と遊んだ。


 それらは宝物の様に、凛子のさび付いていた心をとかしていった。


 人間らしい感情を取り戻させていった。


 だから凛子は、この日々が永遠であれと思っていた。


 しかしどんなものでも、永遠であれと思ったものが、その通りになった事はない。


 尊いものほど、大切にしたいものほど、あっけなく消えてしまう。


 ある日、凛子を閉じ込めた大人たちが、凛子の脱走に気が付いた。


「あれは神となる童だ。外に決して出してはいけないというのに」


 その結果、凛子はより厳重に閉じ込められるようになり。


 少年と会えなくなってしまった。


 少年は突然あえなくなった凛子を心配して、色々なものを変えようとしたのだろう。


 凛子と会うために何かをして、その結果命を落とした。


 凛子はその事実を知った後、大人たちを捨てて、魔女になった。


 次元の魔女として、生きることを決めた。


 凛子は自分の身に何が起きたのか、正確にはわかっていない。


 知ろうとは思わなかった。


 ただ自称普通の人間達を、平凡な人間達を何かの穴に放り込んで、蓋をしただけ。


 それから凛子は長いときを生きた。


 何もやる事がないから、意味のない生を贈り続けた。


 そんな凛子が目標としたのは、なんの皮肉なのか。


 やがて、100の願いをかなえて、神になろうと思ったのだ。


 凛子は今日も、願い事をかなえ続ける。


 現代社会でひっそり生きる、次元の魔女として。



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