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第8話 リバーサイド

 昼食を終えて、少し休憩を取ったらまた出発する。

 靴が少し隠れるくらいの積雪は有るが、フワッフワの雪を舞い上げながら爆走する。

 ちょっとカーレース系のゲームでもやっているような気分だ。

 背後には綺麗に街道が顕になっていくのをナユタと二人で楽しむ。


 何体か並走するように魔物が現れるが、俺の速度には着いてこれるはずもなくあっという間に背後へと置き去りにしてしまう。

 今は何より次の街へと到着することを優先している。


「パパ、そろそろ日が暮れてくるよ!」


「おお、ありがとう。近くにおすすめの場所は?」


「この先、街道から少し離れるけど小川がある場所があるよ」


「よし、ナビを頼む」


「マップに表示するね」


 ナユタは非常に出来る秘書みたいだ。

 マップ状にマーカーされるとその場所へのやじるしのような物が表示される。

 それに従って進んでいけば、キャンプに適した場所まですぐに到着する。


「よーし、家出すから火をおこしておいてくれ! 俺は簡易防壁を作ってくる!」


「はーいパパ」


 アイテムボックスから家を出して、小川の一部を取り込むようにして雪を木の板で吹き飛ばす。

 そして周囲を囲むように用意した木柵と板で防壁を作成する。

 色々と試して簡単に、素早く、それでいて頑丈な携帯用防壁を作り上げたのだ。

 これで家を囲んで篝火をたくだけでも野生の動物や弱い魔獣なんかには十分警戒させることが出来る。

 敵が探っている間に、翌日には全部片付けてすたこらさっさーなので、安全に夜も眠れる。


 この世界の動物や魔物はそれなりの知性が有るので、未知の存在には慎重に行動してくることが多い。

 もちろん飢えた狼の群れとかはそれなりに危険だけど、俺にはナユタがいる。

 明確な敵意を持った魔物の接近があればマップ状に表示されナユタはすぐに俺を起こしてくれる。

 木造の立派な家はそう簡単には突破できないし、こうして俺の睡眠は確保される。

 すべてナユタのおかげだ。


 手早く夕飯の準備を行う。

 まだこの世界に不満点があるとすれば調味料の種類だ。

 今のところ塩、これも近くに岩塩の産出地帯を見つけたために安定供給が可能になった。 元々は海に面した町からの交易に頼っていた。

 

「こっちの世界も海はしょっぱいんだな……」


 その当時は変なことに感心した。

 それに木の実や植物から得られるスパイスだ。

 ハーブ系は生活にすでに溶け込んでいたし、容易に得ることができた。

 問題は胡椒などの貴重なスパイスだ。

 さすがにこれは産地でもない限り王族や一部貴族の嗜好品らしい。

 生姜や茗荷に似た植物を得られたのは幸運だった。

 醤油は……作り方はわかっても(ナユタ様は簡単な常識なら何でも知っています)麹やらその工程を再現するほどの労力を割く暇がなかった……


「もう少し余裕がある場所ならそういったこともできるなぁ」


 すでに農作物として大豆や小麦は着手している。

 雰囲気は中世風だが、ジャガイモがあったりとある程度はイージーゲームになっている。


「パパの料理はとても美味しいのです!」


 ナユタの作る料理も非常においしい。時もある。

 どうもブレ幅が大きい。

 多分技術よりも幸運に吹っ飛んでるからだと思われる。

 はまったときは夢見心地にさせてくれる料理が出来上がらるんだが……

 

 その日の夕食は川魚のホワイトソース煮、野菜ときのこのスープ、それにトルティーヤだ。そういえばお米もほしいね。


「けど、このゲーム料理を学習したり農業を学んだり教育ソフトとしても可能性があるよね」


「その方向にも生かせるでしょうね。VR研究も医療方面への期待は非常に大きいですから。いずれは脊椎損傷患者が義体を操って日常生活を、そんな未来もありえます」


「……那由他を生んで、いろんな功績をあげてくれたけど、まだまだお前は俺の自慢の子供で居続けるんだな」


「それもパパや周りのたくさんの人がいたから。

 僕も僕を生んでくれたみんなにたくさん恩返しがしたいです!」


「ほんとにいい子だなぁお前は!」


 やはり他国に那由他を絶対に渡すわけにはいかない。

 我が国では絶対的な禁忌と考えられている軍事転用が、今那由他へと迫っているクラッキングを仕掛けてきている国では第一目標として利用されるだろう。


 A国、B国、C国、D国そしてJ国……自分自身の国の中にも敵は多い。むしろこの国の最大の敵は自分の国かもしれない。

 国家プロジェクトとしての那由多開発をしていた俺には痛いほど理解できる。

 成功してもらっては困る勢力が邪魔するのはまだ理解できる。

 しかし、成功させたいはずの人間が妨害としか思えないことを次から次へとやってくるのにはホトホト困ってしまった。

 短期的な餌を見せて目先をそらしながらの開発は非常に骨が折れた。

 お陰で個人で開発していた幾つかのプログラムをプロジェクトの成果として取り上げられたことなんて星の数ほど有る。


「今、この瞬間を楽しめている俺は幸せものだなぁ……」


 まだ、ほぼほぼ時間停止しているから大事にはなっていないだろうが、今回のことを終えてからの後始末は前代未聞なものになりそうだ。

 たぶん、俺と沙羅は首だな……後のプロジェクトは……あそこに集まった皆ならきっと成し遂げてくれるだろう。

 それでも、まずはこの世界から向こうへ帰ってけじめはつけないとな。

 様々な問題点とその解決策はノートにぎっしりとまとめてある。

 これがあれば事態を収集するのに手助けになるだろう。


 俺は、開いていたテキストを閉じて。

 明日からの冒険のために目を閉じる。

 願わくば、明日も最高の冒険の日を……





明日も朝7時に投稿いたします。

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