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第43話 戦略ゲーム

「なんて愚かな、せっかくの数の優位があるのに部隊の足並みもそろっておらんではないか……サラ」


「リョウ提督、ゴーレム部隊、急襲部隊配備完了しています」


「まったく、手ごたえのない相手でつまらんな……予定通り行軍させてくれ」


 集団を作ってはいるが、総数で圧倒的優位なはずの帝国軍はなぜか小集団に分かれそれぞれが独立して俺らの場所へと攻めてきている。

 集団自体の兵構成もてんでバラバラで、たとえば機動性が優れるモンスターがいてもその機動性を活かすような戦法を取ることが難しい状態になっている。


 たとえ総数は違えどもこちらは少数精鋭の部隊をそれぞれの役割に特化させて配備している。その舞台の利点を最大限に生かして、各個撃破していくだけだ。

 戦闘が開始され、かなりの時間が経過していたが、戦況は変化はなかった。


「うーむ、こちらの損害もほとんどなく連戦連勝だが、敵の数が多すぎるな……」


「ゴーレムと精霊だからいいけど、人間だったら疲労困憊で押し切られかねなかったね」


「物量作戦も馬鹿にできないってことだな、ナユタ敵の様子は?」


「はい、やっぱり帝都から戦力が逐次投入されていますね。このままこの場で防戦を続けるのは得策ではないと思います」


「倒せば補充される、か……つまり、倒さないで無力化させて帝都の周りから排除すればいいか……」


 俺は地図を取り出してBプランをサラに指示をする。


「性格悪いねーリョウは……」


「現状に合わせた最良と思われる作戦を考えているだけだ」


「はいはい、それじゃぁ準備してくる。ゴーレムと精霊への指示はその石を通して出来るからリョウよろしくね」


「任された」


 上級ゴーレムと上級聖霊は想像以上の力を発揮してくれる。

 自己再生能力も高く、完全に破壊されなければ次の戦いまでには修復、回復が済んでいる。

 頑強な肉体を持つゴーレム部隊が敵の突進を受け止めて、横から精霊部隊の強襲部隊が襲い掛かる。

 端的に言ってしまえば俺たちが行っている戦闘はこれだけだ。

 敵の混成部隊はそれぞれの特性を生かすこともなく、ゴーレムたちに進路を阻まれ、横、もしくは背後から精霊による強力な攻撃に晒され、ろくな抵抗もできないままに殲滅されていく。

 敵の指揮官はよほどの無能なのかこの無謀で無策な突撃を延々と続けている。

 おかげで俺とサラのレベルは狂ったように上がり続けている。

 せっかくの上級モンスターもこんな使われ方をしては宝の持ち腐れだ。

 

 もう何度目かわからない敵の突進を退けるとサラが戻ってくる。

 

「準備完了です提督」


「よし、よくやった。それでは敵を作戦地点へと誘導する」


 これも、何とも味気ない、こちらが移動すれば敵はそこに何かあるとも考えずについてくるだけ、罠も相手に知性があるからこそ嵌める楽しさがあるんだなとつくづく思う……


「でも、こういうRPGに突然出てくるシミュレーション要素って妙にぬるいことが多いよね」


「ぬるいか鬼畜か極端だよね」


「全部主人公が突っ込めば終わりとかだったり、味方の犠牲を前提にしてたりとか……製作者からしたらおまけ的な要素なんだろうね」


「製品版ではそんな手抜きは致しませんのでご安心を」


「期待している」


 わざわざバラバラと接近してくる敵を移動ルートを工夫して一つの塊にしていく。

 数は多いが烏合の衆、と言っても数は凶悪な数になってきており、ゴーレム部隊でも押しとどめることは不可能だろう。


「よーし、サラ。やつらを罠にはめろ」


「はい提督! アースグラビトン!」


 敵の集団をサラの魔法が包み込む、強烈な重力波が敵を押しつぶそうとのしかかる。

 敵も上級モンスターやや動きが遅くなる程度で有効な攻撃手段にはならない、が、狙いはそこではない。大量の敵の重量が瞬間的に増加したことによって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()一気に陥没する。


「流せ!」


「タイダルウェーイブ!」


 谷に大量の水が流れ込んで敵軍を飲み込んでいく、意図的に威力は抑えてその分水量を増やしている。

 ダメージこそ低いが、大量の水によってモンスター達は谷を流されていく。

 こうすることによって、敵軍はその数を維持したままに帝都の反対側の海まで流されていく。


「よし、予定通り俺たちは帝都へ向かおう」


「転移します」


 ナユタによって今度は帝都の目の前に転移する。

 作戦通り、大量の敵は今頃帝都から離れた遥か後方の海へと流されたころだろう。

 その地点から帝都へ戻るまでの時間が勝負だ。


「どのあたりからダンジョン化されてそう? ダンジョンに入っちゃえば後ろの敵は気にしなくていいんだけど……」


「それが、ダンジョン化してなさそうですね。帝都内にも一定数の敵が徘徊しています」


「ううん……、ダンジョン化していないことで逆に厄介だな。

 仕方がない、背後の敵が帝都になだれ込む前に決めてしまおう!

 ただ、急ぎながらもちゃんと考えていかないと背後を突かれないようにしないとな」


「帝都の構造は変化してダンジョンみたいになってますね……帝都内は僕の転移や索敵もほとんど役に立ちそうにないですね……」


 道は複雑に入り組んでおり、進み方を間違えれば思わぬ敵襲を受けてしまう。

 かなり厄介に作り替えられている。


「別に、道を通らなくてもいいんじゃない?」


「……そうか!」


 サラはこういった時、あっさりと状況をひっくり返す提案をしてくれる。

 いくら帝都内の()()入り組んでいても、建物の屋上を渡っていけば関係がない。

 

「ダンジョン化していたら、この手は使えなかった……うまくはいかないものだな……」


 ダンジョン化しているとこういう場所の天井は謎の見えない壁によって遮られる。

 ダンジョン化していない帝都はこのゲームの性質上、見えるところにはどこにでも行けるのだ。

 俺たちは建物の屋上を飛び移りながら帝都中央、王城へと急ぐのであった。

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