第42話 帝国の変化
「おい! サラ! ナユタ! おかしなことになってるぞ!」
朝、町の宿屋で目覚めた俺に衝撃のニュースが耳に入ってきた。
「ベリンザー帝国が全世界に宣戦布告を行った!」
突然に発生したイベント。いや、イベントと言っても制作者の意図は全く入っていない。
「他国に対する干渉をするような事はあり得ない!」
サラの驚きも当然だ。
そんなことを許したらゲーム開始時期によって国がめちゃくちゃになりすぎる。
それぞれの国に人々が生きているようにプログラムしていても、ゲームとしてのお約束は守らせている。
「パパ、すみません。少し裏技使います」
「ああ、仕方ない」
ナユタがゲーム内情報を探ってくれる。
しばらくして驚愕の事実がナユタの口から告げられる。
「モンスターがベリンザー帝国に協力しています。
間違いなく魔王、侵入してきたプログラムの仕業ですね」
「なんかどんどん無茶苦茶になってきているな」
「もともと残る二か国はサイバー犯罪先進国ですから……」
「それだけ強力なプログラムってことか……」
「今出来る限りの対抗策を打っています。
あまりにゲームの本質までいじられると、それこそ詰まされてしまってはパパの命が危ないですから」
「最低限のゲームとしての礼節を守ってくれそうではないからなぁ……」
「もう! リョウは自分の命がかかっているのに何でそんなにのんきなの!」
自分でもよくわからない。昔から自分自身のことにあまり興味がない傾向にあった。
この世界にきて、ステータスとかスキルとかには興味があるが、自分自身の生き死に無頓着なのは変らない。昔っからだけどね……
「そんなことより、ナユタの解析が終わったらすぐにでも帝国へ向かおう!」
「そうですね、すみませんお待たせして」
「いや、大丈夫。サラ、俺たちも出来ることはしよう、帝国でどういったことになるかわからない街へ出て準備は万全に整えてこよう」
「わかったよリョウ」
俺らは街に出ていざという場合に備えて食糧や武器防具、道具などなどを買いそろえる。
戦争のうわさで町は持ちきりで、すでに物価が跳ね上がり始めていたが、この際多めに払ってでも物資は確保していく。どうせお金は一生使っても使いきれないほどある。ゲーム内では……
「実際に物資が枯渇する可能性は無いだろうしね」
「商品上限が決まっているMMOってのも面白いかもしれないねリョウ」
「こういうところはRPしないんですねお二人とも」
「ははは」
ナユタの解析は予定通り終了して帝国へと移動する。
「えーっと、ポイントはここにして……向こうのデータを見て周囲の生体反応を探って……」
「ぶっつけ本番でやって平気なのかナユタ?」
「大丈夫ですよ! たぶん」
「まぁ、ナユタのことだから心配はそんなにはしていないけど……」
「よし、それじゃぁ位置情報書き換えますね」
そうナユタが言い終わると同時に周囲の風景が一変する。
街はずれの空き地にいた俺たち三人はだだっ広い荒野に立っていた。
「成功しました」
「あっさりだねぇ」
「そうですね。位置情報書き換えて移動させただけですから、魔法とかとは違いますから」
「帝都は近いのかな?」
「あちらの方向へ3キロほどですが、もう帝都は飲み込まれていると考えてもらったほうがいいですね。
異常な数の生体反応とデータ量、最初の魔王が食い込んだ地点から帝都全体を侵食してしまっているようですね」
「ああ、私の美しい帝都が……イベントが……」
「ママ、可愛そうですが、全部だめそうです」
「都市型ダンジョン……なかなか楽しそうだ……」
「リョウのバカ、少しはいたわりなさいよ!」
「さっさと魔王を倒して向こうに戻ってもっと詰め込んだ物作ればいいだろ」
「それはそうだけどさぁ……」
「だから、さっさと倒しちまおうぜ!」
「もう……」
「しかし、なんだって全世界に宣戦布告なんて?」
「たぶんモンスターの情報量が大きすぎるので、一つ一つのモンスターがすべて枝をつけられているんだと思います。そのモンスターを世界中に放つことによって浸食を一気に進める腹積もりなのかと……」
「結構恐ろしいことやってきてるんだね……これは、ほんとに急がないとまずいね」
「そうですね。かなりデコイをばらまいて転移したつもりですが、どうやら補足されました。
いま、我々にこの帝国中のモンスターが向けられている模様です……」
「面白い、戦略ゲームは俺の十八番だってことを思い知らせてやる!
サラ、頼んだ!」
「了解」
「ナユタ! 周辺の情報を」
「用意できてます!」
俺はナユタから与えられた周辺の地形データに敵の情報に片っ端から目を通していく。
サラが呼び出す大量の軍隊の戦力分析も行い、この戦争に勝つ作戦を考える。
戦闘前のこの時間はドキドキが止まらない楽しい時間だ。
「そりゃ、こっちはいくらでも召喚できるけど、敵さんの戦力が強いなぁ……」
「もう、こっちも打てる手は全部打ちます」
サラが呼び出した精霊やゴーレムたちにナユタが手をかざすと、見る見るうちに姿を変えて上位種族へと変わっていく。
「本当は召喚できないんですが、敵も似たようなことやってますから」
「うっほ! これは強い!」
中ボスを召喚するのが上限だったのが大ボスを使えるようになった。
簡単に言えばそういうことだ。
ずらりと並ぶボスたちの姿は壮観である。
「すぐに配属と行動を決めるから待ってくれ!」
「私も手伝う―」
サラと俺で味方戦力と敵戦力の展開と行動予測をする。
「敵はごり押し狙いだね、戦力が圧倒的だと考えるよねそりゃ。
でも違うんだなー今回は」
「ふははは、このような稚拙な布陣我らに通用するはずはあるまいて」
「リョウ先生この配置ならあの戦法ですか?」
「おお、サラ殿もよくわかっておる。この規模でこれを成功させたらさぞ爽快じゃろうて、フェッフェッフェ……」
「クックック敵が呆然とするのが見ものですなはーっはっはっは!!」
「パパもママも楽しそうですね……」
楽しくないわけがない、こんなメカやら精霊を使った戦略バトルステトラジーゲーム、俺はやったことがない! 燃えなきゃゲーマー失格だろ!




