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第21話 うさぎの足跡

「すまない! 命を救われた!」


 可愛い獣人が深々と頭を下げる。

 耳がぴょこぴょこ動いていてついついそこに意識が集中してしまう。


「あ、ああ。そ、そうだ、勝手に使ってすまない」


 俺はオークに投げつけるような使い方をしてしまった剣を慌てて拾い騎士風の獣人に手渡す。

 よく見れば繊細な装飾がされ、手入れも行き届いている。

 あんな使い方をして申し訳ないという気持ちになってしまう。


「かたじけない。生きて再び剣を握れるのも貴方達のお陰だ、仲間も救ってもらって礼のしようもない……」


 傷の深かった一命もサラの魔法で一命をとりとめて静かに寝息をあげている。

 

「名乗りが遅れて申し訳ない。私はパリス、リートリンド・パリス。

 コモン鋼の冒険者です」


「リョウです。一応レア鋼の冒険者です」


「な、なんと!? あの動き金か白金クラスかと思いました……まだまだ修練が足りませんね」


 あ、その耳ペターンってなるの最高に可愛い。胸にズキューンってきた。

 なんというか、ゴールデンレトリーバーをもにょっと人型に近づけた感じで、ワンコの可愛さと女性として綺麗さが混じったような不思議な魅力がある。

 俺の中での新しい扉が少しづつ開いていく感じがある。

 VRでの獣人の破壊力は、恐ろしい。


「取り敢えず。一回皆で休憩しましょうか」


 俺は『家』を取り出す。

 けが人も居るし、きちんとした屋根のあるところで休んだ方が良い。

 パリスさんも仲間の方々も激しい戦闘でボロボロだしね。


「あ……え? 今、何を?」


「マジックアイテムですよ」


「な、なんと、世の中にはこんな物が……」


 嘘だ。


 まぁ、ログハウスみたいなもので簡単な作りではあるけど、囲まれている場というものは安心感がある。

 最初はおっかなびっくりだったパリスさん達も少しづつリラックスしてくれた。

 街道から少し外れたところに建てたので、周囲にかる~く木柵を組んでおく。

 すでに作ってしまってあるので、呼び出して突き刺すだけの簡単設計。

 これに鳴子をつけておけば外敵の侵入に気がつける。

 結構重宝する。


「リョウ殿は……いろいろと、凄いですね」


 苦笑いされてしまった。

 

「パパは人より少しずれているので」


 皆にお茶を配りながらナユタがさらっと酷いことを言う。自覚はあるけど……

 サラは楽しそうに皆の武器や防具を修理していた。

 サラはサラで結構なチート能力を持っていて、製造系スキルがカンスト、魔法技術系カンスト、ステータスもとんでもない、種族ボーナスがついているので戦闘時にはさらに強くなるというおまけ付きだ。

 聖獣の娘を乗っ取るとんでもないチート野郎だからな。


「しかし、こんな王都の近くの街道にあんな魔物の集団が出てくるとは……魔物が組織化してきて王都の防備を脅かしているという噂は本当なんですね……」


「私たちはチルベから来ましたけど、あんな集団は見ませんでしたね」


「どうやら王都を集中して狙っているみたいです。

 魔物たちが急に力をつけたと王都は対応に追われているみたいですね」


「王都の北に突然現れた魔王ベルタのせいだろうなぁ……」


「……今、なんと?」


「いや、たぶん魔王が現れたんだろうなぁって」


「ま、魔王とは……魔王って、魔王ですか?」


「ああ、たぶん定義的には魔王になると思う」


「だ、大問題じゃないですか!!」


 パリスさんが叫びながら立ち上がるもんだから別室にいた仲間たちもリビングに入ってくる。

 パーティ名うさぎの足跡(幸運の証だそうだ)

 怪我から回復した人間の男性キリックさん。パーティでは斥候役だそうだ。

 付き添っているのがタランさん。人間の女性で魔法使い。

 戦いではすでに魔力が尽きていて、結構危ない状況だった。

 線が細い綺麗な女性だ。

 それと背後からの攻撃を必死で防いでいたのがカイナさん。

 ドワーフのモンクで背は低いけどムッキムキだ。

 かなり怪我もしていたけど必死に最後の壁となって耐えていてくれていた。

 そしてパリスさんが犬系獣人の女性。

 この世界は他種族共存している。

 フランツケルン王国はすべての種族が仲良く暮らしている。

 そうじゃない国もあるそうだ。

 全体的に見ると、ヒューマン、人間の数が多いそうだ。

 種族ごとに優れた点があるので、皆が尊重して暮らしているのがこの王国だそうだ。


「だよねぇ……」


「なんでさらっとそういう話をするんですかパパは……」


「リョウは行き当たりばったりで生きてるからだよ、アイタ!」


 サラをぶん殴りつつ今後のことを考える。

 まずは王都へ行ってサラの冒険者登録をして、またこっそりと魔王を倒そうかなぁ……


「す、すぐに王都へその事実を知らせないと!」


「ま、待ってください。い、今のはなしは私の妄想です!」


「……パパ……残念な人……」


「他にいくらでも言いようがあるでしょうに……」


 二人の目線が可哀想なものを見るようで辛い。

 それでも、押し切るしか無い。


「全部俺の妄想、だったらいいな、いやいや、そうだったりしてー!

 そして俺が勇者で魔王を倒すんだー!

 的な? ほら、男の子なら一度は考えるじゃないですか!」


「……は、はぁ……そ、そうですよね……現実的に考えれば、魔王なんて、ねぇ」


「そ、そうですよ! いやーすみません!

 俺は昔っから妄想を現実みたいに話しちゃうんで!

 はっはっはー!」


 誤魔化すために自分の大切なものを失ったような気もするが、なんとかその場を誤魔化す。

 とりあえずゆっくりと休憩して、皆を王都まで送ることになった。

 こんな旅の途中、屋根の下で温かい食事を取って、柔らかなベッドで眠れると思っていなかったうさぎの足跡皆さんには大層感謝されてしまった。


 夜の間も何度か敵が来たけど、ナユタと俺で始末しておいた。

 サラは女性の部屋でぐーすか寝ていた。

 まぁ何かあって鳴子がなるような状況になれば皆を守ってくれるだろうと期待している。


 こうして、夜が明けて王都へと旅立つのであった。

 

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