灰スロ小旅行
「楽しかったね!」
「そうだな、久しぶりにゆっくりできたし」
「色々あったもんねー最近」
「あ、お土産買ってこー!」
「そうだった」
一泊二日の旅行もついに新幹線で帰路に着くのみとなった。そこで二人はお土産を買うために駅の土産店に立ち寄った。スロワは部活や家族への土産を物色していたが、ふと、地元の工芸を使ったアクセサリーの売り場に目が行った。小さなペアのキーホルダーが意外とお手頃な値段である。スロワも好きなデザインだし、灰花も気に入ってくれそうである。一緒にお金を出し合って買おうと持ちかけようと、スロワは振り向いた。
「ねぇ灰花…」
「クール便郵送で」
「かしこまりました」
レジには様々な種類のプリンが並んでいる。恐らくこの店の全種類だろう。冷蔵品売り場に直行しているのを目撃してはいたが、これほどとは。
「…こんのホモ野郎がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
綺麗に飛び膝蹴りが灰花の頬にめり込んだ。イケメンが台無しである。自分でもできたことに驚く。
「なぁこの旅行の間だけは葛城のこと一旦置いといて二人で楽しもうって言ったよな?あ?」
「はい分かってます重々承知してますすいませんごめんマジごめんなさいでもお土産だけは許してくださいホントお願いしますあとその顔やめて怖いマジ怖い」
灰花は顔ざめたままゆっくり立ち上がると、何かをそっとスロワに差し出した。
スロワが買おうとしていた、ペアキーホルダーの片割れである。
はっとして見ると、灰花の胸ポケットに入っているスマホのストラップに、いつものプリンのストラップの隣に、もう片割れがすでについている。
「これで、機嫌直してくれよ…頼むから…」
「…バカじゃないの…」
「あのさ、クール便で送るのはいいけど、弟が受け取ったら何かとマズくならない?」
「あっ、そうかもしんねぇ…」