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下書き  作者: 矢久 勝基
第二節 転機
10/18

その10

 店は、ひっくり返ったようになっていた。机は倒れ椅子は飛び散り人が入り乱れ、怒号が渦巻いて収拾のつかない状態になっている。マムールのほうにも人が飛んできたが、彼は短い呪文の詠唱と共にその男を衝撃波で払いのけて目を凝らした。

(この渦の中心にはまさかあの娘がいるんじゃないか?)

 そういう目である。そして"そういう目"はまさに屈強な男たちに囲まれたその娘を捉えた。

(何をやっていやがる……)

 マムールが暗澹たる気持ちでため息をつく。どうせあの娘がなんらかでヒステリーを起こしたか逆に品のない客があの娘にカラんだか、いずれかだろう。

 ……と思ったが、なにか様子がおかしい。

 水柱が二本、彼女をらせん状に取り巻いて吹き上がっている。それはまるで生きている水竜であるかように頭をもたげて他の客を威嚇していた。それはいい。

 その中心にいるメィファの意識がない。二本足で立ってはいる。いや、正確に言えばほんの少し浮いている。

 それが、生気をまったく感じず、首から上が力なく折れていて、意思を持ってああいう形になっているように見えないのだ。エルフが一人そこにいるというより、肉体が一つ、そこにあるといった様子である。

 それが時より思い出したかのように竜の姿をした水柱を操って店の中を荒らしている。客はすでに逃げ、囲んでいる男たちはブローカーであるこの店の支配人のボディガードのようだ。彼らは暴れる商品を収めるのが仕事でもあるだけに逃げてはいないようだが、完全にその"物体"をもてあましていた。

「どうしてこんなことになってんだょ」

 端にいる一人に問いかけてみるが、

「しらねぇよ!」

 半ばおびえた声を上げるばかりだ。そうこうしている間にも水柱は鞭となってマムールにも襲い掛かってくる。

「ふん」

 男が数名なぎ倒される中で彼はほんのわずかな瞬き移動を見せてそれをすり抜けた。その技術もさることながら、そもそも身体の小さい彼はあたる面積が小さすぎて捉えづらい。

 マムールはそのまま左手を振り払うようにして空気を切った。その流れが衝撃波となってメィファに迫る。

 が、"水竜"が渦を巻く彼女の身体まで到達することはなかった。

「う……ふふ……」

 そのうち、目が閉じられたままの少女から笑みが漏れ始める。

「あの花はティータリア?」

 何もなかったかのように平然と気を失いながら、声だけは上機嫌でなにかを楽しんでいる。それとは関係なく"水竜"は八方に暴れつづけ、店内はますます凄惨さを増していった。

「お前ら捕縛のプロだろぅ!! なんとかせいゃ!!」

「何も効かねえんだ馬鹿!!」

 怒号が空しく飛び交い、手がつけられない中で、マムールも術の限りを尽くしてみるものの、ことごとく生気のないメィファにハネ返されて逆に自分の命を危うくしている。

「うふ……ふ……見て、あの雲はまるで大きな鳥のよう……」

「しょうがないな。ちょっと痛いけど我慢しなょ」

 強力だが制御がされてないその水竜をやりすごしたこのレプラコンの男が、いつもよりも複雑なモーションをする。死神に効かなくても、小娘一人にならなんとかなるだろう。傷つけないかが心配だが、もっと心配なのはたとえ無事でもこのようなはねっかえりにその後価値がつくかということだった。

「グリエゥラトロュスベイヮアラム……」

 異種族特有の発音が早口で並んでいく。実はレプラコンには舌の奥にもう一つの舌があり、それがあって初めて行える発声であるため、他の人型ヒューマノイドには扱えない独特の術を操ることができる。

 今用意している"力"はマムールの中でも最大級に強力なものだが、いかんせん開放するまでに時間がかかるのが難点であった。

「ふふ……風はいつもバルトスの味方をするのね」

 いつの間にか空間は二人だけのものになっている。立ち寝をしているかのように首をもたげてどこかの世界へトリップしているメィファと、彼女の意思とは無関係に伸びてくる水柱を前後左右へかわしながら長い呪文の詠唱を行うマムール。

 店は徹底的に破壊しつくされ、背の低い瓦礫に這いつくばるようにして、逃げることを許されないブローカーの子飼いたちは店の端で震えていた。

 マムールの小さな体をかすめていく水竜の姿はノーコンながら、触れれば塵のようにたやすく飲み込まれることは店の破壊状況でも確実であり、彼自身も穏やかではいられない。それでもくぐってきた経験の数をして、魔法を完成させるまでの時間、集中力を途切れさせることはなかった。

「野郎ども耳をふさげゃ!!!」

 マムールは不意に叫ぶと同時に十字を切っていた両の腕を、なにかを切り捨てるように斜め下に広げた。

 何もない空間が、一瞬大きく震える。

 ……この現象、それ以上の説明がしづらい。見ている男たちにしてみればその意味不明の振動と巨大な破裂音が終わるころにはメィファはその場に崩れ落ちていた。


 現実の世界に近い例を挙げるなら電磁波のような、目には見えない空気の波がマムールを中心に扇を広げたように放射状に走った。それが音の壁を突き破るほどの勢いで加速しメィファに襲い掛かったことになる。大音響は音速を突き抜けたときに起こる自然現象だ。

 実際これが電磁波であればメィファは消し炭のようになってしまうだろうが、マムールのそれは空気で作った波であり、対象に一時的なショック状態(仮死状態)を作るにとどまる代物である。ただし、音の壁を破るときに発生する轟音と衝撃波を抑えきることができず、そちらが打撃力となってしまう。

 マムールはそれを知っているから、メィファがその場で崩れたことが不可解であった。容積は小さいとはいえ、エルフの小娘など壁に叩きつけられてしかるべき強度の衝撃波なのである。

 ともあれ危険は消えた。理由が聞きたい。商品がこのような醜態を晒した以上、何が引き金かを知らないともう売り物にはなるまい。

「ウェイター」

 彼は振り返り、数名の男が瓦礫からおそるおそる姿を見せていく中の一人を探した。

「はい! ご注文ですか?」

「違うに決まってんだろぅ? どこで飲めっていうんだょ」

「はい! すぐにおつくりいたしますが」

「いらねーょ!」

 いい根性をしている。マムールは自分と同じ空気を感じつつ、メィファを指差す。

「それより、こいつがあんなふうになる前後を教えてくれょ」

 長い話になるのを覚悟でそう聞いた。が、

「ミルサイラを……」

「酒飲んだだけかょ!!」

「それをもって別のお客様に声を掛けてましたね」

 よく見ている。ウェイターにとってはメィファはそれほどに目に付く客だったのだろう。それにしても……

「別の客?」

 そんなに社交的なのかと、少し意外そうなニュアンスで言うと、

「デ、デスペラードについて聞いてきたんだ」

 別の男が名乗りを上げた。

「あぁ、デスペラードかょ」

「メルビル=プラムックについてだ」

 マムールの耳がピクンと動く。それでいてわざととぼけたように返した。

「メルビル? 誰だそれは?」

「あ、あぁ。ダプト=ロアに喧嘩売ってるクレイジーなやつだよ」

「へぇ……そんな馬鹿がいるのかょ」

 マムールは努めて平静を保ったが、内心ではいろいろな驚きがある。

「俺がそれを言ったら、なぜかものすげえテンション上げて、グラスを一気に……」

 男は豪快に飲み干すような動作をした。

「……そしたら急にボテッと倒れたからなにかと思ったら、あの娘から水柱が吹き出したんだ」

「ふぅん……」

 そして今のこの光景らしい。

 自然に考えればメィファはグラス一杯の酒で気を失ったということなのだろう。それはわかったが、

(……)

 どうしてこうなった?

 ……どういう解釈をしても、気を失った彼女からこの酒場の惨状が結びつかない。

 暴れている最中の彼女の無意識。強力な衝撃波を受けて微動だにしなかった事実。……思えばメルビルを求めて炎に巻かれても軽症だった。この娘はいったい……。

「マムール」

 背後で声がした。振り向くまでもなくこの店のオーナーであることをマムールは知っている。

「話がある。……おい、その女は暴れないようにしてもってこい」

 子飼いに指示を出し、それだけで気配を消した。男たちはおそるおそる動かなくなったメィファに近づいていくとまるで眠っている猛獣を扱うような慎重さで仕事に取り掛かる。

 先ほどの衝撃波が彼女の服を切り裂いてあられもない姿を晒しているが、あの様子なら商品に手を出しそうな男はいなそうだ。

 そんなことを思いながらこの部屋を見て、メィファを見直して、メルビルとダプト=ロアの意外な関連性を知ったマムールは、ばつの悪い表情を浮かべながら再び瞬間移動を駆使してあのワインの匂いのする部屋へと向かった。


 数日がたった。マムールは滑稽なことにメルビルの行方を追っている。

 もう価値がないと思った女に、意外な活用方法があったのである。……つまり人質であった。

 メルビルがダプト=ロアと険悪な状態にある。その男はメィファの所在を告げればダプト=ロアのど真ん中に釣り上げることができるのではないか。

「そうけしかけてみたら、ヤツラ、意外なほどに飛びついたよ」

 ダプト=ロアに入れ知恵をしたバルジは上機嫌でマムールへ語っていた。

「ただし、そのデスペラードを釣り上げるところまでが条件となる」

 あちらはバルジが盛ったメルビルとメィファの関係がガセであることを当然疑っている。それを払拭すればメィファ本人の価格に加えて法外な額での取引を約束された。

「マムール、それは君の仕事だろう」

 ブローカーはしたたかだ。つまりはメルビルを連れてこなければメィファを引き取れないということを、店の破壊を理由にして示唆した。マムールはうなずくしかない。


 メルビルとの接触は、マムール本人も予期しない速度で実現した。

 レプラコンの術の中に広域探索の類はないから、この広い世界で連絡も取れない者を一人見つけ出すことは絶望的に思えた。数ヶ月かけて周辺地域を回って聞き込みという地道な作業をして、目星が付かなければ諦めようとすら思ったほどだが、当のメルビルは前述したとおり、風を頼りにメィファを追っていたわけで、このロールという街の呼吸が届くところにすでに存在していたのだ。

 短い距離ならレプラコンの術の範疇であった。

「よぉ」

 マムールは声を掛けつつも、人間の街道内を悠然と歩いてくる一人のエルフに一瞬あきれた。ダプト=ロアと敵対しているにもかかわらず、襲ってくださいといわんばかりの無防備さではないか。マムール自身はあの組織を恐怖しているからなおさら恐れ入る。

 メルビルの耳は先ほどの声を確かに収めたが、きょろきょろと辺りを見回しただけで歩き続けようとした。

「下、下!」

 横から声を掛けたのがいけなかったのか。小人のマムールは前へ躍り出て言い直す。

「ああ。気のせいじゃなかったのか」

 軽い口調で言い放つ彼に、目の前に突如現れたのがマムールであったことの動揺はない。

「あのエルフの娘を探しにきたんだろぅ?」

「君らがさらったっていうね」

「事情が変わったからょ。つれてってやる」

「そりゃどうも」

 メルビルは恐らく、メィファが自分で彼の元を去ったのであれば追わなかっただろう。バジリスクと対峙していたときは必死な彼女のために"生きたい"と思ったが、だからとて彼女と寄り添いたいと思ったわけではない。……そういう思考に至らないことは以前ミーシャとの会話のくだりで述べた。

 ただ、彼女に理不尽が起きているのなら助けたい。それが終われば自分は消えたい。

 ……あえて言葉にするならそのような心持だ。当然ミカエルのような激情が生まれない。

「肩に乗っていいかぃ?」

同じ方向へ行くことになった小人が擦り寄ってくると、

「いいけど君は敵だろ? そんな近くじゃ何の動作も間に合わずに死ぬんじゃないか?」

「……」

 軽く言っている。が、その言葉の重みがマムールの内臓にのしかかり、一瞬吐き気がした。

「……自分で歩く」

 それも、一足で届かない場所をキープする必要を感じた。

 この"命知らず"は当然、今から踏み込むのがアリ地獄だと知っているのだろう。それでも眉一つ動かさないこの男の豪胆さに、小男は薄ら寒いものを感じていた。


 歩き出した二人に、その後追いついたのがミカエルとラナの兄妹であった。スレッドに教えられた街はもうすぐそこである。

「ちょっと止まった」

 妹は風となって飛ぶことのできる、エルフでも珍しい部類の精霊術を使うことができる。その腕に抱かれて滑空をしていたミカエルの目にはるか遠くのメルビルの背中が映った。

(あれは……)

 エルフの視力というのは人間よりもはるかにいいし、彼の脳裏にはメルビルの姿が焼きついていたから勘違いではない。

 それを見止めて、やや思案し、

(しばらく後をつけよう)

 ということになった。あの男には共にメィファを助けに行くことを拒否されているから、顔を合わせたとしてもすんなり望む方向に話は進んでいくまい。

「兄者、ちょっと見に行ってもいい?」

 ラナは降り立ち女の姿に戻ると兄から離れてそう告げた。

「なにを?」

「メルビルっていう人」

「なんで」

「興味本位よ。大丈夫、見つからないようにするから……」

 風に同化できるわけだからたやすいことだ。

「あまり感心しないな……」

「兄者は男の人がからむとなんでも感心しないからね」

「そういうことじゃない」

 とは言ってみたが、続く言葉が見つからない。

 彼は人差し指を小さく動かして「行け」というそぶりを見せた。彼女は目を細めてふわりと笑顔を作り、手を流れるように動かして姿を消す。

 ほのかな甘い匂いを運ぶ風が、まもなく前の二人を通り過ぎた。

 メルビルの髪が流されて揺れる。優しそうな二重まぶたがその風の行方を追うようにして斜め上に向けられ、太陽の光を浴びている。

 振り向きながら通り過ぎるラナははっとした。彼を物色しに来たその目をまるで見透かすような澄んだ瞳が、こちらに向けられていたからである。

(見つかった……)

 見つかっていようはずがなかった。が、見つかったことにしてもいいと思えたのは、ラナの纏った風を見るその眼光に、不思議なものを感じたからだった。

(話してみたい)

 その気持ちが彼女の集中を解かせた。風はメルビルとマムールの目の前でつむじを巻き、まるでそこに肉体のブロックを高速で並べるように娘を作り出す。

(何をやってるんだ、あの馬鹿……)

 遠くで眉をひそめたのはミカエルである。見つからないようにするといったばかりじゃないか。

「こんにちは」

 そんな兄の心の声が数百メートル先で聞こえたかのように微笑を浮かべた少女が二人に会釈した。否応なく立ち止まる二人。

「ひょっとしてわたしが通り過ぎようとしたのが見えました?」

「いや」

「あら錯覚? 目が合ったように思えました」

 だから降りたのに……と、うそぶきながら、ようやく会釈していた頭を上げると、ゆるい癖の付いた長い髪をかき分けて顔を晒した。

「……!?」

 メルビルが一瞬、大きく目を見開く。

「どうしました?」

「あ、いや……」

 すぐにとりなしたが、その心は明らかに動揺している。

「君は?」

「ラナと申します」

 もっとも、メィファと違いメルビルの心の揺れは分かりづらい。彼の心のざわめきを気づくことはなく、ラナは言葉をつなぎながら自分を見据えている落ち着いた様子の男を観察していた。

(深い……)

 瞳の奥が底なしに深い。なぜそう感じるかは分からないが、吸い込まれたら戻ってはこれない深遠をその瞳から感じる。浮世離れした"命知らず(デスペラード)"であるがゆえにもつ深さなのか、それともメルビルという男が特別なのか。

「こんなところで同族の殿方に会えたのが珍しくて立ち止まってしまいました」

 彼がずっと黙っているので、女はとりあえずそんなことを言ってみる。それでようやくメルビルのほうもなにかを言わなければという気になった。

 とりあえずここ、人間のテリトリーにエルフ、それも女性が一人でいるのは妙である。

「人間の街に住んでるの?」

「いいえ。人を探しています」

「同族?」

「フフ……興味ありますか?」

「あ、いや……」

 知る必要のない質問をするとは……。彼にしてはとても珍しいことで、それだけ彼は今、心が騒がしい。

 はっきり言えば、ラナの顔に見覚えがあった。

 が、いつだろう。誰だろう。……ラナなどという名前ではない。

 自分の腹の奥底からなにかが湧き上がってくる。懐かしいような、暖かいような……この薄く開かれた瞳を、自分は確かに知っている。そんな気がするのだ。

「君は……」

 メルビルが口を開く。

「僕と会ったことがある? ラナという名前とは違う名前で。それも一度ではなく……」

 だがメルビルは言いながら、すぐに自分の馬鹿馬鹿しさに気づく。数度も会っている女性がこんなに他人行儀なわけはないし、そもそもこんなに堂々と現れて偽名を使ってくる意味もあるまい。

 ラナのほうも軽く圧倒されたようにやや身を引いていた。

「ごめんごめん。なんでもない」

 メルビルの気持ちは急速に乾いていった。

「探してる人が見つかるといいな。じゃあ……」

 忘れよう。彼のいつもの結論だった。


「まったく、お前という奴は……」

 兄のところに戻れば、当然のように説教が待っている。

「姿を見せないといったじゃないか」

「仕方ないのよ」

「何が仕方ないんだ」

「あの殿方、いい男すぎたから……」

「だから感心しないって言ったのに……」

「あら、隠しておくつもりだったの?」

「そういうことじゃない」

 どうもいつも一枚上手な妹に言葉を詰まらせるミカエル。

「それで、何を話したんだ?」

「気になる?」

「それが役に立つ情報ならね」

「情報?」

 ラナは首を傾げて中空を眺めた。やがてやけにすっきりした顔で

「何も聞いてないわ」

 思えば自分は名乗っておきながら向こうは名前すら名乗っていない。

「役に立たん」

「なにか聞いてきてほしかった?」

「いや」

 余計なことを言えばもう一度会いに行くなどといいかねない。それはミカエルにとってなんとなくシャクだった。

「でも、彼ひとりかと思ったら二人いたわ」

「二人……?」

 ラナの言葉に怪訝そうな声を上げるミカエル。なにせ自分も遠目からあの男の背中を見ている。確かに一人だったはず。

 物をいわずとも兄妹だ。表情でそのニュアンスが伝わったのだろう。ラナは目を細めて首を振った。

「正確には人じゃないわ。妖精。それも悪巧みの妖精……」

「なに!?」

 確かにそれなら目に入らなかったのも無理はない。いや、それよりラナが見たのがあのレプラコンであるならば、事情はいろいろ違ってこないか。

 つまり、メルビルはあのレプラコン側に加担していたと。思えばあの場にいた人物たちはすべてよそ者なのだ。あのデビルカースの一件以前の関係がどう絡み合っているか……思えばどのようにも考えられるではないか。

 メルビルは"敵"である……それは彼にとってもっとも有用な情報であった。

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