2章 〜過去2 幸せの終わり〜
ハルが出てってから半年がたった。
別れてすぐは少し元気が無かったものの、今ではすっかり元に戻っていた。
今日はあの日と同じように皆でかくれんぼをしていた。鬼もあの時と同じくカインだった。
「じゃあ、始めるよ!!100まで数えるからそれまでに隠れてねー。いーち、にーい、さーん・・・・・・」
カインが目を瞑って数え始める。他の皆は散り、隠れていった。
マイヤは、まだどこに隠れようか迷いながら走っていた。
少し走ったところに、茂みがあった。その中を覗いてみると、小さな穴があるのを見つけた。中に入ってみると、数メートル先まで奥行きがあった。
時間も無かったので、その穴に隠れることにした。少しずつ時間を経っていく。マイヤはいつの間にか眠ってしまったようだった。
外の様子を見るために少しだけ顔を出した。顔しか出さなかったのは、カインに見つかるかもしれなかったからだ。
そして、マイヤが顔を出して覗いた外の光景は――――――――――――――
原型を留めていない程に壊されていて、火がついて燃えている孤児院の姿、そして、そこにたむろっている魔物たちと1人の人間の姿だった。
訳が分からずに混乱している中で、マイヤは慎重に穴から飛び出て、近くを見渡す。そこには、身体と顔が血で塗れた、カインの姿だった。
彼は倒れていて、少しも動かなかった。
「カイン・・・・・・ねえ、起きてよ、カイン・・・・・・」
カインの体は冷たくなっていた。カインが死んでしまったという事と、孤児院がもう無いという2つの認めたくない現実。
この現実が、マイヤを恐怖で包んでいく。もはや何も考えられずに呆然としているところに、熊のような魔物が現れた。
その大きな腕を振り上げ、鋭い爪でマイヤを切り裂こうとする。その爪の恐怖に自然と目を瞑ってしまい、次の瞬間に来る痛みに体が強張る。
だが、いつまでたってもその痛みはこなかった。死ぬときは痛みを感じないのだろうか?そう疑問に思いながら、目を開けてみる。
目を開けた場所は天国ではなく、さっきまでと同じ場所だった。唯一違うのは、目の前に男の人が立っているということだ。
「おい、大丈夫か?まだ生きているな。そこを1歩も動くなよ」
どこからこの男が現れたのか分からず、ただ混乱していたが、彼が自分の敵ではないことだけは分かったので、彼の指示に従うことにした。
他の魔物達が気付き、近づいてくる。男は左手に持っている剣を一振りする。すると、衝撃波のようなものが発生して、数体の魔物を倒した。
残りの魔物たちは警戒をして少し距離をとる。
「貴様、俺に気付いているだろう?無視せずに答えろ。何故ここを襲った?」
「おや?どうやら招かれざる客がいらっしゃったようですね。決まっているじゃありませんか。お金が目的ですよ。ああ、もうひとつ。
こいつたちがお腹を空かしていたので、食べさせてあげたんですよ」
「貴様、名は何だ?」
「名を名乗るときは自分からが礼儀ですよ」
「・・・・・・カイだ。貴様らに礼儀があるとは思えんがな」
「僕にはきちんと礼儀がありますよ。ディルです。今後、よろしく」
ディルが話を終えた直後、先程と同じ物をディルに飛ばす。
「彼の者に風の塊を、ゲイル」
ディルの前に風の塊が出現する。ディルの半分くらいの大きさになると、衝撃波に向かって飛んでいった。そして、ぶつかり合い、相殺した
「その程度ですか?では、今度かはこちらからいきますよ。かまいたちよ、彼の者を切り裂け、クロスウィンド!」
無数のかまいたちが発生して、カイに向かって飛んでいく。
「幾重にも重なる万の雷よ、我に仇名す者に降り注げ、クロスサンダー!」
突如、あたりが暗くなる。そして、空からたくさんの雷が落ち始めた。それらは全てのかまいたちを打ち消し、いくつかはディルに直撃した。
「すごい・・・」
マイヤが思わず声に出す。
「・・・・・・しぶといな」
煙が切れる。そこには服が少し焦げたディルの姿があった。どうやらギリギリで相殺したらしい。
「ふう、危ない危ない。それにしても、この僕に攻撃とは。正直、驚きました」
「貴様なぞに褒められてもちっともうれしくないぞ」
「そうですか。それは残念です。では、僕は帰らせていただきます。お前達、後のことは頼みましたよ」
ディルは黒い風に包まれて、瞬く間に消え去った。残った魔物が撃墜の準備に入る。
カイが左手に持っている刀を一振りする。届くはずの無い距離にいる魔物が、すっぱりと切断された。血飛沫がまう。
「刀伸斬」
何か透明なものが刀にまとわりついてるように見えた。カイはそれでどんどん敵を切り刻んでいった。
こんにちは、闇桜です。
感想を下さった皆さん、ありがとうございます!・・・・・・何やら荒らし行為に似たことをやっている人も居るようですが、そういうのは読む人にも迷惑がかかるのでやめてほしいと思います。
では、また次回お会いしましょう!